京都大学こころの未来研究センター
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2017年2月24日 (金) 10:14時点における版
京都大学こころの未来研究センター
所在地 | 京都府京都市 |
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TEL | |
FAX |
福祉相談と心理的ケア 生活困窮 心の問題と連動 京都大などが共同研究
◎健康のページ
失業、貧困、引きこもりなどで、福祉の相談窓口を訪れる人の中には、心理面のケアが必要な人が少なくない--。
そんな問題意識から、京都大学こころの未来研究センターと千葉市の自立相談支援機関が、生活困窮者の実態を調査し、その傾向を分析する共同研究に取り組んでいる。
「福祉の専門家と心理学・精神医療の専門家は従来、育成過程も相談窓口も別々だった。
しかし、現代社会で生活に行き詰まる人の問題の多くは、両方の領域にまたがり、切り離しては対応できないと感じる」
研究代表者を務める京都大学教授の広井良典さん(前千葉大学教授)は、こう言う。
例えば、引きこもり問題。
典型的なのは学生時代に不登校になり、そのまま中高年に至るケースだが、最近は、不況で就職先が見つけられず、大学を卒業してから、こもり始める例もあるという。
いずれにしろ、親が高齢になって収入が減ったり、亡くなったりすると生活が成り立たない。
「少年期からの心の問題の要素にせよ、社会経済情勢の影響にせよ、複合的な要因が関わっており、心理的ケアや就労支援、住宅支援などを含む包括的な対応が必要になっている」と広井さん。
有効な支援策を考えるために、生活困窮者の重複する課題の傾向を分析しようと昨年4月から、千葉市の自立相談支援機関である「生活自立・仕事相談センター稲毛」と共同研究を始めた。
まだ研究途中だが、昨年4~6月に相談を受けた78人の抱える課題(複数回答)を集計すると、「経済的困窮」「住まい(家賃など)」「就職」「心の健康」「病気」「家族関係」などが多かった。
約7割が、三つ以上の課題を抱えていた。
配偶者や恋人からの暴力(DV)なども含め、「家族関係」に問題を持つ20人のうち、18人は「心の健康」にも課題があった。
「就職」問題を抱える26人でも、約半数の12人は「心の健康」にも課題があった。
集計した同センター長の菊地謙さん(精神保健福祉士)は「元々の生活保護、就労支援などの公的福祉の対応は、法律・制度で守備範囲を限定してきた面がある。
現実に相談に来る人にはコミュニケーション力や行動力が弱い人も多く、縦割り的な対応では済まないことが多い」と話す。
浪費癖があり借金がかさんで相談に来た60歳男性は、社会福祉協議会の通帳管理サービスを利用することにして家計が安定した。
同時に、うつ病も抱えていたため、精神科受診についても菊地さんと話し合った。
「支援制度だけでなく、メンタル面の相談にも親身に乗ってもらえてとても助かった」と男性は話す。
就労などの相談で来た人でも、心の問題を抱えているとみられる場合は、臨床心理士の無料相談会につないだりすることもあるという。
広井さんは「心理的なケアのようなことは、かつては家族や職場、地域の中で対応されていた。しかし、家族の多様化、都市化、不況、雇用環境の悪化などの流れの中で、その支えが弱まり、『心のケアの社会保障制度』が求められるようになっている。さらに研究を進め、効果的な支援策のあり方を提案したい」と話している。
〈自立相談支援機関〉
失業や病気などで生活に困る人を、生活保護を受ける手前で支える相談窓口。
2015年4月に始まった生活困窮者自立支援制度に伴い、福祉事務所のある902自治体に設置されている。
一人一人の状況に応じた支援プランを作る。
〔◆平成29(2017)年2月8日 読売新聞 東京夕刊〕