専修学校高等課程(説明)
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社会の大きな変化のなかで、生徒の様子が大きく変わっていて、それを受けとめる高校教育(より正確には専修学校高等課程を含む後期中等教育)のレベルでさまざまな動き、変化が生じていると思えます。<br> | 社会の大きな変化のなかで、生徒の様子が大きく変わっていて、それを受けとめる高校教育(より正確には専修学校高等課程を含む後期中等教育)のレベルでさまざまな動き、変化が生じていると思えます。<br> | ||
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2012年9月22日 (土) 22:28時点における版
学校・支援団体の解説構造の「学校関連」
目次 |
専修学校高等課程
『中卒・高校中退からめざす専修学校と技術・資格の学校』
(不登校情報センター編 あゆみ出版 1999年の第1章)
専修学校の3つの課程
中学校卒業後、技術・技能・知識を系統的に学び、資格取得を目標とする教育・訓練・養成機関の一つに、専修学校(高等課程)があります。
専修学校には、
(1)中学校の卒業生以上を入学対象者とする高等課程、
(2)高校の卒業生以上を入学対象とする専門課程、
(3)学歴に関係なく希望者が入学できる一般課程の3つの課程があります。
専修学校高等課程とは、この(1)であり、別名を高等専修学校といいます
。専門課程のある専修学校を専門学校といいます。
専門学校とは、法制上は専修学校専門課程であり、学校の名称に専門学校がつくのはこれに限られます(名称に専門学校がつかなくても、専門学校である所も多数あります)。
専修学校一般課程の入学対象者は、学歴を問いませんから、中学校卒業生や高校中退者にも入学ができるところもあります。
もちろん、ある程度の年齢や職業上の経歴を必要とするところもあります。
専修学校の8つの分野
専修学校は、学校教育法により決められた教育機関です。
その設立や設置学科は都道府県(教育委員会)に届け出、教育内容や施設の条件について許可を受け、そして生徒を募集しています。
この届け出において、各専修学校は、どのような技術を身につけ、どのような資格者を養成するのか、
次の8つの分野(系)のいずれかに定めて、開設する学科を申請しています。
(1)工業、(2)農業、(3)医療、(4)教育・社会福祉、(5)衛生、(6)商業実務、(7)服飾家政、(8)文化・教養。
たとえば情報科は、主にパソコンの技術を身につけるものですが、
分野としては工業分野のコンピューター技術者のである場合と
商業実務分野の情報処理のオペレータの場合に分かれることがあります。
一方、専修学校は、産業(企業)社会と密接につながっていて、その要請によって設置する学科(分野)が比較的ひんぱんに変更していきます。
学科が新設されたり募集停止になることが比較的多いということです。
これは、高校の設置学科の変更が比較的少ないことと対称的です(もちろん、専修学校によっては地域の中で長い伝統をもつ学科で定着しているところも多くあります)。
その学科の新設、募集停止が比較的多いことは高等課程についても同じです。社会の動きに敏感に反映するといっていいでしょう。
技術・技能の修得と資格の取得
専修学校の最大の特色は、職業上必要な、あるいは生活上役立つ技術・技能を身につけ、資格を取得することです。
高等課程において、めざす主な資格を、8つの分野につづく学科別に表にしておきます。
もちろん学校によってはこれ以外のさまざまな資格が取得できるよう、教育内容を準備し指導しています。
・工業分野
電気科・・・・・・・・・・・・・・・・・・第二種電気工事士、危険物取扱者
自動車整備科・・・・・・・・・・・・自動車整備士(2級)
情報処理科・・・・・・・・・・・・・・情報処理技術者2級(通産省)
・医療分野
准看護科・・・・・・・・・・・・・・・・准看護婦(士)
あん摩マッサージ指圧科・・・・・・あん摩マッサージ指圧師
・衛生分野
調理科・・・・・・・・・・・・・・・・・・調理師
理容科・・・・・・・・・・・・・・・・・・理容師
美容科・・・・・・・・・・・・・・・・・・美容師
・教育福祉分野
福祉科・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホームヘルパー2級、3級
・商業実務分野
商業科・経理科・簿記科・・・・・・簿記(全経簿記能力検定、全商簿記検定、日商簿記検定)、
情報処理(全商情報処理検定、全経情報処理能力検定)、ワープロ(日商、全商)、日商販売士、秘書能力検定(全経)。
*全経=全国経理学校協会、全商=全国商業学校協会、日商=日本商工会議所。
・服飾家政分野
家政科・和裁科・洋裁科・・・・・・和裁技術検定(全国服飾学校協会)、洋裁技術検定・パターンメーキング技術検定(日本ファッション教育振興協会)
・文化教養分野・・・・・・実用英語技能検定(文部省英検→文部科学省実施)
なかには、美容師になるための美容学校、調理師になる調理学校、准看護婦になる准看護学校のように、
専修学校高等課程と取得する資格、その後の職業が直結しているものがいくつかあります。
特定の職業ではなく、さまざまな職業に応用できる資格もあります。
パソコンを使えるようになる情報処理関係は、その代表例でしょう。
専修学校高等課程は、これらの技術や資格の基礎的な部分、中学校卒業条件や高校(同等)卒業条件で取得可能な分野に集中しているのです。
修業年限と大学入学資格付与指定校
専修学校高等課程の資格には、技術や資格の取得とは別に重要なものがあります。その1つが大学入学資格に関することです。
高等課程は修業年限が、法制上1年以上と決められています。
実際には、1年制(調理科など)、2年制(理容・美容科、准看護科など)、3年制が多く、5年制や1年6か月制、2年6か月制のところもあります。
これらのうち、修業年限3年以上で、教員や設備の必要条件の基準を満たし、都道府県(教育委員会)が認可すれば、その専修学校高等課程の卒業生は、大学入学資格を持つことになり、高校卒業同等以上とされます。
このような高等課程を大学入学資格付与指定校といいます。これは「大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」という文部省(文部科学省)の告示に基づくものです。
この指定は高等課程の学科ごとに行われます。ということは同じ専修学校高等課程であっても、ある学科は大学入学資格付与になるけれども、別の学科はそうでないこともあり得るわけです。
また3年以上の修業年限であっても、大学入学資格付与指定になっていない高等課程の学科もあります。
技能連携制度と高校卒業
専修学校高等課程において、次に見る点は通信制高校との技能連携制度です。
通信高校の専門科(職業科、たとえば家政科、衛生看護科、機械科など)では、専門科目の実習が必要です。実習・実技のない専門教育は、畳の上での水泳練習みたいなもので、実際的ではありません。
その実習・実技を専修学校高等課程で行うのです。これを通信制高校と専修学校高等課程との技能連携制度といいます。
なお法制上は、この技能連携制度は、定時制高校においても可能ですが、実際にはそのような例はあまりありません。
専門(職業)科目以外の一般教養科目は、通信制で行う場合と、専修学校で行う場合の両方があります。
しかし、一般教養課目の授業も、専修学校高等課程において行うケースが増えています。
このような技能連携制度を積極的に推し進めているのが、私立の広域通信制高校であることが背景にあります。
「広域」とは都道府県を超えてという意味であり、連携する通信高校が遠方にあることになり、通学が実際上困難だからです。
専修学校高等課程において通信制高校の一般教養科目の授業を行うケースが増えているのは、このためと思われます。
その方がまた2つの学校に籍をおく生徒にとっても、実際は同じ1つの校舎で学ぶことになり、学習環境としてもよいと考えられます。
その場合でも、さらに通信制高校から教員が出向いて授業をするケースと、専修学校高等課程の教員が授業を行うケースに分かれます。
この通信制高校と技能連携する専修学校高等課程では、生徒は同時に高校の科目を履修し単位を修得していきます。
また専修学校高等課程で学んだことが、通信制高校における科目履修となり単位修得になります。
学んだ同じ科目が通信制高校、専修学校高等課程の2つの学校から同時に認められる仕組みです
(法令では、専修学校高等課程で学んだことは、高校で修得する単位の半分以下となっています)。
そして通信制高校と技能連携している3年以上の専修学校高等課程で学んだ生徒は、専修学校高等課程と通信制高校を同時に卒業することになります。
通信制高校と技能連携はしているけれども、修業年限が3年未満の専修学校高等課程もあります。
たとえば2年制の准看護学校で通信制高校の技能連携校になっているケースです。
その専修学校高等課程は卒業になりますが、通信制高校は卒業になりません。
技能連携している通信制高校にあと1年以上学び、必要な単位を修得することで卒業になります。
高等課程を卒業したとき、通信制高校もやめた場合は、その高校を中退したことになります。
言いかえると2年次までの修得単位は認められます。
専修学校高等課程の新しい可能性
社会の少子化と生徒減のなかで、専修学校高等課程はこの十年間、ほぼ減少傾向にあります。
学校数 | 生徒数 | |
1994(平成 6)年 | 821 | 96490人 |
1998(平成10)年 | 760 | 76367人 |
2008(平成20)年 | 503 | 39000人 |
このなかにあって、大学入学資格付与指定校は、むしろ増えています。
高校卒業同等以上となる学校としてであれば、存在理由が広がっているということでしょう。
その存在理由の1つが、不登校生・高校中退者が再出発するときの受入校になっていることでしょう。
知識教育中心の高校に対して、技術に重きを置く専修学校は、これらの生徒の一部の要望・実情にあっている面があります。
受入校になる一つの条件は、高等課程に入学する生徒には社会人がいたり年齢を含めて多様であることです。
それに手に職をつけることを目標とする教育内容が重なっているように思います。
これと連動する背景もあります。通信制高校サポート校(連携校)がこの数年、特に大都市域を中心に増えています。
サポート校は、学校教育法その他の法令上の扱いのない認可外の教育施設であり、私塾の特別の方式です。
専修学校高等課程は通信制高校と連携する形がとれる点はサポート校と同じです。
そうすると認可外のサポートよりも、専修学校高等課程にした方がよい、と考える学校が出てきてもおかしくありません(通学定期券の発行、公的な助成、奨学金、高体連加盟なども含めて)
そのような経過があると思われる専修学校高等課程が現にあるように思います。
ある専修学校高等課程は、「通信制高校のサポート校」であると学校案内に記載していたこともあります。
別の背景もあります。高校を設立するには、設立する条件が厳しく(特に大都市)、大学入学資格付与指定の専修学校高等課程の方が、この条件面で設立しやすい、という面です。
その一方で、高校教育は多様化がすすみ、課題集中校とか教育困難校といわれる状態も広がっています。
高校教育の行きづまりを単純に専修学校高等課程に見出すことができるほど楽観的ではありません。
専修学校高等課程にも、大きな困難を抱えているところが少なからずあります。
准看護学校は、比較的安定していたところですが、准看護制度の存続が問われるなかで大きく揺らいでいくと考えられます。
社会の大きな変化のなかで、生徒の様子が大きく変わっていて、それを受けとめる高校教育(より正確には専修学校高等課程を含む後期中等教育)のレベルでさまざまな動き、変化が生じていると思えます。