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Center:2000年5月ー通信制高校に進学した理由

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2011年5月13日 (金) 11:11時点における版

通信制高校に進学した理由

  • 「進路指導のはざまで」『中学教育』2000年6月号。

 3月のある日、都内の通信制高校で学校説明会があった。
 茶髪の男子、厚底靴の女子、親と一緒の人、友達同士、親だけ、本人だけといろいろのようだ。
 今年度入試前の2回目の説明会で、担任の先生が「嬉しい悲鳴」をあげるほど会場は満員。
通信制高校への入学者はたしかに増えている。

 修平くんも今春ある通信制高校入学する。中学1年の1学期途中から全然登校していない。
真面目、優しい、丁寧というのはひきこもり傾向の人に共通する性格で、修平くんもそうだ。
宇宙科学やSFに興味を持ち、その知識はマニア的に広く深い。
 私たちの取り組みの一つとして、不登校やひきこもり気味の生徒への訪問による学習サポートをしている。
昨年中学3年になった修平くんが、高校進学を気にしたところ、お母さんからの要請で、修平くんへの訪問活動が始まった。

 訪問活動でサポートするのは学生の幸典君。幸典君も中学時代に登校拒否の経験があり、彼の場合は高校へ入学しなかった。
大検に合格し、その後大学に入学し、そのとき3年生。
 学生の訪問初日は、子どもと会えずに帰ることもまれではないのが、不登校生への学習サポートの特色の一つ。
しかし修平くんの場合は、初日から会うことができた。

 何回目からの訪問のときには、修平くんからはお母さんの干渉が強いという不満も話してくれるようになった。
お母さんもそのことはわかっているのだが……。

 秋になって修平くんが「高校に行きたい」というようになった。
訪問する学生と普通に話せるようになると、外出し始めたり、登校を始める生徒は多い。
修平くんは中学校へ登校はできないが、高校進学は本気で考えるようになったのだ。

 年があけ、修平くんは通信制高校に入学した。この時点では最善の選択だろう。
なにしろ入学してもスクーリングができるかどうか、不安がいっぱいだからだ。
全日制や定時制ではこうはいかない。通信制高校はそれが可能なのだ。
 不登校状態からの脱出へのサイクルと、高校入学(進学)できる時期はなかなか一致しない。
そのタイムラグは通信制高校ならば埋め合わせしやすい。

 修平くんは、幸典君が訪問を続けるなかでだんだん元気になっている。
ただ本当にしんどいのは同年齢の生徒との人間関係だ。いまはその助走段階だと思う。
 その間に、まる2年の学習の空白を埋める取り組みをしている。
学習サポートを名目にしているが、本質的な内容は人間関係づくりである。

学生の幸典君はその経験者でもあり、見本でもある。
 修平くんは、学習の遅れを回復し、自由に外出できるようになれば、通信制高校のスクーリングにも行けるようになるだろう。


連載「進路指導のはざまで」
  (1)2000年3月ー進路先がフリースクール?
  (2)2000年4月ー3つの選択に隠された転校処分
  (3)2000年5月ー通信制高校に進学した理由
  (4)2000年6月ーなぜ入学した後すぐ転校を望むのか
  (5)2000年7月ー高校進学後に再発した登校拒否
  (6)2000年9月ー私は中学校を卒業してないの?
  (7)2000年10月ー子どもの不登校が家制度を変える
  (8)2000年11月ー専門家一任でなく背後で応援しよう
  (9)2000年12月ー国勢調査で大検合格は高卒では?
  (10)2001年1月ー“兄貴分”にも相談相手の役割
  (11)2001年2月ー自分さがしの機会がなく退学

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