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不登校・中退生の受け入れ状況

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[[Category:不登校・引きこもりとその支援に関する調査と集計|01997]]
 
[[Category:不登校・引きこもりとその支援に関する調査と集計|01997]]
 
[[Category:『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』|04]]
 
[[Category:『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』|04]]
<htmlet>amazon_ikoma_tomio_book001</htmlet>
+
[[Category:不登校情報センター・五十田猛・論文とエッセイ|1997年09月]]

2020年6月9日 (火) 00:13時点における版


目次

不登校・中退生の受け入れ状況

(出典『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』不登校情報センター(編)、東京学参1997年)

多くの若者にとって、高校卒業あるいは同等資格を持たないことは、社会的ハンディキャップになっています。
それを知っているはずの方からさえ、「高校は義務教育ではない」「高校卒業という学歴にとらわれているのでは……」という意見が出されることがあります。

私のように「本人が望むならばすべての若者に高校教育を」すすめる者にとって、残念なことです。
これでは高校卒業でない若者は救われない、と思います。
私は学歴によって人間として何ら不利益を受けない社会をめざしています。
そのことといまやっていることは矛盾しないばかりか、正攻法の接近方法だと考えています。

実は日本国憲法では、学歴によって人は不利益を受けないことが決められています。
憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と謳われており、私は学歴を社会的身分の一つと考えています。

この精神を生かす、あるいは実現する方法として「高校は義務教育ではないから……」とする立場では、何をするのでしょうか。
中学校卒業で差別なく社会的に生活をしていける条件をどう広げていけるのでしょうか。
どんな考え方、展望、方策が準備されているのでしょうか。
現に苦しんでいる若者の困難を一つひとつ解決していく方策のなかに、打開の道を求めないで、どこに展望を求めようとするのでしょうか?

高校教育は義務教育ではないし、私は義務教育にしない方がいいと思います。
しかし高校教育を望む人には、公機関(official)と社会(public)があらゆる方法を尽くして、それを保障し、援助すべきものだと思います。
高校卒業でないことが社会的ハンディキャップになる今日の日本では、それは当然であるし、それが高校教育を「準義務教育」とする準の内容ではないかと思います。

その高校教育を望む若者がどのような状態におかれていても、これは変わりません。
たとえば障害者であっても、非行や罪を犯していても、日本に居住する少数民族や外国人であっても同じです。
さまざまな状態におかれている不登校や高校中退の若者にたいしても同じです。

この本では高校卒業あるいはそれと同等資格に当たる教育機関―それが公制度として認定されているかどうかは関係なく、これらの若者の要請にこたえるために、社会的に対応している教育機関―を紹介しています。
これらの教育機関のなかには、いわゆる「問題のある」ところもあり得るかもしれません。
それは認定校であっても一条校であっても同じことで、社会的に糾していくことが筋道であろうと思います。

今回の情報本を編集するために、対象となる各校から紹介記事となるデータを送っていただきました。
同時に個別の学校の数値は公表しない約束で生徒の状態に関する情報提供もお願いしました。
それらの情報のなかで、不登校・高校中退生の受け入れ状況と関係する部分を集計したのが表1「校種別の不登校・中退生の受け入れ状況〔97年〕」です。

この表によって、定時制高校、通信制高校、高等専修学校、通信制高校サポート校、大検予備校が、不登校・高校中退生をどの程度受け入れているのかを、ある程度知ることができます。
この数字は、いろんな制約条件のもとで、限定的に評価してみなくてはなりません。
その理由は多岐にわたりわずらわしくなりますので、最後の方にまとめておきました。
このことの重要性に気づいておられる方は、ぜひ参照していただきたいと思います。

それでも、この表1およびこれから出てくる各種の図・表を見る際に注意してほしいことがあります。
それは学校毎あるいは校種別に、把握しようとしている情況や背景が違うことです。
生徒の調査票に中学時代の長期欠席者であることを記す項目がなかったり、就職しているかどうかは不要であったり、あるいはその意味する範囲が独自のものであったりすることです。
不明とか概数という学校があるのはそのためですし、またそのようなデータを完全に外部には提示しないとする学校もあります。

その結果、項目ごとに対象となる学校(生徒数)が異なり、比率算定の分母となる対象生徒数(母集団)が異なる事態となりました。
図表において「合計」欄とは別に「対象生徒数」欄があるにはそのためです。

しかしそれでも、一校だけ単独に見ていたのではわかりにくい構造的な動向を、ある程度の学校数を見ることのなかから浮かび上がらせているように思います。
それは、「当たらずとも遠からず」という状態描写になっていると思います。


表1 校種別の不登校・中退生の受入れ状況〔97年〕
 
学校分類 生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退
からの再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 学校数 別表NO.
①夜間定時制
普通科
実数 2,078 290 413 529 6 22 表2-1
対象
生徒数
  2,078 2,078 1,867 2,078
比率   14.0% 19.9% 28.3% 0.3%
②夜間定時制
工業科
実数 1,128 101 95 151 2 10 表2-2
対象
生徒数
  1,128 1,128 950950
比率   9.0% 8.4% 15.9% 0.2%
③夜間定時制
商業科
実数 556 46 62 47 0 6 表2-3
対象
生徒数
  453 418 459 242
比率   10.2% 14.8% 10.4% 0%
④夜間定時制
農業科
実数 329 26 25 2 0 4 表2-4
対象
生徒数
  266 266 108 266
比率   9.8% 9.4% 1.9% 0%
①~④
小計
(夜間定時制)
実数 4,091 463 595 729 8 42  
対象
生徒数
  3,925 3,890 3,384 3,536
比率   11.8% 15.3% 21.5% 0.2%
⑤昼間定時制
(夜間併置含む)
実数 776 91 92 268 41 7 表2-5
対象
生徒数
  758 758 758 742
比率   12.0% 12.1% 35.4% 5.5%
⑥通信制高校 実数 11,937 1,254 458 298 111 10 表2-6
対象
生徒数
  6,466 5,298 4,602 5,146
比率   19.4% 8.6% 6.5% 2.2%
①~⑥
合計
(定時制・通信制)
実数 16,804 1,808 1,145 1,259 160 59  
対象
生徒数
  11,149 9,946 8,744 9,242
比率   16.2% 11.5% 14.8% 1.7%
⑦高等専修学校
(通信制併修)
実数 4,962   162 (410) 0 17 表3-1
対象
生徒数
    4,946 4,215 4,453
比率     3.3% 9.7% 0%
⑧高等専修学校
(単独型)
実数 1,770   187 177 16 19 表3-2
対象
生徒数
    1,067 913 1,369
比率     17.5% 19.4% 1.2%
⑦+⑧
小計
(高等専修学校)
実数 6,732   349 587 16 36  
対象
生徒数
    6,013 5,216 5,822
比率     5.8% 11.4% 0.3%
⑨通信制高校サポート校 実数 4,759   277 971 (15) 19 表4-1
対象
生徒数
    2,938 2,938 2,955
比率     9.4% 33.0% 0.5%
⑩通信サポート
+大検予備校
実数 295   76 22 206 8 表4-2
対象
生徒数
    133 285 285
比率     57.1% 7.7% 72.3%
⑪大検予備校 実数 1,645   700 136 836 14 表4-3
対象
生徒数
    1,030 620 1,030
比率     68.0% 21.9% 83.8%


表2-1 夜間定時制高校(普通科)の生徒の状況
( )は概数、合計に算定している
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 352 (50) (200) 204 0 148
2 135 15 40 30 1 88
3 153 27 17 40 0 83
4 77 5 4 (15) 0 68
5 82 15 15 12 2 55
6 55 10 4 18 0 30
7 58 8 11 4 0 39
8 181 51 15 18 0 118
9 126 15 4 14 2 63
10 31 4 12 5 0 -
11 20 7 0 1 0 13
12 20 1 1 4 0 8
13 36 2 0 1 0 22
14 211 14 28 - 0 -
15 47 2 2 0 0 5
16 85 14 14 40 0 48
17 26 3 0 2 0 17
18 54 5 1 14 0 24
19 91 12 14 32 0 51
20 100 23 21 33 1 61
21 67 4 7 36 0 53
22 71 3 3 6 0 35
合計 実数 2,078 290 413 529 6 1,029
対象
生徒数
2,078 2,078 1,867 2,078 1,836
比率 14.0% 19.9% 28.3% 0.3% 56.0%
表2-2 夜間定時制高校(工業科)の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 56 34 8 0 0 50
2 35 5 3 3 0 25
3 26 2 3 0 0 25
4 335 15 2 40 0 213
5 178 9 10 - - -
6 127 2 26 35 0 72
7 25 0 2 6 0 5
8 67 1 1 19 0 60
9 64 8 6 18 0 49
10 215 25 34 (30) 2 90
合計 実数   101 95 151 2 589
対象
生徒数
1,128 1,128 1,128 950 950 950
比率   9.0% 8.4% 15.9% 0.2% 62.0%
表2-3 夜間定時制高校(商業科)の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 35 0 - 0 - -
2 82 4 11 6 - 48
3 88 28 43 18 - 60
4 103 - - - 0 69
5 109 8 4 23 - 58
6 139 6 4 0 0 36
合計 実数   46 62 47 0 271
対象
生徒数
556 453 418 459 242 521
比率   10.2% 14.8% 10.4% 0% 52.0%
表2-4 夜間定時制高校(農業科)の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 158 25 25 - 0 -
2 8 1 0 0 0 0
3 63 - - - - -
4 100 0 0 2 0 0
合計 実数   26 25 2 0 0
対象
生徒数
329 266 266 108 266 108
比率   9.8% 9.4% 1.9% 0% 0%
表2-5 昼間定時制高校(夜間併置を含む)の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 18 - - - - -
2 16 1 0 3 - 16
3 249 32 41 50 29 60
4 143 0 5 56 0 27
5 198 46 40 104 11 62
6 148 11 6 55 1 60
7 4 1 0 0 0 0
合計 実数   91 92 268 41 225
対象
生徒数
776 758 758 758 742 758
比率   12.0% 12.1% 35.4% 5.5% 29.7%
表2-6 通信制高校の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 3,331 - - - - -
2 142 78 78 3 20 35
3 696 106 50 - - 大多数
4 1,476 - - - - -
5 2,307 538 101 120 7 -
6 661 300 130 150 45 120
7 204 74 41 22 2 34
8 664 - - - 16 378
9 1,168 100 - - 21 -
10 1,288 58 58 3 - -
合計 実数   1,254 458 298 111 567
対象
生徒数
11,937 6,466 5,298 4,602 5,146 1,671
比率   19,4% 8.6% 6.5% 2.2% 33.9%
表3-1 高等専修学校〔通信制高校併修〕の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 42   7 6 0 0
2 64   4 47 0 0
3 217   2 20 0 0
4 665   10 (40~50) 0 0
5 408   18 (60) 0 0
6 731   0 数名 0 186
7 451   10 30 0 186
8 86   78 4 0 8
9 608   4 12 0 0
10 64   1 5 0 0
11 383   7 (40) 0 0
12 52   1 12 0 -
13 90   4 32 0 -
14 493   6 21 - -
15 459   3 59 0 0
16 133   7 17 0 0
17 16   - - - -
合計 実数     162 405~415 0 194
対象
生徒数
4,962   4,946 4,215 4,453 3,860
比率     3.3% 9.6%~9.8% 0% 5.0%
<参考> 全日制(寮のある)高校の生徒の状況
  学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
この数値は、全日制で寮をもつ高校の一部が、不登校・中退生を積極的に受け入れている状況ですから、全体を表すものとしては役立ちません。
1 100 0 24 89
2 357 数名 数% 8割以上
3 315 22 6 55
4 154 0 154 数名
5 661 60 130 70
6 101 2 3 -
7 229 - - -
8 34 11 3 6
合計 実数   95 320 220
対象
生徒数
1,951 1,365 1,365 1,110
比率   7.0% 23.4% 19.8%
表3-2 高等専修学校〔通信制高校と併修でない単独校〕の生徒の状況
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 就職者数
1 -   6 91 - -
2 125   38 25 4 3
3 61   29 5 0 0
4 111   4 40 2 0
5 74   2 - - 8
6 25   6 3 1 1
7 7   4 3 0 0
8 202   0 50 0 0
9 90   8 6 7 5
10 195   - - - -
11 508   ? - 0 0
12 52   4 6 2 3
13 80   8 - - -
14 60   36 10 0 3
15 68   15 18 0 3
16 -   - - - -
17 20   2 2 - -
18 32   28 4 - -
19 60   3 5 0 -
合計 実数 1,770   187 177 16 75
対象
生徒数
(2校除く)   1,067 913 1,369 1,383
比率     17.5% 19.4% 1.2% 5.4%
表4-1 通信制高校サポート校(一部の技能連携校を含む)
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者
1 963   14 155 0
2 244   20 47 0
3 30   29 2 2
4 9   9 7 7
5 25   8 16 3
6 30   ? ? 0
7 299   3 (180) 0
8 484   3 (180) 0
9 36   14 33 0
10 13   1 12 1
11 75   10 38 0
12 121   38 42 0
13 166   110 80 1~3
14 644   - - -
15 500   - - -
16 13   8 12 1
17 647 あり あり あり
18 47   8 27 0
19 391   2 (140) 0
合計 実数     277 971 14~16
対象
生徒数
4,759   2,938 2,938 2,955
比率     9.4% 33.0% 0.5%
表4-2 「通信制高校サポート校+大検予備校」併置型
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者
1 162   ? 2 109
2 5   3 5 4
3 15   13 0 7
4 40   30 2 30
5 11   8 1 3
6 40   10 5 40
7 12   4 7 -
8 10   8 ? -
合計 実数     76 22 206
対象
生徒数
295   133 285 285
比率     57.1% 7.7% 72.3%
表4-2 大検予備校
学校
NO.
生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退から
の再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者
1 10   10 5 10
2 16   15 ? 13
3 -   70 1 18
4 43   40 5 43
5 72   70 40 64
6 6   2 6 3
7 240   - - -
8 157   40 ? 155
9 98   91 9 98
10 237   109 ? 215
11 190   188 47 143
12 62   24 7 32
13 375   - - -
14 139   111 17 87
合計 実数     700 136 863
対象
生徒数
1,645   1,030 620 1,030
比率     68.0% 21.9% 83.8%

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高校中退生の受け皿

全日制高校からの転入者と編入者または高校中退からの再入学者の違いは、実は必ずしも正確に区別されているとはいい難いところですが、両者をあわせてみることで、高校中退生(とくに全日制高校からの中退)がどの程度受け入れられているかを知り得ます。
表記を簡単にするため、ここでは前者を転入者(全日制高校からの転入者を意味する)、後者を再入学者(高校中退からの再入学者を意味する)とします。

夜間定時制高校では、全生徒のうち転入者が11.8%、再入学者が15.3%、合計すると(一部は重複して算定されている可能性がある)5人に1人以上をしめるものと見られます。
特に普通科は転入者14.0%、再入学者19.9%を占めています。
職業科を選択した生徒の方が、いろいろな意味での選択の幅が限定されていることと無関係ではないでしょう。

昼間定時制(夜間併置を含む)高校は、転入者12.0%、再入学者12.1%、合計24.1%です。
これは夜間定時制の水準とほぼ同じものと考えられます。
後で(図4)みるように、昼間定時制の生徒の就職者率は約30%で、夜間定時制生徒の55%の約半分近くでしかありません。
この意味するところは別の機会に調査し、検討したいと思います。

通信制高校は転入者19.4%、再入学者8.6%、合計28%であり比率としても、また実数としてもいちばん大きな部分をしめています。
ただ再入学者は私の予測や実感よりも低い気がします。
これはたぶん通信制高校においてそのことを把握しておく必要性が定時制高校よりも低くなっており、それが関係しているように思います。

高等専修学校(専修学校高等課程)は、再入学者のデータしかありません。
①生徒が通信制高校と併修になり高等専修学校と通信制高校を同時に卒業できる併修型の学校と
②大学入学資格のとれる3年制の単独型の高等専修学校に分けてデータを集計してみました。

そうすると再入学者の占める比率は併修型が3.3%、単独型が17.5%と大きな開きのあることがわかりました。
この開きがなぜ生まれるのかは私には十分にはわかりません。

通信制高校サポート校と大検予備校は、いわば枠外の高校教育相当機関です。
この2つの性格をあわせもつ「通信制サポート+大検」を加えて、3種類に分類して集計してみました。
データは再入学というよりは高校中退者の受け入れというとらえ方がいいでしょう。
サポート校が9.4%であるのに対して、大検予備校は68%、「サポート校+大検」は57%ときわめて大きな特色を示しています。

以上の転入者と再入学者をグラフで表示しておきます(図1-1、図1-2)。 Ukeire z1-1.gif

Ukeire z1-2.jpg

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不登校生の受け入れ

「中学時代の長欠者」についてもグラフに示しました(図2)。比率が高いのは昼間定時制高校35.4%、通信制高校サポート校33%、および夜間定時制高校普通科です。昼間定時制高校はきわめて数が少ないこと、通信制高校サポート校も同様でしかも大都市域に偏在していることを考えると、夜間定時制高校普通科が不十分ながらそれを肩代わりしているように見て取れます。昼間定時制や通信制高校サポート校が設定されれば、夜間定時制普通科からの移動も予想されます。さらに全日制高校普通科が不登校生を受け入れるようになれば(制度としても対応能力としても)、最も自然な姿で事態は進展するように思います。

Ukeire z2.gif

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大検制度の活用

 表1に表示したすべての学校が、大検(大学入学資格検定)を活用することができます。そして、それぞれがどの程度活用しているのかを図示したのが図3です。

 図3で一目瞭然です。大検予備校以外は、本気で大検を活用しようとしている学校はない、といっていいぐらいでしょう。昼間定時制高校の5.5%が少し目につきますが、ほかが利用していないから高く見えるだけのことであって、積極的な活用とは思えません。おそらく学校側が大検を受検するよう指導をすすめるというのはほとんどないでしょう。生徒の大検を受けるという申し出に学校側が受けて立つという状態にあるようです。

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大検の単位認定

 学校側の大検に対する対応の基本のところに戻って事態をみます。大検合格科目を、その学校の教育課程における単位取得として認めるかどうかを表したのが表5-1です。

 定時制・通信制高校で半数強が認めている状態ですが、定時制高校で約4分の1、通信制高校も1校が認めていません。高等専修学校では約4割が認め、約3分の1が認めていません。

 定時制高校普通科や通信制高校で認めていないのは理解に苦しむくらいです。特別の事情でもあるのでしょうか。職業高校や高等専修学校においても、教養科目的なものは認めてもいいと思いますが、どうでしょうか。

表5-1 大検合格科目の単位認定
  × 学校
合計
定時制高校普通科 12 6 2 2   22
定時制高校工業科 6 2 1 1   10
定時制高校商業科 4 1 1     6
定時制高校農業科 1 1 2     4
(夜間定時制高校小計) 23 10 6 3   42
昼間定時制高校 4 2   1   7
通信制高校 7 1 1   2 11
〔定時制・通信制合計〕 34 13 7 4 2 60
高等専修学校通信併修 8 5 3 1   17
高等専修学校単独校 7 7 6     20
〔高等専修学校合計〕 15 12 9 1   37
○=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

-=該当がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数

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前籍高校の履修科目の単位認定

 高校中退生にとって、特に1年生、2年生を修了して中退した生徒にとって、前籍の高校での履修科目を再入学した学校で認められることは重要な意味があります。その前籍の高校での履修科目の単位認定を表したのが表5-2です。大検に比べれば制度としては広がっています。しかしまだ認められない高校もかなりあります。職業高校や高等専修学校における職業科目の事情を除けば〈条件つきで〉単位認定できると思うのですが、認定できない何かの問題があるのでしょうか。

表5-2 前籍の高校での履修科目の単位認定
  × 学校
合計
定時制高校普通科 19 1 2     22
定時制高校工業科 8 2       10
定時制高校商業科 5   1     6
定時制高校農業科 2 1       3
(夜間定時制高校小計) 34 4 3     41
昼間定時制高校 5 2       7
通信制高校 8   1   2 11
〔定時制・通信制合計〕 47 6 4   2 59
高等専修学校通信併修 12 2 3     17
高等専修学校単独校 11 5 4     20
〔高等専修学校合計〕 23 7 7     37
○=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

-=該当がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数

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高校留学の単位認定

 当該校以外の履修科目で単位認定に関することに、高校留学のケースがあります。法制的には1年間に限り30単位の取得が認められることになっています。単位認定をするかどうかは各校の単位認定制度設定が必要であり、その設定状況を示したのが表5-3です。

 実施状況は定時制高校で半分強、通信制高校は大部分、高等専修学校は約3分1程度が認めています。全体として対応が遅れているのは当該する生徒がいないためだと推測されます。生徒の側からすると高校留学を生かす視点からの学校選択になることもあると思います。

 このほかにも在外教育施設高等部での履修科目を、単位として認める制度をつくっている学校がありました。該当する生徒は高校留学よりもさらに少なく、私は今回調査の項目に入れることすら思い及びませんでした。この学校には脱帽します。

表5-3 高校留学の単位認定
  × 学校
合計
定時制高校普通科 12 3 5 2   22
定時制高校工業科 6 3 1     10
定時制高校商業科 3 2 1     6
定時制高校農業科 1 1 1     3
(夜間定時制高校小計) 22 9 8 2   41
昼間定時制高校 4 2 1     7
通信制高校 8   1   2 11
〔定時制・通信制合計〕 34 11 10 2 2 59
高等専修学校通信併修 6 6 4 1   17
高等専修学校単独校 6 7 7     20
〔高等専修学校合計〕 12 13 11 1   37
○=単位認定できる学校数 ×=単位認定できない学校数

-=該当がなく制度のない学校数 △=検討中の学校数

?=不明および無回答の学校数

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就職者数

 定時制高校は本来的には勤労青少年の高校教育を保障するために設立されたものです。近年、不登校生や中退生が多数入学することによって、生徒が多様になっていると指摘されています。それを生徒にしめる就職者数から見たのが図4「就職している生徒の比率」です。残念ながら、これと比較すべき、10年前や20年前のデータを私は持ち合わせていません。

 現在の状況を見れば、夜間定時制高校のばあい半数以上の生徒が、勤労青少年であることを示しています。昼間に授業のある高等専修学校はもちろん、就職者は少ないです。昼間定時制や通信制高校でも30%は、予想と大きくは違わない気がします。

 東京都をはじめ、各地で定時制高校の廃止、統合の動きが伝えられています。これは不登校生・高校中退生の受け入れの場をなくすとともに、勤労青少年の高校教育の場を奪うものになるでしょう。東京都の場合はこれらの高校(全日制を含む)を統合・廃止し、新たにチャレンジスクールなる現代の高校生に対応できることをめざした高校をつくることになっています。しかし、高校の統合・廃止とチャレンジスクールの設立は別次元のことですし、〈全日制高校普通科〉が制度としても対応力としても不登校生を受け入れられるようになれば、敢えてチャレンジスクールなるものを設立しなくとも道は開けるのです。これは教育とは別の視点で策定されたものなのでしょうか。

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※この項目には<常勤的なアルバイトを含む>として、回答を求めています。

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データの信憑性について

 定時制高校や通信制高校が「高校中退者の受け皿になっている」「大検受験者が増えたのは高校中退者が大量に生み出され、彼らが利用するようになったからだ」ということが、関係者から言われ、また実感としても確かなことでした。その程度を数学的にも表してみたのが今回の調査報告です。

 しかし、この調査報告には、いくつかの前提や制約があり、定義の不正確さやその適応の個人差(学校差)があります。それを列挙しておきましょう。

(1) 学校の分類はこの方法でいいのか。またこの分類方式でひとまず認めるとしても個々の学校が適切に分類されているのか。

(2) ここに集められた学校の調査データが、そこに分類された学校群(母集団)の全体的状況が比例して反映できているのか。

(3) 個々の学校における生徒の判断(それを条件づける個人情報)は学校によってバラバラではないのか。それらの集大成としての全体数値はどの程度信頼できるのか。

 これらについて、私はこれ以上一歩も踏み込んで確かめることができません。人間に関する情報と判断は、多かれ少なかれ常に流動的な面、不明瞭な面はともなうのですが、それでも十分さという点では問題のあることを認めなくてはなりません。

 今回の調査がどの程度偏りがあるのかを知る手がかりとして、『定時制・通信制高校と大検の活用』(進路・就職研究会編、桐書房、1996年9月)にある定時制・通信制高校の生徒の状態を示すデータと対比することにしました。まず、同書にあるデータ(同書219~226ページ)を、表1と同じ基準に組みかえてみました。それが表6「定時制・通信制高校の不登校・中退生の受け入れ状況(96)」です。なお表記では表1を「97年調査」、表6を「96年調査」とします。

 両調査は1年のずれはありますが、定時制・通信制高校を共通の調査対象としていますので比較が可能です。そして両調査の結果が類似していれば、それは全体像を比較的正確に反映している可能性が高いと推測できます。双方がそれぞれの偏りによって、どの程度相違してくるのかは比較によって示されると思います。

 図5-1は「全日制高校からの転入者」を、図5-2は「高校中退からの再入学」を、図5-3は「中学時代の長欠経験者」をテーマにし、それぞれ、96年調査(表6)と97年調査(表1)を並べてみたものです。いずれも大きな母集団たる学校群のなかの生徒を反映する(はずの)それぞれの一部を抽出しています。母集団を構成する学校群とその生徒には均一的な要素はさほど大きくないかもしれません。そして96年調査、97年調査それぞれに抽出された形の数校から20校ぐらいの対比では、このような違いが出ました。通信制高校に関するデータは見た目としても大きな開きがあるように思います。ほかは大きいと見るか、小さいと見るか、一年の推移や誤差をどれだけ折り込むか……によって意見が分かれるかもしれません。これらの背景を知ったうえで、この調査を参考にしていただければさいわいです。

表6 定時制・通信制高校の不登校・中退生の受け入れ状況(96年)
学校分類 生徒総数 全日制高校
からの転入者
高校中退
からの再入学者
中学時代の
長欠経験者
大検受験者 学校数
①夜間定時制
普通科
実数   344 407 577 41 45
対象
生徒数
3,123 3,123 2,958 2,670 2,881
比率   11.0% 13.8% 21.6% 1.4%
②夜間定時制
工業科
実数   195 242 332 2 30
対象
生徒数
3,079 2,868 2,591 2,591 2,597
比率   6.8% 9.3% 12.8% 0.1%
③夜間定時制
商業科
実数   40 70 176 0 9
対象
生徒数
694 679 679 679 679
比率   5.9% 10.3% 25.9% 0%
④夜間定時制
実数   246 125 145 20 14
対象
生徒数
1,376 1,376 1,015 1,114 1,041
比率   17.9% 12.3% 13.0% 1.9%
①~④
小計
(夜間定時制)
実数   825 844 1,230 63 98
対象
生徒数
8,872 8,046 7,243 7,054 7,198
比率   10.3% 11.7% 17.4% 0.9%
⑤昼間定時制
(夜間併置名)
実数   522 276 337 80 10
対象
生徒数
3,466 3,357 2,048 1,940 3,357
比率   15.5% 13.5% 17.4% 2.4%
⑥通信制高校 実数   7,228 3,025 525 100 17
対象
生徒数
17,686 13,172 14,495 11,652 12,862
比率   54.9% 20.9% 4.5% 0.8%
①~⑥
合計
(定時制・通信制)
実数   8,575 4,145 2,092 243 125
対象
生徒数
29,424 24,575 23,786 20,646 23,417
比率   34.9% 17.4% 10.1% 1.0%
※④その他の職業科(普通科併置の職業化を含む)
進路・就職研究会『定時制・通信制高校と大検の活用』(桐書房)210~226ページより作成。

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