フードバンクぎふ
2016年8月11日 (木) 22:37時点における版
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フードバンクぎふ:活動3年 食品の有効活用進む コストコ参加「廃棄より社会貢献」 /岐阜
規格外や賞味期限が近いなどの理由で、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を集め、食べ物に困っている人や施設に無償で届ける「フードバンク」の活動が、県内でも少しずつ広がっている。
大垣市に拠点を置く「フードバンクぎふ」の活動を取材し、その可能性と課題を追った。
□広がる支援の輪
主に岐阜市や西濃地域で活動する「フードバンクぎふ」は約3年前に発足。
スタッフは全員ボランティアだ。
活動当初は、名古屋市でフードバンク活動を展開しているNPO法人から提供される食品が主だったが、活動が広まるにつれ、近隣の農家からコメや野菜が寄せられるようになり、さらに昨年11月に羽島市にオープンした会員制大型量販店「コストコ岐阜羽島倉庫店」からもパンが寄付されるようになった。
同店内で焼くパンは品切れしないよう多めに製造する。
しかし、賞味期限1日前になると陳列できないという社内規定があるのでどうしてもロスが出る。
そうしたパンをフードバンクぎふを含む数カ所の団体に日替わりで寄付している。
矢部充彦店長は「ただ廃棄するより社会貢献できる方がいい。
少しでも困っている人の役に立てばうれしい」と話す。
パン以外にも焼き菓子や野菜など常温保存できるものは寄付する。
□「もっと周知を」
今年1月に初めて利用した岐阜市内の女性(37)は、食べ盛りの中学1年の男の子を育てるシングルマザー。
病院の看護助手として朝から夕方まで働き、さらに軽作業の仕事も掛け持ちする。
それでも家計は苦しく、息子には「給食をお腹いっぱい食べてきなさい」と言い聞かせる。
自分は8枚切りの食パン1枚だけで1日を終えたこともあった。
テレビでフードバンクの活動を知り、すがるような思いでインターネットを調べ、フードバンクぎふの存在を知った。
電話で相談するとすぐに缶詰のスープや米が届いた。
女性は「特にお米はうれしかった」と話し「知人のシングルマザーもフードバンクのことを知らなかった。本当に必要としている人にまで情報が届くよう、もっと広まってほしい」と話す。
□ミスマッチも
3月、フードバンクぎふのボランティアスタッフ10人ほどが事務所で問題点を話し合った。
寄付できる食べ物とニーズが必ずしも一致しないことを挙げる声が多かった。
パンやスープは子どもや若者には喜ばれるが、パン食になじみのないお年寄りには断られることもあるという。
また、スタッフ不足や寄付される食品の量が一定でないことなどから積極的な情報発信ができずにいる。
フードバンクぎふの赤星守雄代表(77)は、活動を始めて「苦しい生活をしている人が岐阜にこんなにいるのか」と驚いたと話す。
食べる楽しみを失っている人が多いといい、「食品を渡すことだけが目的ではない。食べる楽しみをもう一度知ってもらい、生きる活力を出してもらうのが目標」と語る。
現在、フードバンクぎふに定期的に寄付する企業はコストコだけだ。
矢部店長は「より多くの小売店などが参加し、もっと食べ物を無駄なく回していける社会になれば」と話す。
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□日本の食品ロス
農林水産省によると、まだ食べられるのに捨てられた食べ物、いわゆる「食品ロス」は2013年度の推計で全国で年間約632万トンに及ぶ。
うち、企業による排出は約330万トン、家庭からの排出は約302万トン。
一方、全国のフードバンクの活動による食品ロスの削減量は、13年は約4500トンで、企業が排出した食品ロスのわずか0.1%にとどまっている。
〔2016年6月29日・貧困ネット、◆平成28(2016)年6月21日 毎日新聞 地方版〕