本格的な対応が求められるときがきた!
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2019年1月3日 (木) 19:49時点における最新版
本格的な対応が求められるときがきた
(出典『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』 Part1のまえがき、子どもの未来社、2005年)
以前に『登校拒否関係団体全国リスト』(あゆみ出版)として発行していてものを5年ぶりに新装し、書名も『不登校・引きこもり・ニート支援ガイド』として発行することになりました。
「引きこもり」に関しては、2000年を境に状況が大きく変わりました。社会問題として所在が認められるようになったのです。
しかし、その関心は一時的なブームもあり、昨年ごろから「ニート」という言葉が登場するとともに、関心は相対的に低くなってきているように思います。
社会的なブームは去っても、事態が変わったわけではありません。ブームが日常に変わったいまこそ、引きこもりへの本格的な対応が求められるときがきたと思います。
ここでの対応の中心は対人関係であり、それは主に心理的分野です。カウンセリング(相談)、フリースペース(居場所)です。
それを支える家族への対応(カウンセリングや親の会)が必要とされます。家庭への訪問サポートが、基盤になる対応ではないかと感じています。
この引きこもりへの社会的対応・支援は難しいように思います。平たく言えば、効率的ではなく、公的経費も支出しづらいということです。
そのため個人対応となり、家族が負担するとなると相当なものになります。
医療であれば医療保険がありますが、それともうまく結びつけられません。
公共機関(国と自治体)は、この場面での政策(そう多額に達するとは思われない予算支出を伴う)の策定に、これといった糸口を見出せないまま時間が経過したように思います。
これにニートという言葉が導入され、手をつけかねていた対応に一つの糸口を見つけたのです。NEETとは、Not in Employment、Education or Trainingです。
対応は、教育の場に入るようにする、雇用(就業)につながるようにする、職業技術上の訓練を受けるようにする取り組みです。
たしかに、引きこもりには見るべき対策のない政府・自治体も、ニートに対しては“やる気”を見せているように思います。
しかし私の知る範囲では、引きこもりとニートは同じではありません(重なる面もあるでしょう)。
対人関係が困難な背景をひとまずおいて、ニートとして学業と職業のところにだけ目を向け、その場で同時に対人関係の問題も解消しようとするだけではうまくいかないでしょう。
23歳未満(個人差あり)の人のなかには、学業・職業の場面で同時に対人関係の問題を解消する人もいるでしょう。しかし、それでも両者は同じではないのです。
言い換えると、引きこもり経験のあるニート(「引きこもり系ニート」と呼びましょう)で、20代後半以上の人には、実はこれといった公的な対応策は打ち出されていないというのが私の認識です。
引きこもり系ニートのある人がこんな感想をもらしました。「引きこもり=働けない人、ニート=働かない人」であって、
引きこもりには世の中の風は温かかったけれども、ニートに対しては厳しいと感じる、というのです。
そして、ニートが表面に出ることで、引きこもりへの社会の風圧も強まっています。
今回の『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』は、社会のさまざまな団体が“それぞれの考え方と方法で対応しよう”としている姿を情報提供の形でまとめたものです。
このPART(1)では、カウンセリングルーム(相談室)や医療機関、宿泊施設、親の会など、さまざまな団体・機関の情報を一括して提供しています。
不登校情報センターは、自らが対応機関であるとともに、全国各地の対応機関の情報収集・提供の機関です。
その取り組みの経験から、いくつかの種類の情報提供のしかたとその特色を考えてみました。
団体・機関が個別に発言(提供)する場を除き、同時に多数の団体・機関の情報を提供する方法は、次の4種類になります。
その特色とともに列記してみます。
(1)出版物(情報本)における情報提供
掲載内容としては、その団体の比較的安定した部分が記載されます。かなりの期間、読者に影響をもつ情報になります。
多くの団体の情報を検索しやすく、利用も容易です。
団体の対応内容が変わっても、情報更新は出版物の発行頻度により制約されます。
(2)相談コーナーでの情報提供
相談室に、情報提供すべきフリースクールなどの案内書を多数収集・整理・保管して、必要な人に渡していく方法です。
このやり方をしているところは、不登校情報センターのほかでは、いくつかの公共機関以外にはほとんどありません。
スペースがあり、相談員がその情報をある程度知っているなどが条件になります。
情報提供の意味の効果が高く、情報提供と紹介の境界を明確にする必要があります。
(3)インターネット上の情報提供サイト
情報内容を比較的早く更新できますが、ホームページ制作者、情報提供団体の対応のばらつきがそのまま表れます。
対応団体の状況を比較して見るうえでは必ずしも便利とは言えず、活字媒体に比べて信頼度は下がると言われます。
しかし、インターネットの役割はさらに大きくなると見込まれるので、今後は特に重視されるでしょう。
(4)団体共同による進路相談会
主に教育機関が生徒募集を共同で行うような方法です。多数といっても、会場そのほかの事情で数団体から30団体ぐらいです。
(2)の対面相談を各団体出身の相談員が個別に説明する形と言えます。常設ではありませんから、その点では限定的な取り組みです。
不登校、引きこもりへの対応は、ニートへの支援安を含めて社会全体にかなり広がってきました。
その対応機関・団体を行政部門が支援していくことが、行政(国と自治体)の支援方策の最も重要な部分になるように思います。
ニート対策としての今回の厚生労働省の方法は、その面で評価できると思います(ニート対策の内容としては、「若者自立塾」方式が最善でもなく、最優先するとも思っていませんが)。
このような民間の取り組みと、行政部分の取り組みが絡み合って進んでいけば、
より多くの対応団体が成長し、より適切に実質的な支援が広がっていくものと考えられます。