愛媛県民主医療機関連合会
2017年5月24日 (水) 14:46時点における版
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経済的病死 警鐘 民医連調査、県内では計7人 無料低額医療など制度周知徹底を/愛媛
県内で経済的な理由から病気の治療が遅れ、死亡した人が昨年までの12年間で少なくとも7人いることが、全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で分かった。
県民医連の片岡朗事務局長は「無料低額診療事業などの制度を周知していき、行政の窓口でも相談者に親身に対応するなど、減額制度を使いやすくするべきだ」と指摘している。
調査は2005年から毎年、民医連に加盟する全国の医療機関に実施している。
調査対象は、保険料滞納などにより無保険の状態になるなどし、病院や診療所に行かなかったために病状が悪化して死亡した事例と、正規の保険証を持っていながら経済的理由で受診が遅れて死亡した事例。
全国でこれまで計567人の死亡が報告され、昨年は全国641の医療機関で58人、県内は1人だった。
県内で昨年報告された1人は、肝硬変で亡くなった50代の自営業男性。
体調悪化で入院したのを機に仕事を辞めて生活保護を受けようと考えたが、貯金を「収入」とみなされて受給できない可能性もあると思い、生活保護の道は選ばずに仕事を続けた。
国民健康保険(国保)料の滞納額が多かったため、医療費が高額になっても自己負担は一定額で済む「限度額適用認定証」の発行を受けられず、国保法第44条に基づく一部負担金減免制度の申請もできなかったという。
病院からはすぐに入院するよう勧められたが、男性は医療費の支払いへの不安からためらい、入院を先延ばしした。
3カ月後に入院したが、その後も入退院を繰り返し、無料低額診療事業や障害者手帳を利用できるようになったものの、回復せずに亡くなった。
県民医連によると、減免制度の運用規定は各自治体が定めているが、県内では保険料を完納していないと制度を利用できない自治体も少なくないという。
片岡事務局長は「お金を出さないとサービスを受けられない状況になっている。医療は憲法25条に基づく人権としての社会保障であるべきだ」と指摘している。
□視点 全国規模では「氷山の一角」
経済的事情によって病院に行かずに治療が遅れ、死亡した事例が昨年だけで全国で50以上あった。
だが、民医連の調査対象は加盟医療機関だけで、民医連も「全国の医療機関で考えれば氷山の一角。」とする。
医療機関にかからず、孤独死した高齢者なども少なくないはずだ。
医療費の減額制度の情報は生活困窮者にどれほど届いているのだろうか。
昨年に腹腔内(ふくくうない)腫瘍で亡くなった1人暮らしの60代無職男性は、所持金100円で携帯も止められ、体調を崩してベッドで寝ている状態だったという。
保険証も期限が切れ、何年も受診していなかった。
隣人から連絡を受けた民生委員が無料低額診療事業をする病院へ相談したがすでに手遅れの状態で、入院19日目に亡くなった。
男性が減額制度を知っていれば、医療機関にかかったのではないか。そう思えてならない。
経済格差が医療格差につながってはならない。
経済事情によって命を落とす人が出ないよう、行政や医療機関は連携を強化し、制度の周知などにさらに力を入れてほしい。
□ことば 無料低額診療事業
低所得者などの生計困難者に無料か低額な料金で診療をする事業。
社会福祉法で定められ、厚労省は、低所得者▽要保護者▽ホームレス▽DV被害者▽人身取引被害者--などが対象としている。
原則として、社会福祉協議会や福祉事務所などから交付される無料(低額)診療券が必要となる。
〔◆平成29(2017)年5月12日 毎日新聞 地方版〕