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木材を使うCLT工法建築物

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〔財経新聞(千葉明) 2017年8月23日〕 <br>
 
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2023年1月26日 (木) 22:32時点における版

木材を使うCLT工法建築物

木を有効活用する時代(上)
CLT工法を用いて作られた戸建住宅のイメージ(写真: ライフデザイン・カバヤの発表資料より)
コンクリートジャングルから木のジャングルへ。そんな時代がやってくる。
そう予感させられたのは、現政権が成長戦略の一環として打ち出した『(檜や杉など)国産木材を使ったCLT工法による建造物の普及』であり「変なホテル/第2期棟」である。来訪者へのサービスの一切合財を担うハウステンボスの宿泊施設である変なホテル第2期棟目は、CLT工法を駆使して鹿島と木質注文住宅最大手の住友林業のタッグによって昨年3月に建てられた。
見た目は、完全な木造ホテル。
CLTとは厚みのある製材を木目が直交(クロス)するように重ね、接着剤で張り合わせた板(直交集成板)。
変なホテル第2期棟の床・壁・梁など躯体の殆どが九州産の木材により造られている。
木材はRC(鉄筋コンクリート)に比べ「強度・耐震性」はほとんど変化がないが、「断熱性で優れ、熱伝導率は12倍強」そして同規模の木質系建屋はRC構造体に比べ工期が圧倒的に短い。
変なホテル第1期棟(43室)に対し2期棟目(72室)は、約2カ月短い工期で完成している。
現状で木材がRCに比べ劣るとされるのは「耐火性」。
だが前記の様な成長戦略の一環となったいま「(国土交通省の)作業部会で新基準の見直しが急がれている」(日本CLT協会)。
木質化建造物の先進国は欧州。1990年代以降に(木質系の)3~5階建てビル・マンションが増え始め、現在では9~10階建ての高層ビル・マンションも少なくない。
昨春にはケンブリッジ大学を中心としたチームが高さ300m、80階建ての木造ビル建設構想を打ち出している。
日本CLT協会でも、「技術的には日本でも木造の中高層建屋の建築は可能です。
木質系にはRC系に比べコスト面での優位性やスクラップ&ビルトの容易さなどの利点が多々あります。
国交省の作業部会で耐火性・防音性で欧米並み基準との調整作業が進んで行けば、課題は着実にクリアになっていくはずです」と期待を強めている。
そして実は木質系建屋の拡充は、日本の森林の自然体系を守り「環境整備」を進めるという側面も色濃い。(下に続く) 
〔財経新聞(千葉明) 2017年8月21日〕

木を有効活用する時代(下)
九州地方を襲った大雨・洪水・土砂崩れに伴う悲惨な状況の爪痕が、未だ生々しい。
周知の通り日本の国土は約7割が山林である。にもかかわらず我が国の木材の自給率は3割水準にとどまっている。
森林事情に詳しい専門家は、こう明かす。
「日本の山林の原点は歴史を遡ると、杉や檜など針葉樹の人工植林。そうした歴史の結果、日本は世界でも冠たる森林大国になったわけだ。だが日本の森林に対する国策はお粗末そのもの。一口で言えば、適宜な伐採を怠り続けてきた。その結果、山が荒れ切ってしまった。いまそのツケに苦しんでいる。遅ればせに現政権は『国産材を積極的に使った(CLT工法による)建造物の普及』を成長戦略の一つとして打ち出しているが、口先だけに終わってしまうと日本は貴重な資源に逆に叩き潰されかねない」
山が荒れると何が起こるのか。木々の二酸化炭素の吸収力が低下し、温暖化が加速する。
洪水や土砂災害の防止にも多大な影響を及ぼす。
日本の総面積の約900分の1に当たる部分で山林経営を行い、木材製造・流通・木造建設を一貫して手掛けている住友林業の木下営業部では、こう警鐘を鳴らしている。
「現在の年間の(森林)伐採量は、面積にして約3500万平方メートル。山を荒らさないためには、約1億7000万平方メートルの伐採が必要だ。しかし現実は5分の1に止まっている。伐採量の増加が必須。だからこそ、件の成長戦略も打ち出されたのだといえる。実際に不可欠な伐採量を実現するには、使い道を考えなくてはいけない。具体的にはビルやホテルの木質化が進まなくてはならない。少子高齢化の進行下で、かつ若者の持ち家離れが指摘される中、住宅以外の分野に我々は木材資源の活用の道を先頭に立ち切り開いていく覚悟だ」
現に同社では100%子会社を介して展開している介護事業では、例えば有料老人ホームのフロアや手摺などは全て木質化。
また今年7月には東京・国分寺市の某輸入商社の本社を竣工しているが、7階建てビルの4-7階部分はCLT工法(上を参照)を駆使した木質建屋を実現している。
国策に沿い林野庁の伐採補助金も増額された。
日本でも「適宜な森林伐採」「木質建屋拡充」のレールが敷かれ始めた。
〔財経新聞(千葉明) 2017年8月23日〕

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