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Center:2000年3月ー新しい教育機関を生み出す源泉

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新しい教育機関を生み出す源泉

〔2000年3月16日「教育新聞」円卓〕
昨年(1999年)末に不登校生、高校中退者を受け入れている教育機関に関する二点の情報出版物を編集した。
一点は、高等専修学校を中心とする技術と資格の学校、もう一点はフリースクール(大検予備校や通信制サポート校を含む)を扱ったものである。
必要な情報は高等専修学校やフリースクール等にアンケートを送り、集めたものだ。
個別校の情報をまとめた本はすでに市販されている。

しかし全体に流れる、今日の教育に求められる動向的な集約作業は残っている。
その作業を終えるには時間を要す。
ただ特色は極めて明快だと思う。三点あげよう。

(1)子供への個別教育が重要な位置を占める。
個別または少人数教育があって、その上に集団教育が成り立つ構造が求められている。
これは集団教育が中心で、ついていけない子供を多く生みだしている学校教育とは対照的である。

(2)子供と教師(または指導員)が、共に学ぶ者として同じ側にいる。
今日の学校教育が、教える教師と教えられる子供という関係になっているのと対比してみることができる。

(3)教育内容が知的偏重から解放されつつある。
自然体験や社会体験が重視され、知識として覚えるよりも、情報を五感で受けとめることが求められている。
子供の持ち味を引き出すために、自己判断や選択の場が設定されている。
遊びや行事など子供同士が直接に触れ合う生活的場面が取り入れられている・・。
この第三項には、教育内容のいろいろな面をまとめて一つの特色にしてしまった。
現在の学校が“停滞”から脱皮するために試みていることとある程度共通する。

もちろんこれらの特色は、回答した教育機関によって、その程度、その理解の仕方、その形態は一様ではない。
それぞれが模索中のものであり、到達状況に合格点を与えているとは限らない。
それでも共通する傾向として自然にあげることができる。
わたしの理解では、不登校傾向の子供を受け入れようとすれば、こういう種類のものにならざるを得ない。
これらの特色は、一部の中学や高校でも追求されている。
しかし、学校全体の主流となる特色ではない。
特に、進学、受験中心の学校では滅多に見られない。

そして、私にはこれらの特色こそ、これからの学校教育に求められることだと思う。
二十一世紀の教育に求められることが、進学受験教育とは一番遠いところにあるはずの、これらのフリースクールや高等専修学校で準備され、磨かれてきているように思える。
ということは、不登校生は、新しい教育、新しい教育機関を生み出す源泉、既存の学校教育を変えていく源泉になっている、と言っていいのではなかろうか。
長く不登校の子供や若者にかかわってきた一人として、静かな、しかし深い感慨を意識している。

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