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因果関係による証明でなく了解的関連という枠組み

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因果関係による証明でなく了解的関連という枠組みー1の5

(2014年9月18日)
フロイトの夢の中の象徴や精神分析療法を考えるうえで参考になるのはK.ヤスパースではないかと思います。
ヤスパース『精神病理学原論』(1913年、西方四方・訳、みすず書房、1971年)からの引用です。
「理論は皆意識外のものに関係がある。
すなわち意識された精神生活の基礎にあると考えられるもの、意識された精神生活をおこす原因となるものである。
心理学で用いてかまわない理論というのはごく一部の事実の説明に用いて成績が上がるような観念であるが、しかしそれが正当であるといえるのはそれが用いて有効であるからであって、そこに考えられたことが真実であるからというのではない。」(30ページ)。
ごく単純化すれば、真実よりも有効性というわけです。
これに飛びつくと有効なものは何でもよいとなりかねません。
しかし、ヤスパースはもっと深いところからこれを言い、了解的な関連という物事の理解の枠組みをつくりだしました。
「了解的関連というのは理想的な類型としてなるほどそうであるとわかる関連であって、これを尺度として一つ一つのケースを測るのであり、それら個々のケースはその尺度に、時にはよくあてはまり、時には少ししかあてはまらないというようになっているのであるが、このものが誤って法則とされ、精神的な出来事はすべてこれにあてはまるとされたり、或いはまったくあてはまらないとされる。
この種の偽の法則や理論を作るのはフロイトやリップスの心理学がよくやることで、こういう研究者ことにフロイトのやることには空想的な特徴やでっち上げがあって、それに反抗してみないとこれらの了解的心理学の価値ある核心に到達できない」(31ページ)。
ここではフロイトもさんざんです。
しかし、それだけではありません。
ヤスパースはフロイトの病状の精神分析的な見解を「かの如き了解」(AlsobVerstehen)として認めます。
因果(原因結果)的な関連とともに、実験ができない人間の精神的な領域について了解的な関連という理論を展開したのです。
因果的な関連というのが発展して今日のEBM(実証に基づく医療)になったはずです。
それに加えてヤスパースは了解的な関連を打ち立て、フロイトは「今日の精神医の中では疑いもなく了解心理学の最もすぐれた人の一人である」(185ページ)とされるのです。
ヤスパースがこう認めたからというのではありませんが、フロイトの精神分析療法は目覚ましい広がりを見せました。
精神科医がフロイト的な方法に注文をつけながら受入れているのは大方こういう理由ではないかと思います。

EBMレベルの精神分析療法を求めるならば次の意見が参考になるのではないですか。
「フロイト的な精神分析学は科学であるかどうかという問題があると思います。
精神分析学で、フロイトが無意識というのは実は無意識の意識であり、本当の意味の無意識とは、ああいう無意識ではなくて、脳髄のなかの物理的なエネルギーであるべきだと思うのです。
それならば純粋の無意識と言っていいと思います。
それが意識に影響を与えるというならいいけれども、フロイトの無意識の概念、たとえばいわゆるエゴというようなものは、どこかに貯えられている意識のことですから、これは奇妙な概念だと思います」
(竹内啓・広重徹『転機にたつ科学』(中公新書、1971年、177ページ)。
この見解が何らかの形で立証されたかどうかを知りません。
立証する特別の意味・利益がなければ立証されなくても精神分析療法は大きな支障なく継続していくものと思います

最後のところは保留するとして、EBMレベルではなくても了解的な関連において認められるならば「メンタル相談」には十分に掲載可能なのです。
しかし、もっと範囲は広いものと想定しています。
ヤスパースを参考にすれば真実よりも有効性かもしれません。
西洋医学ではプラシーボ(偽薬)効果も肯定されているのです。
8月11日のブログで書いた「「メンタル相談」ページに紹介できる判断基準」は相当にいいところをついていませんか。

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