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Center:2004年9月ー子どもの中に生まれた持ち味を育てよう

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2012年3月28日 (水) 20:15時点における版

目次

子どもの中に生まれた持ち味を育てよう

松田武己・不登校情報センター代表に聞く
(出典『灯台』2004年9月号、第三文明社に掲載)

不登校の児童・生徒数は14~15万人以上いる

文部科学省の基準では年間30日以上、病気および経済的理由以外で欠席する児童・生徒を「不登校」としています。
不登校の子どもは、全国の小中学生の中で14~15万人いると言われていますが、実は高校生にも同じくらいいると思われます。

これは、小学校高学年や中学校のどのクラスにも、1人や2人は不登校の子どもが存在していることになります。
高校の場合は学校間格差がありますが、平均すると中学校と同じぐらい、不登校の生徒がいると思われます。

文部科学省は、教育委員会が主催する教育相談室に行けば、登校に準じたものとして扱っています。
1年間に5日間、教育相談室に行った子は、その他に28日間、学校を休んでいても、不登校児とは数えられないわけです。
ですから、「不登校児・生徒が全国14~15万人」という数字も参考記録程度に受け取った方がいいでしょう。

「子ども時代」がなかった不登校の子どもたち

昔から、学校に行かない子どもたちはいました。
経済的理由や家族の関係、非行が原因で不登校となっている子どもたちには活力があるので、ある時期を過ぎて大人になれば、それなりに社会活動ができるようになるものです。

いま問題となっているのは、神経症的な子どもです。
これが、社会問題となっている「不登校」の一番大きな問題ではないかと思います。
彼らは、傷つきやすく敏感な、非常に繊細な感性の持ち主です。
かつて不登校を経験し、現在、20代、30代になっている人たちが、興味深いことを言っています。
「自分には子ども時代がなかった」と言うのです。
「子ども時代がない」とは、子どもらしく育てられなかったということで、極端な例としては児童虐待があげられます。
虐待された子には、子ども時代はありません。

また、親の相談相手、カウンセラー役をさせられたという場合にも、子ども時代はなくなります。
夫婦げんかや嫁姑間の悩みをいつも見たり聞かされたりしたら、無邪気な子ども時代は過ごせません。

また「子どもの中から育ったものが摘み取られ、親が自分の大事なものを子どもに植え付けようとした」場合もあてはまります。
これは善意からの、役に立つことを早く始めてほしい、という親心の発露と言えます。
しかし、親が重要視している価値観を子どもに植え付けようとしても、成功するのは、子どもの持ち味とマッチしたときだけです。
子ども側からすれば、本当の自分が認められない、褒められない、いつも怒られている、という感覚で子ども時代を過ごすことになります。

親の側からすれば、自分は子どものことをよく知っている、よく分かっている、というつもりで行っていることが多いようです。

親の善意を子どもに押し付けない

親が子どもにする「励まし」も、ときには問題です。
例えば、子どもが泣いて帰ってきた。
それは仲間外れにされたためだった。
子どものどこかにそうなる原因があるはずだけど、親はそこには眼を向けないで、「きっと行き違いだから、もう一度その子のところに行っておいで」と振り向かせて、背中を押す親としては、最善の行動をとったつもりでしょう。
でも、子どもにとっては、もっと重大な何かを親に受け止められていないことを、繊細な神経で感じ取っています。

親からしてみれば、「まさか、そんなことが」と思うようなことが、子どもにしてみれば、親に分かってもらえない、受け入れられてない、というストレスとして蓄積するのです。
それが3年、5年、10年と続けば、大変なストレスが蓄積されます。
元気な子どもにはストレスとならなくても、繊細な感性の持ち主にとっては、「親に受け入れてもらった経験がない」というストレスになってしまうのです。

しかも厄介なのは、そのストレスの原因となる親の言動が、善意から出ているということです。
善意であるがうえに、子どもには防衛のしようがありません。

驚くことに、不登校を経験した人には、2、3歳のかなり小さい時の記憶が鮮明に残っていることがあります。
泣き叫んでいたのに、誰も来てくれない、無視された、そういう記憶です。
それが人間への不安、不信感となっていたわけです。
いま求められていることは、大人にとって大事なものを子どもに植え付けようとするのではなく、子どもの中から見つけていくという、発想の転換ではないでしょうか。    
      (談)

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