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社会起業家

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〔2019年5/22(水) 田中俊英 一般社団法人officeドーナツトーク代表〕<br>
 
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2023年8月1日 (火) 15:42時点における最新版

社会起業家

「月に行くならおしおきよ!」~「社会活動家」の時代と、さようなら「社会起業家」
■ZOZOの大幅時給アップ
ちょっと古くなったが、あの「月旅行」の前澤社長が率いるZOZOのアルバイトの時給が1300円に大幅にアップした。
その結果、これまで企業のイメージアップに多額の広報予算をかけてもなかなか集まらなかった人が、たった3日間で集まったという(ZOZO「時給1300円」バイトに応募殺到 3日で募集終了)。
これに大きな貢献を果たしたのが、「社会活動家」の藤田孝典さん( NPO法人ほっとプラス代表理事)だろう。
その他、藤田さんに同調する人たちが、昨年後半よりTwitterほかネットメディァを中心にZOZO(ZOZOTOWNは同社が運営するフアッション通販サイト)へ時給アップの要求を粘り強く行なっていた。
僕も現在進行系でそれらのツイートを見ていた。
藤田氏は前澤社長だけではなく田端信太郎執行役員とも繰り返し議論を重ねていた。
それらは第三者にも波及していき、AbemaTVといったネットテレビで放映され(田端信太郎氏&藤田孝典氏が直接対談!“富裕層はもっと課税されるべきか”など徹底討論
(AbemaTV))、ネット著名人によるブログ記事にも取り上げられた(AbemaTVで「田端信太郎VS藤田孝典」の対談を見物した #田端藤田の生討論)。
藤田氏らによるそれらの「闘い」は、60~70年代的な「闘争」の趣きを醸し出しながらも、どこかにユーモアというか余裕も僕には感じられた。
切迫感漂う街宣活動を年末年始に行ないつつ(僕がZOZOTOWNの非正規労働者の賃上げにこだわる理由ー日比谷公園年越し派遣村の教訓と派遣労働者ー)、また活動を総括するハードな文章を書きつつ(月に行くなら労働者の賃上げを!が成功した理由ーZOZOTOWN賃上げ要求の裏話ー)、そこにはなんとなくユーモアが漂う。
たとえば、「月に行くよりも賃上げを!」は、「月に代わっておしおきよ!」のセーラームーンをなんとなく思い起こさせ、ZOZOの田端氏との総括的Twitterでは、
と書き、「ご褒美に頭なでなでしてあげる」とさらっと表現する。
対立してはいるのだが、前世紀のような暗い様相はない。
■時給1.300円のプレッシャー
藤田氏は上ブログで、実際に月に行くよりも、ZOZOの賃上げの方がはるかに経済効果が大きい。
ZOZOの賃金水準がこれから賃上げ圧力を市場や地域にかけていくし、それによって個人消費も促進する。
出典:月に行くなら労働者の賃上げを!が成功した理由とも書いているとおり、今回の時給1,300円は、日本中の企業に無意識的な圧迫をかけつづけていくだろう。
同時に、日本中の労働者に@1,300円は追い風になるかもしれない。
事実、僕の経営する小さな法人(officeドーナツトーク)は時給1,150円で、これまで高水準だと胸を張っていたのだが、今回の1,300円に若干のプレッシャーを感じている。
1,300円は無理でも、やっぱりあと50円ほど上げたほうがいいのではないか云々。
■「社会起業家」は敵になる
もうひとつ、今回の「事件」で、いよいよ「社会活動家」が全面に出てきた、と僕は思った。
と同時に、ゼロ年代になり、もう15年以上は続いてきたと思われる「社会的起業」「ソーシャルビジネス」がそろそろ古くなり始めたように思える。
社会活動家とよく似ているのでややこしいが、社会起業家は、ここ10~15年、おそらくブームだった。
彼ら彼女らは、中流家庭(あるいは下流層勝ち組み)の家に生まれ育ち、若干の挫折(不登校ほか)を経験して大学や社会人を経過しつつNPO/社会起業家へ、という典型的キャリアを持つ者が多い。
彼ら彼女らは自分の出身経済階層はあまりオモテには出さないものの、それは中流階層か下流層「勝ち組」(たとえば苦労して中流入りしたシングルマザー」の子ども)のどちらかだと、僕は現実の出会いの中から知っている。
そんな人々が、ここ10年以上の日本社会のトレンドとなっていた。
なかには、政府のなんらかの委員を歴任する人までいる。
そこに吸い寄せられるようにして、たくさんの大学生たちが群がった。
それは、社会起業家ブームの少し上の世代の僕から見ても変な構図で、勝ち組の社会起業家に、中流層(経済的には生まれながらにして勝ち組)の大学生が寄り集まり、それはアイドルを求めるファンたちの構図にも似ていた。
が、その構図がトレンドだった時代が、ほぼ過去のものになり始めた思う。
「月に行くならおしおきよ」的ユーモアを持ちつつ、きちんと「資本家」に対峙する、言い換えると低賃金の(非正規)労働者を「代弁」するために闘い続ける新しいカタチの藤田氏のような「社会活動家」が現れ始めた今、これまで「ブーム」を引っ張ってきた「社会起業家」が古いものになり始めた。
言い換えると、社会起業家は、自分が属する階層である中流層の代弁者へと、本来のポジションに戻り始めた、ということだ。
そして、これからの社会活動家/社会運動は古い60~70年代型ではなく、2020年代型の新しいカタチになると思う。
それは、社会活動家の藤田氏が時給アップ後のZOZO を評価するように(「ご褒美に頭なでなでしてあげる」)、結果次第で「vs.資本家」の態度が変化する。
言い換えると、従来の弁証法的手法(対立から何かが生まれる)だけではなく、相手の懐に入って矛盾点を指摘する「脱構築」的手法(対立を「脱臼」させる)の具体形がチラホラ見える。
従来の勝ち組み、トレンドの牽引者である社会起業家たちは、中流層出身学生たちや社会人たちにはまだまだ人気がある。
ZOZO は時給大幅アップを決断したとはいえ、資本家+中流層vs.労働者+下流層の対立はこれから本格化するだろう。
多くは時給はそれほどアップしないはずだ。そうしたなか、企業の主流サイドに中流層学生は「正社員」として入り込み、中流意識はずっと続くことだろう。
そして、中流勝ち組みの「社会起業家」は、中流層の典型的シンボルであり続けると思う。
中流出身の学生たちは引き続き群がる。
言い換えると、その「中流」のエース(社会起業家)とファンたち(中流学生たちや中流社会人)の群がりは、「社会活動家」が代表するマイナーな人々(下流層や「サバルタン」的真の当事者)の明確な敵になると思う。
〔2019年5/22(水) 田中俊英 一般社団法人officeドーナツトーク代表〕

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