Eテレに『ひきこもり国語辞典』が出てびっくり

昨夜、あるところでTVを見ていたところ、チャンネルが急にEテレに変わりました。
ひきこもりがテーマの番組でしたが、すぐに『ひきこもり国語辞典』が画面に出てきて、ちょっとびっくり。
この前取材を受けたのがこのタイミングで出てくるとは知らなかったのです。
『ひきこもり国語辞典』の紹介は5分間ぐらいでしょうか。
タイトルが「ひきこもり文学」になっていて、雑誌『HIKIPOS』に掲載された手記が中心の番組でした。
『ひきこもり国語辞典』をむりやり挟んでくれたのかもしれません。
Wさん、ありがとうございました。
文学という意味ではブログ「中年ひきこもり」に発表した二条さんの「ひきこもりでも結婚できる」というのがぴったりです。
ギリギリの状況の中で、ウソを交えずに何かを貫くなかに人間らしさが表れている気がします。
何とかできないかと思っています。

*Eテレ放映の分がDVDになって送られてきました。(9月4日)
ハートネットTV「ひきこもり新時代」8月22日・23日放映

『ひきこもり国語辞典』を紹介します

『ひきこもり国語辞典』紹介の番組をつくりたい、ということなので取材を受けることにしました。
取材には出たとこ勝負で話すかありませんが、どういう契機から始まったのかを思い出してまとめておきました。

『ひきこもり国語辞典』はひきこもりの集まる居場所で自然に発生した事情からできたものです。

<難しいと恥ずかしいは類似語です。>
こう書いた紙がひきこもり経験者が集まる場に張り出されていました。15年以上も前のことです。
「難しい」と「恥ずかしい」は発音が似ており、ことば遊びかもしれません。
しかしこれを書いた人は、恥ずかしいというのが先にあって、自己主張できないと感じていたと思えます。自己主張できない自分の難しさは恥ずかしさによるものだ。それを感じてこの言葉を張り出したと理解しました。
しばらくして別の人が<イブニングフォール症候群>と書いた小さな紙を張り出しました。夕方になり家に帰らなくてはならない時間になった。しかし、帰りたくない気持ちが出てきた。それを表した言葉です。

特別にこういう取り組みを呼びかけたのではありません。
私はそれを見ながらひらめきました。ひきこもり経験者の振る舞いに伴って出てくる言葉、私への話かけのなかで、ひきこもりの特徴を示す言葉を書き留めておくようになりました。
ある時期に不登校情報センターのサイトにそれらの言葉をまとめました。1人の言葉がそのまま採用になるときもあります。数人の似たものを1つにまとめたりしました。
だいぶん増えたころにそれらを自家製の本にまとめました。5年ほど前のことです。いまでは314語の言葉を紹介しています。誰の言葉なのかわからないものもありますが、50名以上になります。

ひきこもりを心理学などから理解するのとは別に、当事者の直接の言葉から理解する方法ではないかと思います。ひきこもりの当事者も自分を理解する参考になるかもしれません。一般の方にも〈おもしろがりつつ〉参考にできるかもしれません。

「生涯現役」の反対語は「世捨て人」

「生涯現役」を主張する元気な人が話しています。
テレビに映る人の言葉です。
「自分とは反対だな」とPくんがボソッと一言。
「生涯現役の反対は何になるの?」と聞いてみました。
「生涯無役」とでもいうのかな、と構えていたら違いました。
「世捨て人」だそうです。
う~ん、予想を超えている。
『ひきこもり国語辞典』に追加できそうです。
http://www.futoko.info/zzmediawiki/ひきこもり国語辞典・辞書編や行

『ひきこもり国語辞典』改訂版をつくり販売したい③

全国若者・ひきこもり協同実践交流会のロビー活動というのはおもしろそうです。前回の福島大会ではワークショップとしてさまざまな表現(アート、食、パフォーマンス、スポーツ)を通しての交流な場が設けられたようです。
その準備を実行委員会では「ロビー活動」として話し合い、各団体の制作したものの発表の場をつくる、大会参加者への案内をするコンシェルジェの役割をしてみようかという意見があったとのことです。
これを聞いて『ひきこもり国語辞典』の改訂増補版をつくりたいと思いました。現行版は2013年4月発行しましたが、そのときから語彙は30語以上は増えています。そろそろ改訂版もいいのではないかと考えていたところです。あわせてあゆみ書店発行としている自主制作パンフが10点近くあります。それらを販売できるかもしれません。
なお、私は「居場所」ブロックのミーティングの場で、個人的に(グループでも)ネットを通じて引きこもる人に呼びかけ、コミュニケーションを図ろうとする人がいれば、発表の機会を与えてはどうかと発言しました。そういう試みをする人がいましたら連絡をください。
もうひとつ、ひきこもり家族会も話しました。前回大会では特別分科会として「家族交流会」が持たれました。これは実現するでしょう。

十数年前の情報センターの居場所を相対的に評価し直す機会

4月3日、フューチャーセッション庵に参加しました。会場は池袋の生活産業プラザです。5月の「ひきこもり大学 in 下町」の参考にしようと思いました。参加者は50名以上100名以下ですが、かなり多かったです。
情報センターの事務作業グループの一人Uくんもいて、後で話したことをまとめてみました。参加しての感想ですが、このフューチャーセッション庵の様子を、不登校情報センターの2003、4年ごろのフリースペースと比較していました。
(1)庵の参加者数がとても多く、情報センターの場合は毎回の参加者は10名から20名程度です。庵は2か月に1回の開催ですが、情報センターは毎日(土日曜日・祝日も)です。情報センターの場合は固定的な事務所があることに関係します。
*2004年2月・3月の参加者名簿が見つかりこれが確認できました。2月は実数63名、3月は64名が参加。数名が月に15日以上参加しています。
(2)参加者の年齢層が、おおよそ10歳以上違います。庵は20代中盤以上から40代後半までと推測され、30代が中心だと思います。
当時の情報センターは20代が中心で10代も少し、30代はそれよりも多く1~2割程度というところです。10余年の違いがそのまま移行している感じです。
(3)参加者の男女比は、庵は女性が2~3割で、スタッフが多いと思います(見た目の受け取り方です)。当時の情報センターを調べると、女性は25~30%程度です。
(4)庵には、親の参加が少しありました。子どもの問題解決の手掛かりにしようとする人も少しいたようです。情報センターには別に親の会が毎月定例会をしていて、こちらの参加者も数十名になりました。親子の両方が関わるのは2割以下ではないかと思います。
(5)運営体制が全然違います。庵にはスタッフとそれに準ずる人がかなりいますが、当時の情報センターは事実上スタッフがゼロで、カウンセラーさんが各自の都合で参加していましたが、これを確認する記録は見つかりません。カウンセラーさんが独自にセミナーや分科会をしたことはあります。
庵はこのスタッフが中心になり、テーマを設定した分科会が持ちます。分科会のテーマは固定的ではなくときどき変更するようです。
(6)庵はこの分科会が数時間で、その前後が開催時間ですから、全体でおよそ4時間になります。当時の情報センターは昼頃から誰かが参加し始めて、夕方から帰り始める人が多く、遅い人は8時、9時になりました。

おおよそがこのような違いになると思います。情報センターは成り行き任せで続いていたのに対して、庵はゆるいですが目的的で組織立っています。
情報センターのこの状況は2004年3月がピークで、4月から参加者は減少します。その原因はNHKの“ひきこもりキャンペーン”が終了したことです。各地のフリースペースや居場所がこの影響でなくなりました。
情報センターの居場所が続いたのは、相対的に参加者が多かったこと、それが毎日続いていたこととともに、その頃から作業グループが生まれたことに関係すると考えられます。実は庵についても何らかの変化が起こりうると感じています。どういうものになるのかはこれからです。
このように庵の動向を見ることは、十数年前の情報センターの居場所の状況を相対的に再評価する機会になりました。また2003年ころ生まれた作業グループを位置づけて評価する起点になりそうです。

虚弱気質、抜け殻、般若などを追加し300語句に

『ひきこもり国語辞典』という自作本をつくり販売しています。完成したのは2013年4月です。
その後もこの辞書に入れる語句を追加し、これはサイト内に掲載しています。
次の語句をまとめて追加しました。「溺れる、偽装、虚弱気質、角が生えてくる、とてもよかった、抜け殻、乗っ取られ感、ピン止め、要塞、流浪の民」。
語句数が累計300を超えました。できれば市販本にしたいところです。
語句は情報センターに来ている人の会話などからピックアップしたものです。個人的な経験が言葉に出て、納得できたり、驚いたり…。1人だけの語句もありますし、複数の人の言葉から合成したものもあります。
これからも語句は追加しますので、心当たりのある方は自分なりの、引きこもりらしい(必ずしも引きこもり限定的ではありません)言行を表わす言葉を、エピソードとともに送ってください。
実際に辞書に載せるものは、松田武己の責任で表現します。
お名前や連絡先もお願いします。もし市販本になったら(?)稿料計算の材料にします。これまで40名以上からの語句を集め、いちばん多い人は20以上の語句を提供しています。

個別プログラム方式と個別伴走型方式の違い

フリースクールやホームスクールを義務教育の一つの形態として位置付けることが見送られました。国会で議論されている多様な就学機会を確保する法案のなかのことです。
義務教育の場を学校に限定してきた教育の大転換になると注目されたのですが、「不登校を助長することになる」などの慎重論が上回ったためだといいます。
私は学校以外の教育を進めるのに2つの考え方があることが明瞭になったと理解しています。
1つは、生徒個人の状態を判断して、それに沿った個別プログラムを作成し、指導計画をつくり支援していくもの。これを個別プログラム方式と呼びましょう。今回の法案ではこの考え方が取り入れられていたようです。
もう一つは、そういう個別の指導計画は生徒を軌道に乗せて進もうとするもので、個人の提起する問題を置き去りにするという批判です。これを個別伴走型方式と呼びましょう。

実はひきこもりの支援に関しても同じことが生まれています。私の経験からすると個別プログラム方式はある時点から生徒・当事者の状態とは離れてしまいます。方式は絶えず修正しなくてはならないものです。個別プログラム方式はそれが意図されずに進み、当事者が置き去りにされてしまいやすいのです。
絶えず修正するとは、言葉を代えれば個別伴走型方式になることです。当事者の周囲にいて様子を見ながら対応策をつねに変えていくことになります。当事者の様子から離れることは少ないですが、難しい面もあります。当事者の様子に合わせて指導が漂流していることもあります。
福祉的な支援においては、当事者の関与を除いた解決策はないことが明確になっています。これを教育の場でも採用するしかないと思います。
目標を大きくし、当事者が向かう方向に手を加えず、伴走ないしは後ろから押していく形が望ましいと思うのです。支援現場では試行錯誤の連続ですが、私にはそういう姿も当事者にも見えてしまうのがいいと考えています。もともと完全はないからです。

聴覚だけでなく皮膚からも音情報を集める感受性

引きこもりになる人は相当に感覚が鋭いと感じることは多いです。それにも個人差があり、どの部分がどうというのは一律ではありません。
嗅覚がいい人、味覚がいいと思える人、そして聴覚がいい人というように特徴というかズレがあります。
室内で話しているのですが、外の様子がよくわかるような人がいます。ほんとにわずかな音でも聞こえているのでしょう。
ある人と話しているときのことです。「何かいる」というのです。確かに耳では音は聞こえてはいないのに、何かの気配を感じました。振動を感じるといえばいいのでしょうか。音にすれば非常に低い音になるのでしょうが、通常の人の耳では拾えないようなにぶくて太い響きです。
これは耳ではなく、皮膚感覚または身体感覚でとらえていたように思います。
それ以降は、気をつけていると時たまそういうことがあります。
聴覚とは空気の振動を感覚器官がとらえることです。しかし、人の耳がとらえるのはある範囲の音の波長です。その範囲は人により多少の違いがあり、聴覚の優れている人はこの範囲が広いのでしょうか。しかし、それだけではないとこの時から考え始めました。
耳以外でとらえる空気の振動を皮膚感覚でとらえるとなると、これは皮膚にも聴覚に匹敵する役目があることになります。
ひきこもりの感覚の鋭いというのは皮膚感覚が鋭くて、周囲の音を皮膚からも集めているように思います。
このことを、私は傳田光洋『皮膚感覚と人間のこころ』(新潮選書、2013)を読む前に書いておくべきでした。この本ではそこを解き明かしています。自分も気づいていたというのは出し遅れ感はありますが…。
体毛の消失も同じ本で書かれています。私が「体毛の消失と感情表出の発達」を書いたのは2005年2月です(「五十田猛・論文とエッセイ」に掲載していますから見てください)。

ひきこもり体験者として話す場に『ひきこもり国語辞典』

自作本『ひきこもり国語辞典』を少し増刷しました。
Zくんが体験を話す機会があり、その場でひきこもりを理解してもらうのに役立つと考えるからです。
Zくんが話す場は100名ぐらいの参加者がいそうなところです。
そこで専門家といわれる人に混ざって、当事者の話をするわけです。30分と言っていました。周りの雰囲気に合わせる内容ではなく“こびないで”話したいと言っていました。
二条淳也くんの『中年ひきこもり』も一緒に持っていってもらいました。

〔追記:28日〕
Zくんが昨日の話しをしてくれました。かなり聞く耳を持って聞いてくれたようだと言います。親の会とは違い民生委員などもいますので不安もあったのですが受けとめてもらえた感触はあったようです。それでも3割わかってもらえれば上々のようです。『ひきこもり国語辞典』も『中年ひきこもり』もそれぞれ売れました。二条さんのがこういう形で売れたことも成果です。

ひきこもり国語辞典を作成

 

ひきこもり国語辞典

ひきこもり国語辞典』の手作りの本が出来ました。
A5版110ページです。定価400円(税別)、送付するときは1冊500円(送料含む)とします。
これまで「引きこもり生活事典」ページに書き加え、蓄積してきたもので合計276語あります。
主に通所してきた人たちから聞いたことばを私の責任で編集しました。しかし、各ことばのオリジナリティはそれぞれの人にありますから、万一この本が売れたら(可能性は薄いかもしれませんが)、しかるべき原稿料をお渡しします。
問題はその「オリジナリティ」が誰のものかわからないものもあることです。
情報センター内に置かれている「言葉カード」に書いた人は問題なくわかります。それ以外の私が聞いて書いたものは、忘れないようにある時期からは「引きこもり生活事典」に暗号符を振っていたのですが、不明なものも多いです。心当たりのある方は申し出てください。もう1つは「オリジナリティ」が2人以上にある場合です。最初に言った人というよりも、私がピンときたときのものが採用されます。そのあたりにあいまいさが残りますが大目に見てください。
なお引き続き、「引きこもり生活事典」として、ことば集めを続けます。