感覚の繊細性と発達障害
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2018年6月1日 (金) 16:04時点における最新版
ひきこもりになる理由と対応・もくじ
(1)感覚の繊細性と発達障害
(2)虐待・いじめと押し付け(しつけ)
(3)ひきこもりの状態像
(4)ひきこもりへの対応策
(1)感覚の繊細性と発達障害
「この敏感が~!」とどなられた人がいます。
近所のゴミの回収場に行ってゴミをあまり散らかさないで捨てるように頼んだ時です。
どうせ捨てるのだからいろいろ文句を言うな! ということのようです。
ところがこの人にとってはその回収場が自宅のすぐ横なのでその臭いに耐え切れず、それなりの重装備をして散らかったゴミの臭いを閉じ込めるように苦心してきたのです。
それが“事件”になり、「この敏感が~!」と怒鳴られたのです。
この人は臭いの感覚が鋭く(嗅覚過敏)、特別視されたのです。
何も悪いことはしていません。むしろゴミが散らからない役割もしているのです。
嗅覚過敏の例ではこんなこともあります。
ある日Aくんが来て「銀行員の臭いがして、電車の中がいづらかった」と言いました。
「病院の臭いならわかるけど、銀行員の臭いってどんなんだったかな?」と問い返すと、少し考えて「働いているサラリーマンの臭いかな…」と言い直しました。
Aくんは働いた経験がなく、電車内でそういう状態に置かれたことがストレスになったみたいです。
Aくんはよく鼻をクンクンさせていて、臭いに敏感であることが分かる人です。
ひきこもりの背景にこのような嗅覚過敏による人がいます。
しかし、私が知る範囲では少数です。
多いのは聴覚(耳感覚)によるものではないでしょうか。
前にマンション5階にいたのですが、そこに来ているひきこもりの当事者がよく前の道路(1階)を通る人たちの話し声を聞き取って「~と言っている」と話しているのを聞きました。
ネコの話とか子どもの話をする母親同士の会話です。
私は特別に耳が悪いとは思わないですが、マンション5階にいて道路を歩く人の普通の会話を部分的にでも聞くというのには驚きました。
視覚過敏というのもあります。視力がいいとは違います。
ひきこもり当事者Bくん、Cくんの2人が話している場面です。
その横あたりにBくんの知り合いのDくんが来てEくんと話し始めました。
話し合う2組ができたのです。
しばらく経ってBくんがこんなことを聞かせてくれました。
Cくんと話していたのだけれども、横で話しているDくんとEくんと話しがよく聞こえて、話の内容も似ているところがあって混乱した。
相手が見えると関心も引き寄せられ耳も働くということです。
こんなこともあります。
5、6人で話していたのですがある場面でFくんが立ち上がりその場を離れました。
そのグループの話が終わった後、Gくんが話してきました。
あのときFくんがその場を離れたのは僕の話が気に食わなかったんだと思う。
「Gくんから何か聞いたのか? 彼にとって嫌なことを言ったのか?」と聞いてみましたがそんなことではなさそうです。
別の機会にその場を離れたFくんから「あのときはGくんの話し方が生理的に受け付けられない気持ちになっていた~」と聞きました。
これらは視覚や聴覚が同時に働いていると思います。
もしかしたらムシの居所が悪いというような、お腹の調子が悪くなったのかもしれません。
感覚過敏の例をいくつか挙げましたが、私はこういう場合の“過敏症”という言い方には賛同しがたいです。
体質ですが、治療対象にはならないと思うからです。
こういう感覚に関することをいろいろ挙げると切りがないので総まとめ的なことに移ります。
視覚の目、聴覚の耳、嗅覚の鼻、味覚の舌、接触感覚の皮膚、これを五感といいその感覚器です。
ほかに平衡感覚や内臓感覚があります。
これらは国語的な話ですが、身体科学による研究はかなり進んでいます。
皮膚感覚を除き、これらに平衡感覚を加えて特殊感覚といいます。
目を視覚のための特殊感覚、耳は聴覚のための特殊感覚になります。
それに対して皮膚は接触感覚のための特殊感覚とはいいがたいです。
圧迫、寒い・冷たい・暑い・涼しい、痛い・かゆいなどいろいろな感覚器の役割があります。
さらに皮膚の大きな役割は身体の免疫機能であり、体全体を包む統合作用もあります。
そこで皮膚感覚は(特殊感覚に対して)一般感覚といわれます。
一般感覚にはもう1つ内臓感覚があります。
アメーバのような初期の生物の誕生を考えた時、最初にできるのが栄養の補給(消化機能)と体の一体化のための皮膚です。
この2つが実は一般感覚の源流です。
目や耳などは生物が高等化していくときに生まれた器官であり、特殊感覚といわれるのももっともなことです。
これをつづけると本日のテーマから大きく外れますのでやめておきますが、人の感覚を考えるときにはこういう生物発生の背景にふれることができます。
今回のテーマに即しますと感覚が鋭い、繊細であることが対人関係に影響し、ひきこもりの背景になるとを頭の片隅に置いていただきたいのです。
感覚が鋭い、繊細であることとはもともと悪いことではありません。
しかし対人関係や社会関係に不都合なことが生まれている、それがひきこもりにつながるのです。
こんな調子で話しますと時間が足りませんので大幅に省略しながら進みます。
次は発達障害です。
テキストにあるように発達障害もまた先天的な体質・気質です。
感覚が鋭い体質と発達障害が同じなのか、違うのか。
私には十分に説明できませんが、両者を区分けされずに使われることもあります。
発達障害の一つになるアスペルガー障害は「他者の気持ちをよく理解できない」といわれています。
私もそういう人はいると思いますが、そうとも言えない場合もあります。
個人差がありますからその範囲のことかもしれません。
お渡しした記事(2018/4/4(水) ベネッセ 教育情報サイト)の「ディスレクシア(発達性読み書き障害)」の説明文があります。
これは学習障害の1つで、学習障害は発達障害に含まれます。
要するに発達障害というのは多様性があり、いろいろに分類されるわけです。
実は私の関わった人には学習障害の人は少なく、誰が該当するかは思い出せません。
どもり(吃音)も発達障害と認定されています。
ディスレクシアやどもり(吃音)が対人関係や社会生活に困難を持つ可能性はわかると思います。
私がかかわった人の中ではアスペルガー障害(数年前から自閉症スペクトラムというより大きな範囲に扱われています)とADHD(注意欠陥・多動性障害)は何人か思い出せます。
実は私も自閉症スペクトラム(アスペルガー障害)に入ると自己診断しています。
発達障害の実例は私の場合を話していいと思いますが、詳しくは省略します。
発達障害の人の多くがひきこもりになるわけではありません。
私もひきこもりになったことはありません。
同じことは感覚の繊細性のタイプにも言えるわけです。