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Center:2005年2月ー進化における情報伝達手段(コミュニケーション)の役割

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進化における情報伝達手段(コミュニケーション)の役割

(進化その2)
〔2004年11月14日初稿にいくぶん手を加えた2005年2月15日〕

「進化」に関してすでに第一話は発表しました。
しかし実は昨年それに関して書いたものがあります。
それを第二話として紹介しましょう。
NHK特集で“人類の歴史”を扱っていました(2004年11月14日)。
全7回の連続番組ですが、この日は第6回目、私が見たのは今回が始めてでしかも終わりの20分ほどです。
見た場面は、人類が言語を獲得したところです。
私が知るところでは、人類は大きく4つの段階を経ています。
(1)猿人、(2)原人、(3)旧人、(4)新人(現代人)です。
言語を習得したのは、ホモサピエンス(すなわち新人)というのが、この特集でわかったことです。
この特集でいうと、人類は4段階というよりは、より細かくは19種類の経過をたどったようです。
たぶん「現在確認できた意味で19種類」というほどの意味でしょう。
類人猿から人類(猿人)への分岐になったのは生物学的には直立二足歩行でしょう。
人類学者の今西錦司さん説では、群(むれ)から血族的家族に移行したのが原人(ピテカントローパスなど)の誕生となっています。
では原人と旧人の違いは何か、旧人と新人の違いは何かというのが私の最近のテーマでした(何しろ図書館などで調べる時間がありません)。
そんな問題意識のとき、今回のNHK特集で、旧人と新人の間には、言語の獲得の違いが示されたわけです。
ただ私の推測では旧人においても言語的使用が皆無であったとは思いません。
少なくともほかの動物にみられる鳴き声や叫び声、または乳幼児期のなん語に相当する言語に近いコミュニケーションはあったと考えられます。
ホモサピエンスにおける言語の獲得について、NHK特集ではオックスフォード大学(イギリス)のある教授の見解を紹介しています。
旧人までの人類は、遺伝子による情報伝達は人類以前の生物の歴史の情報伝達)がありました。
言語の獲得は、遺伝子による情報伝達に比べて、はるかに大量の、はるかに速く、はるかに瞬時に(その臨場性を)人類に情報伝達の手段をもたらしました。
言語は第二の遺伝子であると説明しています。
特集では次のナレーションが加わりました。
旧人のもつ遺伝子の突然変異として約4万年前に新人が生まれ、両者はしばらくの期間並存した。
しかしヨーロッパが氷河時代を迎えるなかで新人は生きのび、 旧人は3万年前に死滅した。
1万年前に氷河時代が去ったとき、新人は全世界に広がり、地球を支配した・・・・・。
実はこのNHK特集放映のおよそ1か月ほど前に、インドネシアのフローレス島で新人と旧人が1万年余り前まで並存していた証拠が見つかったという ニュースが報じられました。
それはナレーションのある部分をくつ返す可能性を秘めた発見です。
しかしそれに加えて、私はさらにこのナレーションに2、3の疑問をもっています。
まず突然変異説です。
これは突然変異によって新人がうまれ、それが氷河期に環境適応したのに対して旧人は適応できずに死滅した、という展開です。
本当でしょうか。
私はそうではないと考えます。
人類に種の進化があったのです。
旧人のなかに種の進化が起こり、旧人が全体として新人になっていったのではないかと思います。
これは前の今西錦司さんの進化説を私なりにこの旧人から新人の進化に当てはめて考えた意見です。
これはいずれにしても、人骨などの物的証拠によってどちらが正しいのか実証されるべき問題だと考えられます。

第2の点は、なぜヨーロッパの氷河時代が特に取り上げられるのか、取り上げられたとしてもその限界が示されていないのが不満です。
ネアンデルタール人もクロマニヨン人もヨーロッパで発見された旧人と新人です。
ヨーロッパがその枠内で取り上げられるのは差しつかえないでしょう。
しかし人類はより広域に分布していました。
アフリカにもアジアにも広がっていました。
そこにも旧人も新人もいました。
そこではヨーロッパの氷河期の影響は少なかったと解されます。
同時代のアフリカやアジアの気候状況はそれに準ずるものがあったでしょうが、ヨーロッパとは同じではありません。
その点の言及がないし、その限界を超えて事実上全人類の動向としている点に無理があります。
フローレス島の事態はその一つの破綻を示していると思います。
これはヨーロッパ中心の人類史観の欠点だと思っています。
「猿人⇒原人⇒旧人⇒新人」という人類進化の発展段階の間に、それぞれ何があったのかを、今回のNHK特集では言語という一点で、旧人と新人の間を区分しました。
それはコミュニケーション(情報伝達)が大きな役割をしたことを示しています。
火の使用、道具の製作、労働の仕方、家族の存在様式、生産物あるいは生産財の所有・・・・などの重要な面が、それぞれ何らかの形で関わり、もしかしたらそれぞれの進化の段階を画期づけているのかもしれません。
それらについては私には未解明のままです。
それにもかかわらず、人と人の間、先祖と子孫の間での情報伝達(コミュニケーション)がこの画期の重要な要素であると教えられたことは私はとても示唆に富むことです。
引きこもりは「次の新人(ホモサピエンス)」? 
私のより中心的な問題意識は新人(ホモサピエンス)の次の人類はなにを画期にして登場するのかという点です。
私は密かに感性によるコミュニケーションの発達が見られる人たちが大量に生まれている現状にいるような気がしています。
もしかしたら、旧人のなかから生まれたばかりの少数の新人たち(今西進化説によってもそれは最初は少数であるしかなかった)は、旧人とはむしろ見劣りのする、何か障害を抱えた特別の弱者としてこの世に現れ始めたのではないかと思ってしまいます。
ちょうど引きこもりと言われる繊細な感性の持ち主たちが、「細かいことを気にする」、決断に欠ける優柔不断な、なかなか成人になれない特異な人として登場してきたのと似ているように思えるのです。
この感性にすぐれ、ときに引きこもりに入る人たちは、新人と言われる人類の次の人たちでしょうか。
それとも新人のなかの対人関係に苦労する人たちととらえていればいいのかどうか。
それが私の根本的な疑問でもあります。


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