ファミマこども食堂
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2021年7月23日 (金) 12:18時点における版
ファミマこども食堂
種類・内容 | 埼玉県はコンビニ大手ファミリーマートと連携し、県内3店舗で子ども食堂を開いた。 同社と県は2008年に包括的連携協定を結んでおり、締結10周年を記念して子ども食堂を実施。 |
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所在地 | 〒 |
運営者・代表 | |
TEL | 埼玉子ども食堂担当(048・822・1209) |
新聞記事 | 平成30(2018)年12月8日 毎日新聞 地方版 平成31(2019)年1月22日 日本経済新聞 電子版 |
ファミマ子ども食堂への3つの懸念と意見 子ども食堂の取り組みを発表したファミリーマート
ファミリーマートが子ども食堂!?
2月1日にコンビニエンスストア大手のファミリーマートが子ども食堂の取り組みを始めると以下の通り発表した。
株式会社ファミリーマート(本社:東京都豊島区/代表取締役社長:澤田貴司)は、地域交流および未来を担うこどもたちを応援する取り組みの一環として、2019年3月より「ファミマこども食堂」の取り組みを開始いたします。
「ファミマこども食堂」の取り組みにより、全国のファミリーマートの店舗を活用し、地域のこどもたちや近隣の皆さまが、共に食卓を囲みコミュニケーションできる機会を提供することで、地域の活性化につなげてまいります。
ファミリーマートでは2018年度に東京都、神奈川県、埼玉県の5店舗で「ファミマこども食堂」をトライアル開催いたしました。
このトライアルを通じて、「皆と仲良く話せて良かった」「学年を超えた交流を楽しめた」(参加者アンケートより)といった反響を頂き、開催地域を全国に拡大することを決定いたしました。
「ファミマこども食堂」では、地域のこどもと保護者を対象に、参加者みんなで一緒に楽しく食事をするほか、ファミリーマート店舗のバックヤード探検やレジ打ちなどの体験イベントを通じて、ファミリーマートに関するご理解を深めていただく取り組みもあわせて実施します(店舗により、一部内容が異なります)。
ファミリーマートは、今後とも地域に寄り添い、地域のお客さまのニーズに応じて、全力を尽くして進化し続けてまいります。
■「ファミマこども食堂」の概要
概要:ファミリーマートの店舗スペースを活用し、近隣のこどもや保護者を対象に食事を楽しむ取り組み
対象:店舗近隣にお住まいのこども、及びその保護者
(小学生以上は保護者の同意があれば1人でも参加可能)
参加人数:約10名/回
参加料金:こども(小学生以下)100円、 保護者(中学生以上)400円
プログラム:オリエンテーション/みんなとお食事(約40分)
体験イベント(約20分)
※店舗により一部内容が異なります。
出典:「ファミマこども食堂」を全国で展開
この発表を受けて、これは子ども食堂なのだろうか、単なる企業の商品提供、企業体験の場ではないか、という印象を持った。
これまでTwitterでも疑義を呈してきたが、僕の主張をまとめておきたい。
ファミマ子ども食堂への懸念1 従来の子ども食堂との大きすぎる差異
従来の子ども食堂は先駆者であり、子ども支援にかかわる市民団体が全国各地で試行錯誤を続けながら、子どもの居場所や交流スペースを主体にして運営をおこなってきた。
各団体は資金難に苦しみながらも、努力を重ねながら実施対象を増やしたり、ボランティア募集して尽力している。
現在の子育て世帯は夫婦共働きが一般的であり、子どもたちの孤食や「コンビニ食」が広がっている。
保護者は子どもたちと食事をとる時間がなく、近隣のおじさん、おばさんが一緒に食事をしようという場が子ども食堂であった。
あるいは保護者も食事を作るのは大変なので、近隣のおじさん、おばさんが作ってくれる料理を楽しみに参加する場合もある。
子ども食堂では、手づくりで温かい家庭的な食事を提供されることが一般的であり、毎食工夫をしながら運営者が調理に取り組んでいる。
参加費用、食事代もそれぞれで設定しており、無料なところ、保護者は有料なところ、それぞれ負担してもらうところなど様々だ。
子ども食堂は、食事を提供するだけではなく、子どもとの交流も目的に地域での見守り支援や家庭への支援も含まれている場合が多い。
子どもたちの話を遅くまで聴いている地域のおじさん、おばさんが子ども食堂にはいる。
ファミリーマートではこの地域のおじさん、おばさんが大事に作ってきたものをどう評価して運営していくのだろうか。
全く別物だと言えるかもしれないが、手づくり調理や温かい交流の場を企業が創出することは可能だろうか。
残念ながら、後述するが、コンビニエンスストアは多忙であり、非正規雇用を中心に業務を展開している。
ファミマ子ども食堂は、間違っても無給での運営にしないでいただきたいが、給与が発生したとしても、自発的な子ども食堂の実践と比べて同様の展開が可能だろうか。
本部からスタッフは派遣されるのだろうか。不安が尽きない。
それから、子ども食堂を名乗るのであれば、マニュアル化した形式的な取り組みではなく、先駆者たちの実践(温かい食事、献身的な交流、福祉的支援)に敬意をもって、せめて理念や思想を共有してほしい。
しかし、従来の子ども食堂のような実践にするならば、企業ができる領域でもないと思っている。
全国の子ども食堂を見ていても、温かい食事、献身的な交流、福祉的支援は、市民の主体性・自発性に支えられている。
赤字や持ち出しでも実施するのだという熱意に動かされている子ども食堂もある。
これらと比較するのは申し訳ないが、あまりにも「子ども食堂」から逸脱したものしかイメージできないのである。
ファミリーマートは、従来の熱意ある子ども食堂への資金提供、食料提供などの間接支援ではいけなかったのだろうか。
「子ども食堂」を名乗って、直接参入する意味は何があるのだろうか。
ファミマ子ども食堂への懸念2 低賃金労働を強いたうえでの子ども食堂は何度でも批判する
日本のシングルマザーの貧困、子どもの貧困は深刻である。
シングルマザー等の相対的貧困率は50.8%にまでおよび、日夜働いても生活が苦しい。
シングルマザーは80%以上が働いているにもかかわらず、相対的貧困から抜け出せない。
なぜかといえば、明らかに賃金が低い労働に従事しているからだ。
ある子ども食堂で2人の小学生と食事をしていた30代のシングルマザーは、コンビニエンスストアで時給900円で働き、週末は深夜に飲食店でアルバイトをしている。
週に6日働きながら、一緒に食事をしていた2人の子どもを育てている。日曜日だけ唯一の休みなので、体力を取り戻すために休息する。そのため、子どもと向き合えないともいう。家賃もかかるし、習い事の月謝やスマホ代も高く、家計は常に火の車だ。
彼女はいわゆるダブルワークであり、2つの職場を合わせても収入は手取りで19万円程度にしかならない。
これ以外に児童扶養手当、児童手当が入るが、十分な金額ではない。
本当は子どもと過ごす時間もほしいはずだし、下の子は不登校気味なので時間をかけてあげたいと話すが、その時間を取れば一家が困窮することは明らかだ。
まず彼女はコンビニエンスストアに勤めている。
コンビニエンスストア、小売業の産業自体が貧困やワーキングプアを再生産していることは執拗に指摘しておかなければならない。
指摘しなければ彼女たちに申し訳が立たない。小売業、飲食業にはシングルマザーが多く、低賃金で子どもを育てている。
子どもの貧困を生み出しているのは誰なのか。もう一度「子ども食堂」を名乗る前に考えていただきたい。
「企業が善意で取り組むことならば何でもやるべきだ。やらない善よりやる偽善。」など様々な声が聞かれるが、まずやるべきことはなんだろうか。
僕は子どもに商品提供や企業体験をさせることではないはずだと繰り返し指摘しておく。
さらに、コンビニエンスストアのオーナーは最低賃金を割り込む賃金で働くこともあるし、アルバイトも最低賃金周辺の賃金で働いている。
そのなかには前述したように、子育て世帯の従業員も含まれている。
子ども支援に取り組むのであれば、まず自社関連の従業員の処遇改善を業界全体で引き上げていくことこそ、優先すべきであろう。
ワーキングプアを構造的に発生させながら、子ども支援に取り組む姿は、火をつけながら消火活動をするような印象をどうしても持たざるを得ない。
少なくとも小売業からワーキングプアを減らす取り組みや宣言が見られるだけでも印象は違ったはずだ。
ファミマ子ども食堂への懸念3 国家責任を後退させる民間支援
ファミリーマートの子ども食堂は貧困対策を謳っていない。ここはありがたいことだ。
そもそも従来の子ども食堂にも貧困対策を期待するのであれば、食事提供するだけ、交流するだけでは無理である。
子ども食堂の運営者が子どもの貧困に気づいた場合、手続きを援助するのは、生活保護申請や社会福祉協議会の生活福祉資金、教育資金などの制度利用である。
生活費を支給したり、継続的な支援は困難だ。だから、行政の制度利用によって貧困や生活苦は緩和される。
まず、貧困対策の基礎はこのような所得再分配をおこなわなければ、解消することはほとんど見られない。
あるいは保護者への生活費付きの職業訓練や資格取得支援も必要かもしれない。
公営住宅の提供や家賃補助、教育費負担軽減など家計を助ける支援を入れていく必要もあるだろう。
これら生存や社会権にかかる部分を第一義的に支援するのは、政府や自治体である。
子ども食堂でもNPOでも民間企業でもない。
税や保険料を原資として再分配をおこなわなければならない社会問題だ。
繰り返すが子どもの貧困は政府や自治体が責任をもって改善させる社会問題である。
これまで寄付や民間の善意、市場に委ね続けてきたのが、日本の公的福祉である。
内閣府は「子ども未来応援基金」などの寄付を集めて、子ども対策費を捻出しているが、税や保険料で拠出するべきだろう。
介護も保育も市場開放し、市場原理に基づく経営や運営が広がっている。
行政の存在意義が地域で見えなくなっていることは言うまでもない。
政府や自治体がこれ以上の公的責任を放棄したらどうなるだろうか。
民間に委ねておけば、政府は責任を果たさなくていいと思うだろうか。僕はそうさせてはいけないと思っている。
民間企業やNPOによる活動が政府による公的福祉を削減したり、縮小する口実を与えてはいけないはずだ。
子ども食堂には食事にも事欠く子どもが来るのではないか、という印象を持たれがちだが、実はそのような子どもは子ども食堂で捕捉できる状況にはない。
全国の子ども食堂では「要保護児童にどうしたら手を伸ばせるか」というテーマが常に議題に上がるほど、保護が必要な児童は子ども食堂には来れていないし、捕捉しきれていない。
やはり、それらの子どもたちは自治体の保健師や児童福祉司、児童相談所、学校や保護者たちと連携して、制度利用や支援にかかわるべきだろう。
懸命に対応してくださっているとはいえ、貧困対策を子ども食堂運営者が担うというのは無理な話である。
いずれにしても子ども食堂が議論のテーマに上がるのはいいことだと思う。
この議論を契機に子どもの貧困対策や不十分な社会保障政策に光が当たることを期待している。
藤田孝典
NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学人間福祉学部客員准教授
1982年生まれ。埼玉県越谷市在住。社会福祉士。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。
生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する活動と提言を行う。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論など)。
反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。元・厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(生活困窮者自立支援法)。
著書に『貧困クライシス』(毎日新聞出版 2017)『貧困世代』(講談社 2016)『下流老人』(朝日新聞出版 2015)『ひとりも殺させない』(堀之内出版 2013)共著に『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(岩波書店 2015)など多数。
〔2019年2/3(日) 藤田孝典 NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学人間福祉学部客員准教授〕