こどもの夢サポートセンター
こどもの夢サポートセンター
所在地 | 神奈川県横須賀市 |
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TEL | 046-834-2858 |
FAX | |
k_tabuchi17@yahoo.co.jp |
困窮家庭の子に学習支援 担い手不足 自治体ごとに差
◇安心の設計
経済的に困窮する家庭の子どもに勉強を教える自治体の取り組みが広がっている。
2015年に始まった生活困窮者自立支援制度の事業に位置付けられたことを機に広がり、今年度は500以上の自治体で実施されている。
親から子への「貧困の連鎖」を防ぐ効果が期待されているが、人手不足などを理由に実施しない自治体も多く、取り組みにはばらつきがある。
□勉強でき「うれしい」
火曜日の午後6時半、神奈川県横須賀市の公共施設の一室に市内の中学3年生16人が集まった。
「よく来たね」。子どもたちに、NPO法人「こどもの夢サポートセンター」の山本陽子さん(66)が声をかけた。
この日、就学援助を受ける家庭の子どもを対象にした市の無料学習会が開かれていた。
登録している16人は、元教員や大学生のボランティアから2時間かけて数学と英語を教わった。
参加する市内の女子生徒(15)の夢は幼稚園教諭。福祉科のある高校を目指しているという。
「少人数で質問しやすい。家では勉強する習慣がないから、ここで勉強できるのはうれしい」と話す。
□居場所としての役割
横須賀市が学習支援を始めたのは11年度から。当初は生活保護世帯の子どもが対象だったが、16年度から就学援助の受給世帯にも対象を広げた。
現在、市内の中学3年生55人を支援する。
生活保護世帯には委託したNPO法人のメンバーが週1回90分、宿題の面倒を見たり進路相談に応じたりする。
就学援助世帯向けには、週1回、市内2地区で学習会を開く。
生活環境が乱れていたり、精神的に不安定だったりする子どももいるため、山本さんらは、勉強を教える合間に生活の様子や悩みなどを聞くよう心がけている。
山本さんは「居場所としての役割も大きい」と話す。
事業を担当する同市生活福祉課の斎藤冨子さんは「子どもの意欲を引き出す効果が大きい。子どもが変わると、親の意識も変わる」と指摘する。
ある生活保護世帯では、母親がうつ病で家事ができない状態にあり、子どもは不登校だった。
だが、学習支援を受けた子どもが高校に入学し、良い成績を取るようになると、母親も毎朝起きて、子どもに弁当を作るようになった。
生活保護世帯の中学3年生を対象にした市の調査(14年度)では、学習支援を受けた子どもの全日制高校への合格率は9割。
受けなかった子どもの合格率は6割だった。
□実施自治体は増加
困窮世帯の子どもへの学習支援は、生活困窮者自立支援制度で自治体の任意事業に位置付けられている。
対象者や支援内容などは自治体に任されており、事業費の半分は国が補助している。
15年度に301自治体だった実施自治体は、17年度には504自治体に増加。
対象は小学生から高校生まで幅広いが、参加者の6割は中学生だ。
ただ、取り組みには差があるのが現状だ。
東京都や埼玉県などの都市部では、実施主体とされている自治体の9割以上で行われているが、岐阜県では1割強にとどまる。
県の担当者は「支援対象者が限られ、費用対効果を考えると事業化が難しい。公共交通機関が少なく、教室に集まってもらうのも大変だ」と話す。
京都府京丹後市は、生活保護世帯の12人を対象に、2人の支援スタッフが戸別訪問を行う。
車で片道1時間かけて訪問するケースもあるといい、担当者は「支援対象の拡大を望む声もあるが人手が足りない。学習指導だけでなく、家庭を訪問し、生活環境を整える難しい役割のため、なり手が不足している」と話す。
困窮者の学習支援に取り組み、全国の実施状況にも詳しいNPO法人「さいたまユースサポートネット」の青砥恭代表理事は、「特に過疎地では人材や交通機関の不足が課題だ。これまで支援に取り組んできた関係者が協力し、各地で活動する支援者を育成することが必要だ」と話している。
〈生活困窮者自立支援制度〉
生活困窮者自立支援法に基づき、生活保護を受けていない困窮者(失業者、多重債務者やひきこもりの人など)の相談を受け付け、就労支援、家賃補助などを行う。
市、東京23区、都道府県など福祉事務所を設置している902自治体が実施主体。学習支援は生活保護世帯も対象にできる。
〔◆平成29(2017)年10月22日 読売新聞 東京朝刊〕