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Center:2003年12月ー居場所の最近事情

提供: 不登校ウィキ・WikiFutoko | 不登校情報センター
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居場所の最近事情=不登校情報センターの近況報告

〔2003年12月『ひきコミ』第20号に掲載〕

人生模索の会と称して始まった引きこもり経験者が集まる機会は、いまでは毎日開かれるようになりました。
特別のイベントがない限り参加者はおおよそ10人から20人です。
当事者の会となっていますが、司会者がいて会議が行われるわけではありません。
話をしたい人は話し、少し離れていたい人はそこに座っている。
別室で本を読む人、パソコンをする人……それぞれがしたいことをする時間帯です。
これに関して、別掲のように「読売新聞」11月3日付に掲載した短い文があります。
参照して下さい。
  この居場所は、「あゆみ書店」と「喫茶いいな」によって基盤がつくられています。
その引きこもり等の経験者にとっての役割(使い方)を3つの面からみることができます。

(1)外出先としての居場所……家に引きこもっていた人にとっては、適当な外出先はなかなか見つかりにくいようです。
その1つ、人によっては中心的な外出先がこの居場所です。
家が居づらいと感じる人には、逃げ出し先になるかもしれません。
それも使い方としては了解できることです。

(2)対人関係をつくる場……不登校情報センターの居場所に集まるのは、引きこもりや不登校の経験者が主です。
しかしそれに加えて、訪問サポートをしている学生や将来カウンセラーをめざす人、ボランティア、カウンセラー(相談員)そして引きこもりの人の家族もいます。
こういう人がいろいろな組み合わせで同じ場に来ます。
  全体としては意図的に人を排除しようとか攻撃的ではなく、穏やかな人たちです。
しかし、個人間の相性やそのときどきの気持ちの起伏によって心理的なミニ衝突も発生しています。
この状態が人間を学び、人との関係をつくる条件を用意していると思います。
話し相手をみつける、共通の趣味や感心事を見つける、知人・友人になることを期待していける場です。
人間関係の実施訓練の場です。
自分が体験してきたことを話し、他人の経験を聞き、そういう交流を通して個人の経験を同世代の経験のなかに置いて相対化し、位置づけ、その意味や役割を深く理解していける機会にすることができます。
それは人によっては、自分さがし、自己発見、経験の見直し・再評価の機会にもなるでしょう。
この毎日の集まりのうち、毎週土曜日の午後に開かれることになっている「女性の会」は、特別のものになりました。
この会はいつでも成り立つわけではありませんが、その気で参加しようとする女性が数人その場にくれば、いつとはなく始まる主旨の会です。
女性が何人いても出席者にその気がなければ、女性の会としては成立せず、男女混合の居場所になっていることもあります。

(3)収入につながる活動の場……当事者の有志によってまずあゆみ書店がつくられました。
その後、あゆみ仕事クラブとしていくつかの取り組みが形づくられています。
ポスティング(地域新聞、生活情報誌の地域での配布)、内職的な仕事、パソコン関連と印刷・製本…が「収入につながる」場にしようとするこの活動は、今後さらに充実させていこうと考えています。
引きこもり経験者には、アルバイトや就職の形での社会参加ができる(望ましい)人ばかりがいるわけではありません。
この居場所に来ている人たちと一緒なら働ける人もいます。
その人たちが働けるようになることを期待して、まず「収入につながる」取り組みから着手したところです。
いままでこの分野で形をなしてきたものはまだ端緒的な段階です。
今年は2度、フリーマーケットへの出店をしました。
これも将来になってふり返ったとき、何らかの形で「収入になる活動」の出発点であったと評価できるものになることを期待しています。

最近『ひきこもり、セキララ』という本が出版されました。
著者の諸星ノアさんは『ひきコミ』第11号から第18号までの表紙の作者です。
ノアさんにとっては、これが恒常的な社会参加に当たるかどうかはまだうかがい知れませんが、少なくとも当事者の数人には影響を与えるものになるでしょう。
出版物を含む創作系統の「収入につながる」活動は、当事者の会に集まる人が社会参加の一つの分野として芽を出していく予感がします。
手芸や工芸も一種の創造的な活動です。これらは趣味や関心を持つ人の同好会的なところから徐々に発展していく感じがします。
ある程度、専門的な力量をもつ人の助力を要求されるはずです。

新たに「保険代理店業務補助」が、ボランティアを志す人生の先輩によって持ちかけられています。
弁当店(惣菜・お茶?)を開こうという有志もいます。
その場合「喫茶いいな」との関係はどうなるのか、まだ見通しはありませんが、前進していく道程ではっきりしていくに違いありません。

引きこもり経験者にとっての居場所の役割を3つの面から考えてみました。
とくに(3)の収入につながる活動の場は、現情を全体として示しました。
引きこもりから社会参加を考えることは、何かいやなものを口にする気分になる人も多いでしょう。
はたして自分は社会に入っていけるのか、将来が見えない、絶望を味わっている人もいるでしょう。
「収入につながる」活動の場は、まだ貧弱で頼りない状態にあることは確かです。
それでも「この人たちと一緒なら動ける」「これなら自分にもできる」ものを徐々に具体的に実現しています。
「人として誠実にやっていけるなら貧乏でもいい」じゃないでしょうか。
そう思える人は、まだ頼りないけれども仕事起こし的なこの場に来てみませんか。
絶望にもわずかな光はさしてくる……と私は信じています。
“I Never Promise You A Rose Garden”
(ある本の題名です)。

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