働くのが嫌いではなくて…
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2024年9月24日 (火) 09:29時点における版
働くのが嫌いではなくて…
『ひきこもり居場所たより』2024年9月号
8月1日から働き始めて一ヶ月が経とうとしている。
これまでがあまりに多忙な生活だったので、もうそんなに日数が経過しているのかと驚くばかりだ。
ニュースもろくに見ていなかったが、もしかしなくてもオリンピックってもう終わっているのか?
お盆? 何それ美味しいの?
別に今日まで休日がなかったわけではないが、休日もタスクをかなり詰め込んでいたので休めているのかいないのか。
就職を決めて即引っ越し・一人暮らしの準備を同時並行で進めるというのはなかなかしんどいものだった。
が、本日25日にようやく一通りの家電家具が揃って部屋のレイアウトも決めることができた。
こまで突っ走ってきて一つ分かったことがある。私はそんなに働くことが嫌いではないということだ。
私が心底嫌っていたのは働くことそのものではなく、その前に立ちふさがる面接だったのだ。
自分をさも能力的に優れていて意欲のある人物であるように見せることを強制されることは、私にとって詐欺行為を強要されるのと同義であり、そのようなおぞましい行為をするくらいなら働きたくない、と考えていたのがこれまでの私であった。
が、今回は知人の働いている会社を紹介してもらうことで面接というステップを回避することができた。
まあ一応面接自体はあったが、社長は最初からほぼ採用を決めていたような様子であり、事実帰り際に作業服一式を渡されたり、その場に居た社員に紹介されたりといった具合だった。
仕事の内容は先月ビルメンテナンスと書いたと思うが、実際はほぼ清掃だ。
大部分の現場はパートの清掃員の方に任されているが、事前申請での休みや突然の体調不良、求人になかなか応募がないといった理由でどうしても穴が空いてしまう。
その穴埋めにあちこちの現場を渡り歩くというのが現在の私の主な仕事内容になっている。
要するに、やっていることはパートのおじいさん、おばあさんでもできる仕事であり、それなのに正社員としての給料はもらえるという意外と美味しい立ち位置である。
しかし無論良いことばかりではない。現場によってはマンションのゴミ出しも仕事に含まれるので、相当朝早くに起きて現場へ向かう必要がある。
そしてゴミ置き場となると、あえて具体的には書かないが「ヤツ」と遭遇することもある。
酷い現場に当たった日には、私が今までの人生で倒してきた「ヤツ」の数を合計して三倍したくらいの数を倒すことになった。
そこで私はふと思った。「これがいわゆる3K(きつい、危険、汚い)仕事というやつか?」と。
完全に当てはまっている気がするが、不思議とそれは自分がこの仕事を嫌う理由にはならなかった。
たしかに「ヤツ」と遭遇するのは生理的嫌悪感が湧き上がってくるが、自分の生活スペース内で遭遇したわけではないのでその嫌悪感は思っていたほどではなかった。
それ以外にも汚いものを見ることは多いが、物理的に汚い物はきちんと掃除すればある程度綺麗にはなる。
嫌な人間と接する時の嫌悪感やストレスと比べたらそんなものは大した問題ではない。
人間のほうは嫌な奴だからと言って「掃除」するわけには行かず、ほぼ対処不能であることを考えればただ汚いだけの物など可愛いものだ。
だから世間的には3K仕事であっても、私にとっては嫌な仕事ではない。
むしろこの世で最も尊い仕事だとすら思っている。
なぜならこの仕事が私を生かしてくれているからだ。それだけで清掃業は尊いのだ。
……先月までの私なら絶対言わないような台詞だと自分でも思う。
それともう一つ気付いたことがある。
たとえ渋谷や青山といった良い所に住んでいてバリバリ仕事もこなして身なりも小綺麗にしているような人間でも、ごみの分別ができない人間はいる。
可燃ごみの中にフライパンを突っ込むような品性を疑う捨て方をする人が、どこの現場にもいる。なぜそれで平気で居られるのかが不思議でならない。
それはトイレで用を足した後に尻を拭かずにいるようなものであると思う。
いくら社会的地位やオシャレな服で身を着飾ろうと、それでは見た目と中身が全く釣り合っていない。羊頭狗肉の良い見本だ。
ごみの分別ができない奴は人としての分別がないと言ってよいだろう。
とまあ後から汚いゴミ袋に手を突っ込んで分別をするほうの身にもなれという愚痴を吐き出しつつ、さようなら。