わいわい子ども食堂
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地域で食卓温かく 子ども食堂 名古屋などに開設 貧困、孤食に支援の輪 =中部
地域の子どもたちに、無料または数百円で夕食を提供する「子ども食堂」の開店が各地で相次いでいる。
今や子どもの6人に1人が貧困に直面する時代。
「満足に夕食を食べられない子をなくしたい」「地域に子どもたちの居場所を」というボランティアの活動に賛同の輪が広がり、子ども食堂の普及につながっている。
「普段食べないサラダがあるし、みんなと一緒に食べられておいしい」
6日夕、名古屋市北区のビル2階「[わいわい子ども食堂]」。
約130平方メートルの広さに横長のテーブルが並んだ。
おにぎりやいなりずし、ウィンナー、キャベツとトマトのサラダなどの大皿が占めた。
花見をイメージして作られた献立を前に、生活保護を受けているという近くの小学6年の女児(11)は笑顔を見せた。
中学3年の姉(14)は「栄養が考えられていて、次も食べに行きたくなる」と話した。
食堂は昨年11月から、北医療生活協同組合などの3団体が毎月1回のペースで始めた。
きっかけは「夏休みに家でご飯を食べられず、やせ細った子どもがいる」という言葉。
代表の杉崎伊津子さん(69)が耳にし、「地域で何かできないか」と東京の子ども食堂を参考にした。
1食あたり子ども200円、大人300円。
調理や運営を担う主婦ら約20人は、チラシで協力を求めて集まったボランティア。
米や野菜などの食材は近隣住民から無償で提供を受ける。
当初3人しか集まらなかったこともあったが、今では小学生を中心に約50人が訪れる。
親子連れの姿もある。
時折、スタッフが子どもたちに話しかけて、和やかな雰囲気づくりをしている。
杉崎さんは「子どもだけでなく、一人暮らしのお年寄りらも集える地域の『心地よい居場所』にしたい。月2回開ければ」と話した。
「こども食堂ネットワーク」(東京)によると、子ども食堂は2012年に東京都大田区で八百屋を営む女性が、なじみ客から「家でご飯を食べられない子どもがいる」と聞き、店の一角で食事を提供したのが始まりとされる。
「気軽に利用できれば、一人で食事をする『孤食』も減らせる」と地域で子どもを育てようという機運の高まりもあり、「子ども食堂」は広がった。
現在では、首都圏を中心に全国約100か所で開かれているという。
東海地方では北区以外に千種区や瀬戸市、北名古屋市の寺、長久手市の図書館、三重県桑名市などでオープンしている。
◇「行政は積極支援を」識者
厚生労働省の12年調査で、平均的な所得の半分以下で暮らす世帯の18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は、過去最悪の16・3%に達した。
「料理」で支援できる手軽さで地域やNPOが「子ども食堂」を開く一方、行政の動きはやや鈍い。自治体も検討を始め、北九州市は一人親世帯の子どもへの支援策として、学童保育が終わった夕方以降、開く意向だ。
運営はNPO法人などに委託し、学習支援の場としても活用する。
名古屋市も同様の支援策を検討している。
子ども食堂の各担当者からは「本当に貧困層へ食事が届いているのか見えない」「子どもは無料にすべきだが、食材の提供やボランティアの協力を継続的に受けることができるか」という課題を挙げる声がある。
名城大の昇秀樹教授(まちづくり論)は「社会的な格差が広がる中、子ども食堂は時代の課題を先取りした取り組みだ。子どもだけでなく、多様なライフスタイルを持った人が互いに支え合う場としても意義深い。行政も積極的に支援すべきだ」としている。
〔◆平成28(2016)年4月14日 読売新聞 中部朝刊〕