おてらおやつクラブ
2017年1月29日 (日) 10:39時点における版
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ページ名おてらおやつクラブ、パンくず(寺院・教会の周辺ニュース)
お供えお裾分け 広がる真心 一人親家庭などを支援 奈良で開始
◇全国530か寺に
お供え物として寺院に集まる菓子や果物などを一人親家庭の子どもらに贈る「おてらおやつクラブ」の活動が広まっている。
3年前に奈良県で始まり、今では宗派を超えた全都道府県の約530か寺が取り組む。
代表の松島靖朗さん(41)は「子どもの貧困問題の解決に少しでも貢献したい」と話している。
松島さんが住職を務める奈良県田原本町の浄土宗安養寺には昨年末、リンゴやカップ麺が入った段ボール箱が何十個と積まれた。
最近では、一人親家庭への寄贈を前提に食べ物などを寄付してくれる人も多い。
スーパーの倉庫さながらの本堂で、クラブ事務局の坂下佳織さん(33)が「年の瀬で、普段以上に多くの食べ物やおもちゃが集まった」と、ボランティアの女性と共に発送準備を急いだ。
同クラブでは、近隣の寺院同士で調整し、食物を家庭や各地の社会福祉協議会などの団体に運ぶ。
安養寺からの発送先は毎月、一人親家庭など8か所。
数か月ごとに発送する寺もあり、クラブ全体では毎月約180か所に届け、約4400人の子どもたちが受け取っている。
きっかけは2013年春、大阪で母子家庭の母親と幼児が餓死したという報道だった。
松島さんは「日本で餓死なんて」と衝撃を受けたという。
寺には檀家(だんか)らがお供えの食物を持ってくる。本尊に供えるなどした後、自家消費するほか、近所に分けるが、余ることがある。
「供物を活用して、支援しよう」と、知り合いの僧侶らと約10人で事務局をつくった。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを介して活動が知られるようになり、全国の寺や市民の間で賛同者が増えた。文房具、玩具、生活用品も集まる。
父子家庭や生活困窮家庭への提供も行っている。賛同した寺院の一つ、静岡県伊豆の国市の真宗大谷派・正蓮寺住職の渡辺元浄さん(36)は
「誰でも参加できる、お寺らしい活動。なぜ今までなかったのかと、すぐに参加を決めた」と振り返る。
受け取った人からは、直筆の手紙などで「いつも箱いっぱいのハッピーが届く」「頑張ろう! と励まされています」と、お礼の言葉が寄せられる。
松島さんは「現代社会でもお寺の出番はある。おやつクラブはその一つ」と力を込める。
将来はNPO法人化して活動を広げることも検討しており、「奨学金や仕事の場の提供など、支援を広げられれば」と思い描く。
問い合わせは、事務局にメール(mail@otera‐oyatsu.club)かファクス(050・3488・0963)で。
〔◆平成29(2017)年1月13日 読売新聞 大阪夕刊〕