Center:(3)“心理派”のJさんの場合
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2011年10月5日 (水) 21:09時点における版
(3)“心理派”のJさんのばあい
さて、引きこもり体験者から半ば抜け出した人(心理派や社会派)はそこからどう進むのでしょうか。
“心理派”と考えられる一人の話をしましょう。
入院していたときに精神科の医師になりたいと思ったJさんです。
Jさんは精神医学や心理学の勉強をしていて、私はもしかしたら相談役であったのですが、気がつくとJさんのレクチャーに引きこまれていることがあります。
たとえばJさんが「私の心がバラバラなのは、いまの自分と子どものころの自分が一体化しない」と話しました。
子どものころの自分に戻ることは、子ども返りをすることで、それは必要なことだと思います。
その子どもになった自分がいまの自分になっていくのが心が一体化していく順番として必要だという意味です。
私は“子ども返り”の意味することとその必要性──子ども返りをする人のほとんど全部がそれを無意識のうちにしている──を教えてもらったのです。
「でも、その後どう一体化するのかはまだ時間がかかる」──Jさんは数年を予測しています。
この本には「もう親を当てにしてはならない」と書いてある。
と精神医学の本を取り出して言うJさんの言葉をきいて、「自分で自分を育てる」という私の考え方はその次に来る言葉だと思いました。
Jさんはそれをきいて「数年たって、そのとき私は医師になりたいという気持ちがあれば、そのときに向かっていきます」と答えてくれました。
実はJさんは不登校情報センターのこの当事者の会(居場所)には長らく来ていませんし、これからもほとんど来ることはないでしょう。
Jさんにとって個人的に必要な精神的自立を高める条件がそこに見つけられないからです。
Jさんは、別の形で自分が信頼できる人を見つけ、ここまでたどりついたのです。
私には、引きこもり経験者が一般的なこととしてカウンセラー・治療者になる条件があるとは思えません。
しかし、Jさんはできるかもしれないと思えます。
Jさんは「自分で自分を育てる」のに必要な環境を自分で探し求め、つくっているように思えるからです。
いまは親に経済的に支えられて生活しています。
しかしすでにアルバイトをしてある程度の収入を得ています。
それは将来のめざす職といくぶんは関わりのあることです。
〔2〕社会参加までの葛藤のタイプ
(1)親しい友人をつくる場
(2)精神的自立の程度を高めていく場
(3)“心理派”のJさんの場合
(4)“社会派”のKさんの場合
(5)“半社会派的”なMくんの場合