クレイン・ハーバー
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2016年8月14日 (日) 09:02時点における版
周辺ニュース
子供の貧困 「連鎖」断ち切る策は /長崎
長崎市赤迫のフリースクール「クレイン・ハーバー」の一室に、学ランや女子のブレザー、スカートなどが所狭しと並ぶ。どれも不要となった家庭が寄付した県内の中学・高校の制服だ。
「40世帯からいただき、13世帯に渡すことができました」
同スクールを経営するNPOの中村尊代表(49)は1月、生活保護世帯やひとり親家庭など経済的に厳しい家庭を対象に、無償で制服を譲り渡す「学生服バンク」を始めた。
制服一式は高いと5万円以上かかる。中村さんは「制服は本来、私服と違って格差がなくみんなが着られる物。それが買えないなんておかしいと思いませんか」と憤る。
「『子供の貧困』という言葉より、『貧困の連鎖』って言葉の方が現実を表している」。
シングルマザーの時津町の女性(39)はこう語気を強める。
私立高校2年の長女は大学進学を望むが、大学の授業費を払う余裕はない。
奨学金を受けるという道はあるが、卒業後に多額の返済が待ち受けるのも忍びない。
「親の経済力で子供の人生が左右されるんだって実感しています」。女性はため息をつく。
国の2011年の調査で、ひとり親家庭の子供の大学進学率は23・9%。
全国平均(53・9%)より30ポイントも低い。
県が昨年8月、児童扶養手当を受給するひとり親家庭を対象に実施した調査でも、母子家庭の71・9%が年収200万円未満で生活していることが分かった。
日々の暮らしに精いっぱいで、子供の学費を捻出することさえ厳しい現状が浮かび上がる。
子供を取り巻く深刻な状況が明らかになるにつれ、民間では支援の輪が広がる。
家庭で十分な食事を取れない子供たちに無料や低価格でご飯を振る舞う「子ども食堂」が、続々とオープン。
県によると、県内では昨年度まで長崎市に2件のみだったが、今年度は既に佐世保市や大村市などで3件が新たに立ち上がり、7月にも2件が新設される。
NPO法人や地元企業などが運営し、寄付や持ち出しで食材費を工面している。
6月に市民有志で子ども食堂をスタートさせた大村市の農家、田崎裕隆さん(37)は「地域ぐるみで子供たちの居場所を作り、必要な子供に支援が届くようにしたい」と語る。
動きの鈍かった政府は昨年ようやく対策に本腰を入れ始めた。昨年末には「子どもの貧困対策」を決定。
第2子以降の児童扶養手当の増額などを打ち出した。参院選でも各党が子供の貧困対策を競って掲げるが、「学生服バンク」を始めた中村さんは言う。
「どこに票を入れたら状況が良くなるのか、全然伝わってこない」
〔2016年7月11日・貧困ネット、◆平成28(2016)年7月4日 毎日新聞 長崎版〕