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引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(2)

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(引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(2))
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[[Category:不登校情報センター・五十田猛・論文とエッセイ|2015年03月]]
 
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2017年5月23日 (火) 22:22時点における版

引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(2)

引きこもっている人への訪問はよくします。
これは外出を促す活動とは違います。
外出になることもあれば、そうならないこともあります。
ほとんどが家族からの要請です。
事前に私が訪問することになったと本人に伝えます。
訪問の結果、会えた人も、外出し始めた人もいます。
それ以上に、外から誰か来る話をすると拒否されます。
どんな人がくるのか、何をしに来るのか……その手の話は長期の引きこもりになっている家族の中では繰り返してきたことです。
数年前にお母さんの要請を受けてQくんを訪問しました。
これが“強制的な訪問面談”に相当します。
詳しく書かないと誤解を招きますが長すぎてもわかりづらいので要点を書きます。
当時のQくんは28歳、2年ほど前に大学を卒業してだんだん外出が減り、ときどきタバコを買いに出るのが外に出る程度でした。
相談の後、お母さんはQくんに次の条件を紙に書いて提案しました。
相談しながら考えたことです。
この方法を「自由選択方式」と呼ぶことにします。
「引きこもり生活者への訪問活動(1)」などを参照。
①、ハローワークに行き仕事を探す。
②、パソコンの勉強をするために〇教室に通う。
③、親戚で小さな会社をしているAさん(子どものころからQくんを知っている)のところでバイトをする。
④、訪問相談の人に来てもらいこれからのことを話す。
⑤、これ以外の方法があれば提案をしてください。
これへの返事は×日までにする。返事がない時は④から始めます。

お母さんは実際には⑤は書かなかったそうです。
「消えてなくなります」という返事を書くかもしれないと心配だったといいます。
それから3週間ほどして、お母さんから「来てほしい」という連絡がありました。
最寄駅でお母さんに迎えられ一緒に自宅につきました。
玄関近くにQくんの部屋があり、お母さんはいきなり部屋を開けました。
私が入るとQくんは驚いた様子です。
Qくんはあの提案には答えず、お母さんからは「不登校情報センターの松田という人がくることになった」と聞かされてはいたのですが、それがまさかこの日になるとは思っていなかったのです。
きょう来るのを知らなかったらしいと感じて私は「どうしようか。今日は話せるかな、やめた方がいいかな」と聞きました。
しばらく考える様子のあと、首を少し振りました。
「今日はやめておくということ?」と聞くとうなずきます。
「わかった来週また来よう」といって、私はQくんの部屋を出ました。
その後、Qくんへの訪問は続きました。
2年ぐらいの間に数十回の訪問になります。
最後のときQくんは31歳でした。
この間に彼にはそれなりの変化はありました。
いちばん印象にある言葉は「今から就職してもいちばん下におかれてしまうだけ」、「世の中が荒れているので収まるのを待っている感じ」というものです。
「それでもいいじゃないか、そこから社会人生活が始まる」と言うのは、その人の経験から、その感覚で考えられる人の言葉であってだれにも通用するのではありません。
Qくんの言葉は引きこもりになりやすいタイプが感じる社会と自分の関係を言葉にしたものです。
優しいタイプで自己主張をうまくできない人には社会生活は引きこもり生活以上に苦痛であり、自分を壊していくように思えるのです。
自分を守りながら社会にもまれて成長できる感覚になれなかったのです。
彼がこのレベルから成長を図れなかった理由の一つは、訪問相談を続けた私の力不足にあります。
また社会状況に可能性を見だせない時期にあたっているともいえます。
彼が希望する社会参加の方法は、大きな集団で活動するのではなく、個人的な関係のなかでコツコツと事を進めるものでした。
徐々にそれが可能な社会に向かっているように思います。

「自由選択方式」の手順で訪問を始めた人は数人います。
初めは会えなくても、何回目かにあった人もいます。
外出を始めた人もいます。
外出先として不登校情報センターに来るようになった人もいます。
結局は会えなかったけれどもこの方式をしていれば少なくとも本人とは会えたのではないかと思う人もいます。
訪問活動の目標は、引きこもりからの抜け出す援助ですが、一人ずつ目標も違えば、時期によって目標も変化するものです。
Qくんについては不登校情報センターに来るように勧める材料に欠けていたのが残念です。
「自由選択方式」を私は“強制的な訪問面談”と紹介しますが、その強制の程度は穏やかなものです。
しかし、それは当事者の考えとは違います。
選択の余地があるように見えても実際は選択がないのと同じです。
有り体に言えば訪問相談に向かわせる方法だからです。
本人の状態や選択できる意思、そして社会的な条件がそろわないとうまくいかないのです。
それでも長期の引きこもりの人の状態で手詰まりになっている、自傷他害的な行為に及ぶのではないかと心配になっている人にとって、この「自由選択方式」を考えてみるのもいいと思います。

引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(1)
引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(2)
引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(3)
引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(4)
引きこもっている当事者に“強制的な外出”を促す方法(5)

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