居場所における斜めの関係

5月3日のパネルディスカッションの席で、引きこもり経験者の居場所(スペース)の様子が話されました。
支援者と当事者との関係はできる(できる人が居場所に定着する)けれども、当事者の横の関係はできづらいという点が出ました。それが横の関係ならば、支援者(ここでは松田となります)と当事者の関係は縦の関係となります。
他の支援団体の様子を聞いても、この点はある程度は共通しています。
それどころか、横の関係においては友好的な関係ができないばかりか、ときには排除しあう関係や避けあっている関係も珍しくはありません。
組織的な人間関係づくりが苦手な人がほとんどですので、対抗するグループが敵対レベルになることはまずありません。排除しあっている人の親しい数人のなかに自分と親しくなれそうな人もいて、この関係は個人的な好悪感にとどまることがほとんどです。

さてこの縦横の居場所の人間関係に、この席では斜めの関係が指摘されました。
その役割を果たすのが、このスペース参加する研究者・学生(出席した堀口佐知子さんを指します)と何人かの母親です。
当事者はこの支援者を標榜しない研究者や母親の、あるときは何かを聞かれあるときは自分から話をもちかけていって、相応の話のできる関係ができていきます。
カウンセラーさんもいますが、直接にカウンセリングを受ける関係ではないカウンセラーさんがこのような役割になることもあります。
場合によっては当事者がそれに近い役割になることもあります。
もちろんこれには個人差があり、どの当事者も斜めの関係を利用するわけではありません。

この斜めの関係は十分に評価されていません。
もしかしたらそういう場面が他の居場所においてはあまりないのかもしれません。
不登校情報センターの居場所の歴史のなかではこの面が意外に大きかったと思います。
というのも私自身が支援者というよりも、それ以外の理解者として不登校・引きこもりに関わり始め、ここまで進んできたと思えるからです。

生活保護の受給に思う

新小岩に「とんかつマツモト」というお店があります。以前にはときどき行っていたのですが、なるべく肉類は食べないようにしているので最近は行かなくなりました。
店主の松本芳明さんはボクシング・フライ級のチャンピオンです。
私と同じくらいの年齢ですが、25歳で引退しています。
どういう経過か知れませんが、いまはとんかつ屋さんを営んでいます。

いったいプロスポーツ選手が現役引退した後、皆さんこのようにできるのでしょうか。
大相撲では中学卒業後すぐに部屋に入ります。十両にまで昇進するのは数十人に1人とか。とするとこの時代に中学校卒業のまま、社会に出る人も少なからずいます。
そんなことを感じて大相撲では高校卒業できる仕組みをつくってもうかなりになります。
でもそれだけでは十分とはいえないでしょう。
プロ野球も20代前半で2軍生活のまま引退する人が多いと聞きます。サッカーや陸上選手などいろんな分野にいます。
成功者は何とかなるでしょうが、むしろ多数の無名のままの人の引退後はどうされているのでしょうか。

話は芸能人に代わります。こちらは人気が出るまでに長い時間がかかり、これというものがないまま引退、または転職を考える人が多数います。
「次長課長」の河本準一さん、実は私はよく知りませんが、いま売れているからといって今後も大丈夫なんですか?
芸能事務所・プロダクションはどこまでサポートしてくれるのか知りませんが、長い人生を考えると今後とも順調に芸能活動ができる不安はないのでしょうか。
そこを考えると、急に売れ始めたからすぐに生活保護の打ち切りできなかった背景も部分的にはわかります。売れ始めてからも続けたのが長すぎたのでしょう。
実際、急に出て、急にいなくなる芸能人っていると思いますが、どうでしょうね。
この度のことで彼はかなりつらい立場に立たされ“謝罪会見”までしました。
彼のことはこれ以上はいわないでおきます。

ただ、一般の生活保護受給者には、他にどうしようにも手段がない人は多くいます。
こちらの人たちを河本さんのケースにして悪乗りして制約することのないように願いたいものです。
生活保護受給以下の給与や収入で生活保護を受けないでいる人は受給者よりもはるかに多いと聞きます。
それは日本人の美徳かもしれません。社会的な圧力を感じやすい国民性かもしれません。
そういう状態の人に受給者を追い込まないでください、とお願いしたいです。
それは日本社会を守ることになるからです。毎年3万人以上の自死者が出ているのですよ。
すべてが生活できなくなったという理由ではないにしても、それが大きな理由であることは確かでしょう。
結局、為政者は“そういう仲間割れ”を利用して、低所得者を低めのままにしておこうとしていると思えるのです。
生活保護の受給者への攻撃よりも、フルタイム働いても(休日を保障しないまま)生活保護受給費以下の収入がない制度、非正規雇用の各種を改善しなくて何が為政者なのかといいたいです。