インクルーシブ教育
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2018年11月28日 (水) 14:14時点における版
周辺ニュース
ページ名インクルーシブ教育、、(障害者のニュース、)
特別支援教育の専門性向上にVRなどを活用 インクルーシブ教育の実現へ
香川大学と富士通は、離島や僻地の学校でも特別支援教育の専門家による指導が受けられるようにするため、香川県小豆島の小・中・高校と香川県教育センターの教員・支援員を対象に情報通信技術(ICT)を活用した遠隔授業指導などの実証研究を行う。
文部科学省は、障がいを持っているかどうかに関係なく通常の学級で学ぶインクルーシブ教育の実現をめざしており、専門家による指導を受けることが難しい地域におけるICT活用がその一つの鍵を握っている。
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■離島・僻地におけるインクルーシブ教育を支援へ
インクルーシブ教育とは、障がいがあってもなくても通常の学級においてすべての子どもが一人ひとりに合った指導を受ける教育のことをいい、文部科学省の目標になっている。
そのために文科省は、すべての教員が特別支援教育に関する一定の専門性を有することが必要としている。
そこで、教育現場において障がいに対する専門的な知識や理解を深める研修や実践が求められているが、離島や僻地などでは地理的な条件から専門家の指導を受けにくいという課題が指摘されている。
また、文科省はインクルーシブ教育の実現に向けて、障がいのある子どもを通常学級に受け入れる一方、一部の授業を別室で特別指導として行う通級制度を取り入れ、小・中学校では1993年度から、高校では2018年度から導入している。
香川大学と富士通は、2016年から共同でインクルーシブ教育システムの構築に向けたICT利活用の共同研究プロジェクトに取り組んでおり、これまで特別支援学校や小学校を対象に実証研究を進めてきた。
今回は、離島・僻地が抱える課題の解決を図って、香川県教育委員会、小豆島町教育委員会、土庄町教育委員会の協力を得て行うもので、通級制度に取り組んでいる学校を対象とした。
期間は11月20日から2019年3月31日まで。
■VRで疑似体験や遠隔授業指導、遠隔教育相談を検証
実証研究の内容は次の「障がいVR体験」「遠隔授業指導」「遠隔教育相談」の3つ。
1) 障がいVR体験
Virtual Reality(仮想現実:VR)技術を使い、VRヘッドマウントディスプレイを通して教員と支援員が障がいのある子どもたちの困難を疑似体験する。
2) 遠隔授業指導
小豆島の学校における授業を全天球カメラで撮影し、遠隔地にいる専門家がヘッドマウントディスプレイなどで映像を確認、教員や支援員に教え方や子どもたちへの接し方などについて的確なアドバイスを行う。
3) 遠隔教育相談
小豆島の教員と遠隔地にいる指導者をテレビ会議システムで結び、離島・僻地にある学校の教員・支援員が適切なアドバイスを受ける。
今回の実証研究の成果は広く公開されるが、富士通はその成果を生かしたICTサービスを開発し、インクルーシブ教育の進展に寄与したいとしている。
■インクルーシブ教育の課題
ICTを教育に利用する動きは1980年代から続いているが、教育現場に十分生かされているというイメージはない。
筆者は教育とITの世界を体験してきたが、その原因として次のような現場の問題と制度の問題がからんでいるとみている。
1)国が政策としてICT機器の導入を予算化しても、その地方交付税を他の用途に使う地方自治体が多かった
2)教員の情報活用能力の差が大きく、教員の異動によってICTの活用が続かない学校が多かった
3)教員の仕事が忙しく、人員の配置やサポート体制がないので新たな取り組みをする余裕がない
さらに日本のインクルーシブ教育には根本的な問題が潜んでいる。前述したように本来のインクルーシブ教育は「すべての子どもが通常学級で学ぶ」ということであり、それが国際標準でもある。となると、通級制度や特別支援学校での指導はそれに反するという問題が浮かび上がってくる。
では、今回の香川大学と富士通の取り組みはインクルーシブ教育の発展に反することだろうか。
香川大学と富士通は、インクルーシブ教育を実現するためには、すべての子どもが一緒に学ぶという原則はわかっているはず。
通級制度や特別支援学校の教育は障がいを持つ子どもに対する指導方法を深めるための過渡的な制度と考え、障がいのある子に対してもない子に対しても一人ひとりに合った指導方法を作るための1ステップと考えているだろう。
国に対してもそのための環境作りと制度設計を期待したい。
〔2018年11月21日 財経新聞〕
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