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Center:137ー恒常的に関わる支援者が引きこもりを見立てる意義

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137-恒常的に関わる支援者が引きこもりを見立てる意義

「『引きこもり』の認定者を実情に合わせて設定」の考え方の下敷きの一つに参考になる意見を紹介します。
少し前に読んでいた本のなかにあるものです。
アレキシス・カレル『人間・この未知なるもの』という人の説、その弱点をも指摘さながら医学の持つ注意点を次のように書いています。
香原志勢『人類生物学入門』(中公新書、1975年)。

「カレルは、この著書のなかで人間の科学の必要を説いている。
そこでは、人間の一面のみをとりあげる危険性をあげ、また、説明できないものを捨ててはならぬと主張し、さらには専門家でない学者の必要を主張した。…

人間にもっとも広く、深く接触する自然科学が医学であることはたしかである。
しかし、医学というものは人間の科学を代表するもっともふさわしい学問とはいえない。
なぜなら、医学とい(5ページ)うものはその出発点において疾病を治療する学問であるからである。
つまり、人間の異常状態を対象としている。…
異常なものは正常なものからどれほどちがうかが問題となるため、その基準として正常値が求められる。
それは点であって、異常である程度はそれからの距離であらわされる。

しかし、正常なものというのは、本来変異あるものであって、決して正常値あるいは平均値のみで表現できるものではない。
その点で、人間を未知なるものとして考える一つの根拠として、人間の個体的変異が大きいこと、いいかえれば個体性が強いことがあげられよう。
一つの刺激にたいする反応についても、人間の場合は他の動物よりさらに反応がまちまちである。
このことが、人間をますます未知なものに仕立てあげたといえよう。…(6ページ)

警戒しなければならないこととして、医学から発した人間の科学はしばしば、成果をはやく求めたがり、優生学に堕する可能性が強い。
しかし、人間の評価、あるいは道徳などというものは、医学教育のなかからは決して生まれくるものではない。
著者は人間の科学における医学の地位を非常に高く評価するため、あえて医学が性急な結論を求めないことを心から祈る次第である」(7ページ)。

  • アレキシス・カレル(Alexis Carrel、1873年6月28日-1944年11月5日)『人間・この未知なるもの』(1936)。
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