認識の枠組み=スキーマの違い
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2017年6月28日 (水) 20:57時点における最新版
認識の枠組み=スキーマの違い
問題解決の極意その7 〜『事実は分かっているという思い込み』の排除が大事〜
現場の事実は見え難いものです。多くの場合、本人が事実を見えていると思い込んでいるだけです。
この思い込みの自覚と排除は大変重要です。
【前回は】問題解決の極意その6 〜おかしいと思ったらその場で『何故?』と問う〜
●企業が見えているものと顧客が見えているものが違う
今流行の食料品の宅配事業で起きたことです。
食料品宅配カタログをお客さまが見て、「みかんが少ない」と言いました。
一方仕入担当者は「そのカタログではみかんは多い」と言っているのです。
お客さまと仕入れ担当者が違うカタログを見ているのかと思い、確認しましたが、同じカタログを見ています。
そのカタログを確認すると、仕入担当者の説明通り、みかんの産地が熊本産、長崎産、愛媛産で3種類、サイズが2L、L、M、Sの4種類、売り方が箱売り、袋売り、バラ売りの3種類でその組み合せによりみかんのアイテム数は12アイテムでした。
仕入れ担当者は「みかんのアイテムは12個と多い、お客さまの言っていることはおかしい、無視していい。」と言い始めました。
そこで、お客さまに直接確認したところ、「みかんが少ない」の意味は「オレンジがない」ということが分かりました。
このお客さまにとって、柑橘類すべてがみかんであって、みかんもみかん、オレンジもみかん、ポンカンもみかんという認識だったのです。
そこで直感的に「みかんが少ない」とう言葉を使用したのでした。
仕入担当者は商売のプロですから、商品分類を中分類では柑橘類、小分類では品種別にみかん、オレンジ、ポンカン、そして最小単位であるアイテムでは長崎産みかん2L箱売り、熊本産みかんM袋売り等と考えます。
しかし、一般人であるお客さまは中分類、小分類、アイテムといった概念はまったく関係なく、柑橘類はすべてみかんだったのです。
これって、お客さまが間違っているのでしょうか?
違いますね。商品のプロである企業側と商品の素人であるお客さま側では認識の違いが出て来るのは当り前のことなのです。
仕入担当者は事実を分かっている、自分は正しいと思い込むと真実が見えなくなってしまうのです。非常に恐ろしいことです。
●認識の枠組み=スキーマが事実認識を邪魔している
この思い込み現象は認知心理学のスキーマという概念で説明出来ます。
人間は育った環境、勉強した知識、実体験から物事の認識の枠組みを形成すると言われ、この認識の枠組みをスキーマと言います。
従って、スキーマは人によって異なることがあります。
その結果、同じものを見ても認識の違いが生じてしまうのです。
今回のケースでは企業はみかんを柑橘中分類中の『小分類の一つの品種』という認識がスキーマであり、お客さまはみかんを柑橘類に含まれる『すべての品種』という認識がスキーマだったのです。
企業側のスキーマと顧客側のスキーマが異なるのは当り前と受け止め、企業人としての仕入れ担当者は現場を『素人の眼』で観察し、情報を集め、その上で『プロの眼』で考察することが必要ということです。
言い換えれば、現場を観察する時は『自分は事実が見えていないかもしれない』、『自分と違う認識があるかもしれない』と思い、『素直な気持ち』を忘れないことです。
これが思い込みを排除する唯一の方法です。
この素直な気持ちを忘れれば、永遠と思い込みが続くのです
(KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所 木村博)
〔財経新聞 2017年6月14日〕