ゆずり葉の郷
NPO法人奄美青少年支援センター ゆずり葉の郷
所在地 | 〒894-0036 鹿児島県奄美市名瀬長浜町23番25号 |
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TEL | 0997-56-8202 |
FAX | |
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ページ名ゆずり葉の郷、鹿児島県奄美市()
地球倫理推進賞表彰2団体、活動語る
カンボジアのジャパンハートこども医療センター。ボランティア医師が診察を行う(ジャパンハート提供)
社会貢献に取り組む団体や個人を表彰する第22回「地球倫理推進賞」(一般社団法人倫理研究所主催、文部科学省・産経新聞社など後援)が国内の2団体に決まり、3月29日、東京都内で贈呈式が行われた。
受賞2団体の長年にわたる活動を紹介する。
■「ジャパンハート」 医療や教育で「恩返し」 人財育成も
国際活動部門で受賞した「NPO法人ジャパンハート」。
最高顧問の吉岡秀人医師が、かつてミャンマーを訪れた際に旧日本兵が現地の住民に助けられたことを知ったのをきっかけに、平成16年から活動を始めた。
ミャンマーを始め、カンボジア、ラオスに年間延べ700人以上のボランティアを派遣し、医療を無償提供している。
「『医療の届かないところに医療を届ける』が私たちのミッションです」と吉岡春菜理事長(40)。
カンボジアに小児がんなどの治療を行う病院を開設し、診療だけでなく人材育成も担う。
26年からは、国内外の心臓病の子供を救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)とともに、ミャンマーの小児循環器医療に対する支援事業も実施している。
吉岡理事長は「現地は貧しい人たちが安心して治療を受けられる環境ではなく、医療人材も不足している。
戦争中の恩返しの手段として、医療や教育の輪が広がっていけば」と話している。
■「ゆずり葉の郷」 社会の犠牲者 傷ついた子供に未来を
国内活動部門を受賞したのが、NPO法人「奄美青少年支援センターゆずり葉の郷(さと)」だ。
平成12年に設立され、鹿児島県の奄美大島で、恵まれない子供の居場所を作ってきた。
三浦一広所長(63)は「問題を抱える青少年は社会の犠牲者。親の愛情に飢えた孤独な子供が多い。未来ある子供たちに前向きに歩んでもらいたい」と話す。
不登校やいじめ、薬物などの問題を抱えた青少年を支援。年間の相談件数は2千件を超えるという。
16年には、かつての非行少年らで「名瀬市少年警護隊」を組織し、市内の防犯パトロールや地域の美化活動に取り組み、犯罪認知件数を半減させた。
三浦所長は、「社会から許されず、ほめられることもなく、感謝されることもなかった彼らが、関わり方一つで大きく変わる。
今の日本には、子供たちを温かく見守るまなざしが足りない」と指摘する。
今では、自立援助ホームも運営し、全国から問題を抱えた子供たちが訪れる。三浦所長は「人間は生まれながらに平等でないといけないのに、環境で傷ついてしまう。子供たちが就労したり、自立したりと幸せになるのを見届けたい」と笑顔を見せた。
【用語解説】地球倫理推進賞
民間の社会教育団体「倫理研究所」(丸山敏秋理事長)が平成10年に設けた賞。
教育・文化・医療・環境・地域開発などの分野で5年以上活動を続けてきた個人・団体に贈られる。
22回で計36団体・個人が表彰された。
〔2019年4/12(金)産経新聞(油原聡子)〕
青少年支援活動を法相に報告 奄美市のゆずり葉の郷
鹿児島県奄美市の朝山毅市長とNPО法人奄美青少年支援センター「ゆずり葉の郷」の代表は8月29日、保岡興治元法務大臣、金子万寿夫衆院議員(鹿児島2区)と共に上川陽子法務大臣を表敬訪問し、奄美市の青少年支援活動を報告した。
ゆずり葉の郷は、児童生徒や保護者、障がい者の「自立・共生」を目指し、不登校や引きこもりなどさまざまな問題を抱えた子どもたちの相談支援をはじめ、武道を通した青少年育成、児童自立生活援助、自然体験学習など幅広い活動を行っている。
活動について、同法人の喜入博一理事長と三浦一広所長が説明。
「良い出会いと環境が子どもを育てる。加えて人情に厚い奄美の人々の力で非行から立ち直り『人生大逆転』のケースも珍しくはない」と現場の声を届けた。
保岡元大臣は「奄美では行政やNPО法人の積極的な取り組みに加え、郷土愛が引きこもり、暴力、非行、薬物、自殺など深刻、複雑化する青少年問題や家庭問題を解決する一助となっている。奄美モデルは、諸問題解決の糸口といえよう」と言及。
法務省と連携した取り組みについて理解を求めた。
一行はこの日、法務省が開いた第1回市町村再犯防止等推進会議後、法務大臣室を訪ねた。
会議は全国59の自治体から首長や関係者が出席。
矯正施設出所後の施策について情報を共有した。
推進会議で上川大臣は「罪を犯した人たちの立ち直りには、犯罪をした後のあらゆる段階で国が切れ目のない指導や支援を行い、地域社会に戻ったときに必要な支援を継続して受けられるようにすることが重要」とし、再犯防止施策の推進で市町村間ネットワークの充実を訴えた。
〔2018年9/1(土) 南海日日新聞(奄美の南海日日新聞)〕
企画[ルポ@鹿児島]貧困連鎖を断ちたい 名瀬市の援助ホーム、自立へ若者懸命
生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯の割合が全国で3番目に高いとされる鹿児島県。
その中でも、奄美市は大島紬産業衰退の影響などもあり、全世帯の生活保護率が県平均を大きく上回る。
義務教育を終えた未成年が自立を目指す、同市名瀬長浜町の自立援助ホーム「さざ波の家・奄美」には、貧困や虐待などで居場所をなくした子どもや若者5人が身を寄せ、貧困の連鎖を断ち切ろうと懸命に生きていた。
「今日は早く食べ終わったね」。6年前からホームで暮らす奈良久志さん(21)が、昼食を終えた井上拓真さん(15)=仮名=に声を掛けた。
「肉だったから」と笑顔で返す。市街地にほど近い住宅地の一軒家に幸せな時が流れていた。
□安らげる場所
井上さんは、1年半前まで関東地方で暮らしていた。
ギャンブル好きの母がつくった借金のため、夜逃げ同然で、祖父母がいる奄美に移った。
もともと経済的に余裕のある家だった。サラリーマンの父の給料に加え、看護師の母にも月数十万円の収入があった。
父が勤める会社が倒産したのをきっかけに歯車が狂い始める。
父は事業に失敗。一戸建ての自宅を売り払ってアパートに移るが、家賃を支払えず、電気も頻繁に止められた。
そんな状況でも、母は生活費をほとんど入れなかったという。
奄美に移った後も、母はご飯を作らず、育児放棄状態が続いた。
自ら児童相談所に駆け込み、ホームの存在を知る。
学校には、小学校高学年からほとんど行っていなかったが、今は定時制高校に通い、5月からは新聞配達も始めた。
高校卒業までは、安らげるこの家にいるつもりだ。
□牛小屋に寝泊まり
奈良さんも母の虐待から逃げ、ここにたどり着いた。
高校生の時、父が病気で亡くなったショックで母は酒に溺れ、奈良さんと妹2人に手を上げるようになった。
妹2人は間もなく児童養護施設に移ったが、奈良さんだけは施設に空きがなく、1人残された。
「久志のせいで(父は)死んだ」と母の暴力は続いた。何度も死のうと思った。
父の死と、それをきっかけに急変した母の姿に耐えきれず家出。公園だけでなく、牛小屋の一角にある休憩所などで寝泊まりした。
母と鉢合わせするのが怖く、シャワーを浴びに家に寄ることさえできなかった。
制汗剤で汗臭さを消し、制服に染みこんだ牛の臭いは消臭剤でごまかした。
□「両親が理想」
ホームを運営するNPO法人「ゆずり葉の郷」の世話になっていた同級生がさざ波の家に連れてきてくれ、1カ月半に及んだホームレス生活に終止符を打つ。
今は、アルバイトを二つ掛け持ちしながらお金をため、一人暮らしに備える。母は2年前に亡くなった。
以前は責める気持ちばかりだったが、ようやく「産んでくれてありがとう」と思えるようになった。
将来は結婚して、家族も持ちたい。「両親のような夫婦が理想」だ。
家族5人で仲良く暮らしていたころを思い出したのだろうか。奈良さんの表情がふと和らいだ。
○“子の居場所”の施設足りず 奄美市生活保護率、全国平均の4倍
奄美市保護課によると、2015年度の生活保護率は千人あたり68人で、県平均の3・5倍、全国平均の約4倍の高さだ。
生活保護世帯で暮らす中学生以下の子どもは約180人。多くの子どもが高校に進学するが、就職などで島を出た後、うまくいかず、奄美に戻って再び生活保護を受けるケースもある。
同課第四保護係の中村明広係長は「祖父母から孫まで3世代で生活保護を受ける家庭がここ10年で増えた」と“貧困の連鎖”の実態を明かす。
自立援助ホーム「さざ波の家・奄美」など子どもの居場所として3施設を運営する「NPO法人ゆずり葉の郷」の所長で、30年以上夜回りなど青少年支援活動に携わる三浦一広さん(61)は「経済格差が広がっている。
受け皿となる施設が足りない」と話す。三浦さんによると、3施設で15人が暮らしているが、13人は貧困状態にある家庭の子どもたちだ。
「結いの島」といわれる奄美だが、基幹産業の大島紬の衰退や、都市化の影響もあり、地域で支え合う力が弱まっていると感じている。
「ここ(施設)にいる子どもたちはまだ幸せな方かもしれない。私たちや行政の手が届いていない子どもはまだまだいる」と三浦さん。
「行政ができないのであれば、民間団体を支援し、子どもたちを助けてほしい」と訴えた。
〔◆平成28(2016)年5月29日 南日本新聞 朝刊〕