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{{topicpath | [[メインページ]] > [[:Category:不登校情報センター|不登校情報センター]] > [[松田武己]] > {{PAGENAME}} }} ==家庭内のケア労働を認識する時代== （２０２４年４月１８日）<br> ２月にケア労働、ことに家庭内のケア労働（の社会化）について考えました。<br> それ以降、約２か月の中断です。私はその経済的背景を、経済学の基礎・基本から勉強するはめになりました。<br> ２月２日に載せた「家事労働、換金計算されない労働の空白（Lie）」は、昨年９月に載せたものの再録です。<br> 長く家族の世話をしてきた〈すず〉さんという人の「私のこれまでやってきたことは、何もなかったのか」という社会的評価のウソに共鳴して考えたことです。<br> （『NABAニュース・レター』に載せられた告発文）。<br> ＊NABAは摂食障害に取り組むグループです。<br> 人間はあるときに、とんでもない「発見」をすることがあります。<br> それが現実的に考えられるには社会にある程度の条件がないと、その場かぎりで消失してしまうものです。<br> そういうわけで、「そうじゃないだろう。既に何か考えられる状態ができているのではないか」と経済学の基礎・基本に挑んでみたのです。<br> しかし、それについて書き続けられませんでした。<br> ２か月の空白は、これを補うための勉強期間でした。<br> 暗闇の中におぼろげな姿を得た気がしたので再開です。まず大筋を話しましょう。<br> あまり先に進んで説明せずに現在の家事労働(家庭内サービス)から、そのもとの基盤になっているサービス産業の様子をいくつかの面から考えてみました。<br> まず経済史におけるサービス産業（第三次産業）の発展を概略します。<br> 明治になって、近代日本が成立し、産業革命の時代を迎えました。<br> それまでは小規模な家内工業的なものがありましたが、大部分は農業と林業・漁業を含む第一次産業が中心でした。<br> 第三次産業の中心は商業でした。<br> 明治に始まる工業化により、経済的に発展しましたが、第二次大戦前の１９４０年のＧＤＰ（国内総生産）をみると、第一次産業20.9％、第二次産業45.6％、第三次産業33.5％です。<br> 第三次産業の中心は商業です。この頃には、金融・保険、新聞・出版、教育、医療などが第三次産業として広がりました。<br> それでも当時の就業人口の第一位は農業が43.7％をしめています。<br> この産業構造の基本状態は、１９５０年代初めまでつづきました。そして高度経済成長の時代を迎えました。<br> 公式には１９５５年から１９７３年の期間が日本の高度経済成長期といわれます。<br> １９５５年のGDP構成比をみると、<br> 第一次産業21.0％、第二次産業36.9％、第三次産業42.2％です。<br> 同じGDPの構成を高度経済成長期が終えた１９７３年でみると、<br> 第一次産業6.1％、第二次産業46.2％、第三次産業47.7％です。<br> 農業中心の第一次産業は衰退し（日本は食料輸入国になりました）、日本が高度な経済社会になったという内容は、サービス産業中心の経済構造に移行したという意味です。<br> １９５５年の時点で第三次産業が最大になっています。<br> 高度経済成長期はむしろ第二次産業の増大が目立つわけで、高度経済成長期はとくに製造業の発達の時期と言えるでしょう。<br> 高度経済成長に次ぐ、安定成長期というのが１９７４年から１９９１年のバブル崩壊までつづきます。<br> １９９０年のＧＤＰは、第一次産業2.6％、第二次産業41.8％、第三次産業55.6％です。<br> 安定成長期になりサービス産業が５０％を超えました。<br> バブル経済の崩壊は日本の長期停滞社会の始まりでもありますが、他方では「少子化、高齢化社会」の始まりでもありました。<br> もう1つ、経済停滞とかかわって女性の就業率が高まりました。<br> 家計の補助で主婦が働き始めるという面だけでなく、男女とも高校進学率が上がり、特に女性は高校進学率でも男女の差がなくなったことも関係します。<br> 働く女性が増えたのに、「仕事と家庭」を両立させる社会条件がない状態になりました。<br> それが結婚しない人の増大、少子化の促進の一因でしょう。<br> 他方では人口の高齢化のなかで親の介護が以前よりも大きな位置を占め始めました。<br> １９９０年以降（バブル崩壊）以降の社会は人口構成面では、少子化・高齢化が広がり、その一方で女性の就業＝社会進出が広がっていたのです。<br> ９０年以降の長期停滞社会では、国内企業の海外進出＝国内産業の衰退、失業者の増大、賃金が上がらない…など経済社会の状況とともに家族に関係する生活社会に大きな変化があったのです。<br> この時期に、家事労働におけるサービス業の社会化すすみました。<br> 子育て環境（保育所の増加）、介護保険制度の創設と介護施設が増えたのはこれに関係します。<br> 経済状況と家族状態の変化は強く結びついています。<br> 家事労働の社会化といっても、一度に全部というわけにはいかず、いろいろな事態を生み出しながら広がりました。<br> １９９０年のバブル崩壊のころにはサービス産業が全体のＧＤＰの半分以上を占めています。<br> サービス産業のなかでも変化がありました。<br> 家事労働が家庭内から外に、社会に広がりました。<br> 子育て（保育）はそれ以前から始まっていましたが、介護が本格的に家庭内から外部に広がりました。<br> ところが家庭内に残っている家事労働のうち対人的部分（子育て、介護、そして病人や障害者の看護など）は、重要性が高まっているのに、それらは社会的な評価を受けないままになっています。<br> 〈すず〉さんの「これって何！」という思いはここに発生したのです。<br> しかし、これで終わりではありません。<br> ２０２０年に始まるコロナ禍においてはエッセンシャルワーク（人間の生存に不可欠な仕事）として、対人的ケアワークの重要性が一層きわ立ってきました。<br> ケアワークとはサービス産業の一部になります。<br> 〈すず〉さんの思いは、空中に霧散するものではなく、社会的に地についた状態を考えられる時代に入ったのです。<br> 今回の参考文献のいくつかを挙げておきます。<br> 『日本経済史1600-2000』慶應義塾大学出版会、2009<br> 横浜国大経済学部『ゼロからはじめる経済入門』有斐閣、2019<br> 広井良典『ポスト資本主義』岩波新書、2015<br> [[Category:無償の家事労働に価値評価を考える試作論|かていないのけあろうどう]] [[Category:不登校情報センター・五十田猛・論文とエッセイ|20240418]]

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