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Center:2005年12月ー被虐待児症候群

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==被虐待児症候群==
 
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-母乳哺育の後退を考える本『母乳』 <br>
 
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そう考えて私は、食生活部分の書き加えを必要だと考えるようになったのです。<br>
 
そう考えて私は、食生活部分の書き加えを必要だと考えるようになったのです。<br>
 
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2018年4月22日 (日) 10:48時点における最新版

被虐待児症候群

-母乳哺育の後退を考える本『母乳』
〔2005年12月16日ノート〕

2005年11月、私は『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』(不登校情報センター(編)子どもの未来社(刊)のなかで「引きこもりの理由、どう抜け出していくのか」という論稿を発表しました。
「食生活が、この30~40年間に大きく変わり、それが心身の状態に影響している。
農業の影響、カルシウムなどミネラルの不足」(P5)。
しかしこと食生活に関しては「母乳哺育が大きく後退し、人工乳哺育が高い割合を占めるようになったこと」を引きこもりの背景として書き加えなくてはならないと思います。
私は最近『母乳』という本を読みました。山本高治郎(著)、岩波新書、1983年発行です。
著者は牛乳を中心にする人工乳の改善と普及によって、乳児死亡率が格段に下がっている点を評価しながら、
「子どもが死ななくなったということと、より多くの子どもがより穏やかに育つということは別の問題なのです」(P2-3)
と述べて、可能な限り最大限、母乳による哺乳をすすめています.
栄養面や感染予防能または免疫面にとどまらず、人工乳にはなし得ない役割を母乳はもっています。
「それは愛情を運 ぶものとしての機能をもつようになるからです。・・・
母の肌の匂いとぬくもり、愛撫、やさしいまなざしを、新生児は哺乳に際してその属性として享受します。
その小さい口から自らの乳頭を吸い、その柔らかい頬が自らの肌に接するとき、そこに愛の絆が成立するわけです」(P225)
しかし、私がこの本のなかで特に印象的な個所は、ではそのような母乳ではなく人工乳で育つとどうなるのか、という研究報告を引用しているところです(P199~202)。

その焦点となる文章を、抜き書きしておきましょう。
「人間が本来あるがままの姿にもどってゆけば、そのことが自然に母と子の絆を強め、同時にまた、母乳の順調な分泌につながってゆくのです。
高度に発達した技術によって支配される社会では、本来の姿、自然の姿はしばしば見失われてしまうものです。
右にのべた出生直後の母と子のあり方―父親の役割と存在にも重要な意味を発見しながら―の重要性を指摘した"Maternal-infant Bonding"(竹内徹訳『母と子の絆』医学書院)の著者、M・H・クラウス教授およびJ・H・ケンネル教授が、
高度な技術を駆使する新生児集中医療の専門家であることは、この際非常に重要な意味をもっていますが、
臨床的体験にもとづいた指摘であり主張であるからです。
もちろん教授らは、グアテマラの村落について、米国では行ないがたい研究と観察を行なっていますが、
教授らがこのことの重要性を気づいた最初の動機は、
「被虐待児症候群」が、新生児期に集中医療看護を受けた未熟児に多発するという臨床実験に由来するのです。
それは、保育器に収容され、機械的肺換気の装置を装着し息づまるような日々の看護と医療の後に退院していった未熟児たちが「被虐待児症候群」の症状をもって―もちろんすべての未熟児がというのではありません。
その一部分というのにすぎないのですが、そうでなった子に比べて明らかに有意に高い頻度をもって、という意味です
―数カ月後に病院もどってくる、そういう体験であります。
被虐待児症候群は……、小児が原因不明のま新しいあるいは古い傷のあとを身体の数カ所にもつことを主症状とする臨床的状態です。
時期を異にして起こったとおもわれるいくつかの骨折のあと、身体の各所に散在する皮膚の瘢痕(はんこん)などが、この症候群で最もよく見られる所見です。
それは母と子、あるいは父と子の間に愛が成立しなかったことを物語ります。
多くの読者にとっては考えもされないことでありましょうが、
それらの外傷は親が子に加えた残虐な行為の結果なのです。」(200)……
「新生児は、母に抱かれることによって母の愛を引き出すのです。
子を抱くことによって生じた母の感動は、さすってやる、軽くゆする、話しかける、乳首を与える、などの一連の動向を誘発します。
愛の絆は、相互の働きかけによってのみ成立するのです。
(201)……ポルトマンは人間の尊厳は、出生後の最初の一年の間に獲得されているといっていますが、
それは遺伝情報にもとづいた神経系の自動的・機械的なハード・ウェア的発達のほかに、
周囲からの絶え間ない人間的働きかけによってもたらされるソフト・ウェア的発達部分がヒトの場合非常に大きいものであることを主張しているわけです。
母乳哺育を軸として展開する母と子の関係は、
人間の尊厳を最も容易に、最も効果的に 獲得してゆく最も自然な方法なのです。(202)」

被虐待児、あるいは被虐待児症候群という語がここに表れています。
ここでは、新生児期に集中医療看護を受けた未熟児を挙げていますが、
その裾野の部分に、人工乳あるいは母親との接触の少ない哺乳をおくことは容易に推測できることです。
わが子を愛せない母親の出現と、母親から愛してもらったという経験の乏しい子どもたちの出現は、
母乳保育の後退と密接に結びついている。
それは今日の親による子どもの虐待の多発の別の表現である。
それらが今日の引きこもりの多発の重要な要素を構成している。
そう考えて私は、食生活部分の書き加えを必要だと考えるようになったのです。

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