Center:1998年5月ー『マイペースがいちばん』への「監修者より」
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==『マイペースがいちばん』への「監修者より」== | ==『マイペースがいちばん』への「監修者より」== | ||
〔三須かほり『マイペースがいちばん』桐書房、1998年6月発行に執筆〕<br> | 〔三須かほり『マイペースがいちばん』桐書房、1998年6月発行に執筆〕<br> |
2017年11月19日 (日) 20:27時点における版
『マイペースがいちばん』への「監修者より」
〔三須かほり『マイペースがいちばん』桐書房、1998年6月発行に執筆〕
不登校情報センターにもありますので、販売中です。送料込みで1500円。
注文のしかた
エコーブックス2『マイペースがいちばん』を読んで、どのように感じられたでしょうか?
このシリーズでめざすことのひとつは、登校拒否や高校中退者の生きた経験からの言葉、意見を聞き出すことです。
国連の子どもの権利条約では、子どもが直接に関わる事柄については子どもの意見をきき、取り入れることを決めていますが、それに相通じるものがあると思います。
教育や学校に関することは子どもの意見をきく姿勢が求められる、ということです。
著者の三須さんが体験した学校、中学・高校時代に出会ったこと、感じたこと、考えたことを受けとめ生かすことが、教育や学校の改善向上につながると思うのです。
そうはいっても三須さんの体験したこと、感じたこと、考えたことには、彼女の個人的な事情、好みや個性といったものがついてまわります。
彼女にかぎらず、どんな人の体験であっても個人的な事情がかかわることはさけられません。
そういう個人的事情をともなう体験を通してしか、人間は共通の体験をすることができないのです。
三須さんの感じ方や受けとめ方のある部分には賛同し、別のある部分には賛同できないものもあるかもしれません。
私だったらこうする、私ならこう考える、というものもあるでしょう。
ここに描かれていることは、三須さんにとっての真実の姿がある、ということです。
まずそれを受けとめることが必要なのです。
そのことを期待しています。
この本には、いろんな意見をきいてみたい点がいくつかあります。
ここでは最近注目のサポート校(通信制高校サポート校)にふれておきましょう。
サポート校の内容を体験者から語った貴重な証言がある出版物だと思えるからです。
三須さんは、サポート校に期待して入学し、幻滅して退学しました。
彼女にとっては、結局のところ、このサポート校はいい学校ではなかったということになります。
この事実を認めることは重要なことだと思います。
そしてまた、サポート校が、当人にとって適当な教育機関やふさわしい進路とはいえない一群の若者がいることも予測しないわけにはいきません。
同時に他方では、サポート校を通して自分を発見し、自分の未来へのステップ台とできた生徒もいます。
サポート校が適合する人も多数いることを知らなくてはなりません。
不登校情報センターとしては、一般的にはサポート校を進路選択の一つの場として紹介し、すすめています。
またその発展を期待しています。
おそらく三須さんがサポート校の生活を通して感じたこと、考えたことを受けとめることは、サポート校が前進するのに役立つものでしょう。
いや高校教育にとっても彼女の経験を受けとめることは、役立つでしょう。
そのように受けとめられることを私は期待しています。
不登校情報センターでは、このような若者の体験手記をひきつづき求めています。
それとともに若者の意見をきく別の方法も開始しました。
エコーブックス1でお知らせしました不登校や高校中退の若者グループ…その名称を「こみゆんとクラブ」としました…との共同企画として「不登校・高校中退者の体験発表と交流会」をスタートしました。
先日、その第1回目を迎え、母親を中心に、父親、同世代の若者、そして教師などが参加しました。
これをできれば年十回程度開きたいと考えているところです。
この体験発表も、発表者の個人的事情を通して、その発表者にとっての真実を表現する場になるものと考えます。
ある意味で演劇で何者かを演じることとは違って、自分自身を語るわけで、勇気と「発表できる時期」がかかわってきます。
そして発表者を見つけ出すのには苦労しています。
発表に続く交流会では、この同じグループの若者に司会をお願いしました。
その交流の場で不登校や中退の子を持つ母親や父親からの質問に答える姿は、とても雰囲気のいいものです。
彼ら、彼女らは、その交流を通して、自分自身の体験を意味づけ、位置づけ、そして超えていくように思えるのです。
その受け答えをきく母親や父親にとっても、そして参加している教師にとっても、何か勇気づけられるものがあるように思います。
不登校情報センターとは何か?
問い合わせをしてくる方には、公共の相談機関のように思っている人もいますが。そうではありません。
個人主宰の情報資料室です――と答えるのですが、それで深く納得される人はあまりいないようです。
よけいにわからなくなるのかもしれません。
今春、特定非営利活動促進法(NPO法人)が国会で成立しました。
これは民間のボランティア活動を法人化するものだそうです。
ボランティア組織というとわかる人もいるので、今後は、不登校情報センターを民間ボランティア組織であると説明しようと思っています。
そして近い将来、不登校情報センターは、「こみゆんとクラブ」の若者たちと協力して、このNPO法人に基づく法人にしようと考えているところです。
もっとも、法人になる、ならないにかかわらず、私たちはすでにいろいろな分野のいろいろな人たちと協力して活動しています。
これからもさらに協力を広げるつもりですので、不登校や高校中退をめぐる多様な状況のどこかに関心を持つ方は、ぜひご協力をお願いいたします。