親の介護
親の介護
周辺ニュース
ページ名親の介護、(介護のニュース])
「施設はかわいそう」。突然義母を引き取った夫の無責任〈嫌いな親を介護する・2〉
婦人公論.jp
さまざまな理由で不仲になったり、距離ができてしまったりした親の介護や経済面の援助が、いざ目の前に迫ってきたら……。
「親の面倒などみるつもりはなかった」という3人のホンネから浮かび上がる、
親と子それぞれの事情とは――ミサキさん(仮名)は、夫の突然の宣言で、姑の介護に関わることになった
◆長男夫婦を実家から追い出して
嫁姑トラブルや介護などの家族のしがらみに縛られたくないという理由から、「長男とは絶対に結婚しない」と決めていたミサキさん(54歳・専業主婦)。
30年前、その思惑通りに次男である男性(現在53歳)と結婚した。
家業の工場を継いで両親と同居している長男夫婦を尻目に、自由気ままな生活を送っていたという。
ところが昨年、義父が突然亡くなり、ほどなくして義母(当時76歳)が認知症を発症すると、状況が一変した。
「義母を施設に入れるという長男夫婦に対して、夫が『施設なんてかわいそうだ。俺が看る』と言い出したんです。
しかも私になんの相談もなく、工場の経営は任せたまま、長男夫婦を実家から追い出し、義母との同居を決断してしまって……。まさに、青天の霹靂でした」
それからというもの、ミサキさんの地獄の日々が始まった。
「俺が看る」という言葉はどこへやら、仕事の忙しさを言い訳に、夫は義母の介護をミサキさん一人に背負わせる。
認知症ではあるものの、身体的には健康だった義母の徘徊にはかなり悩まされた。
迷子になり、警察のお世話になることもたびたび。おむつをつけても、脱ぎ廊下で粗相をしてしまうことも。
「義母は病前、優しくて頼もしい人でした。
思春期を迎え、喫煙・無断外泊・不登校とグレてしまった私たちの息子を、『私に任せて!』と預かってくれたときは、本当にうれしかった。
だから、お世話をしてあげたい気持ちはあったんです。
でも、認知症になった義母のあまりの変わりように困り果ててしまって……」
◆夫の暴力を止められない自分を責め…
事態はさらに悪化する。日に日に表情が曇っていくミサキさんを見かねた夫が、「俺の嫁に負担をかけるな!」と、実の母親の顔を平手打ちするようになってしまったのだ。
殴られながら、「どこの誰だか知りませんが、あんたは兵隊かい? 私を見くびるな!」とわめく義母……。
「そうした夫の暴力行為を、『介護でつらい思いをしている私の負担を減らしたいと思ってのこと』と肯定し、義母を守ろうとしない自分は最低な人間だと自己嫌悪に陥りました。
このままでは夫も私も、そして義母もダメになる。そう思っていても、夫を止めることができなくて」
たまに顔を見せる長男夫婦は、義母の顔に腫れや青アザがあるのを見ておかしいと思ったに違いない。
しかし、施設に入れるつもりでいた彼らは「そんなに大変なら私たちが……」とは言えなかったのだろう。見て見ぬ振りを続けていた。
一方、ミサキさんの夫も、一度「俺が看る」と実家から長男夫婦を追い出した手前、「やっぱり施設に入れることにする」とは言えなかった。
「自己嫌悪や無力感、さまざまな思いに苦しめられて、私はうつ状態に陥りました。
義母の介護どころか、トイレ以外、布団から起き上がれず、入浴も歯磨きもできない日々が3ヵ月ほど続くことに」
妻の異変に慌てた夫は、ようやく母親を介護施設へ預けた。
「ミサキさんは、どこにいるの? ミサキさん、私を救いに来て!」と義母は職員に訴え続けたそうだ。
ミサキさんはうつ状態にありながらも、毎日面会に行った。そしてほどなく、義母は亡くなってしまう。
「暴力を振るい続けた夫は、葬儀の間中、母の遺影を抱えて号泣していました。
義母の介護をきっかけに、暴力を振るう夫の裏の顔を見てしまったために、夫への不信感が大きくなりました。現在、離婚を考えています」
〔2019年11/21(木)婦人公論.jp(取材・文=武香織)〕
ある日突然やってきた親の介護 6割が思ったよりも若い年齢で開始
内閣府が発表した「平成28年版高齢社会白書」によると、現在日本は国内人口の26.7%が65歳以上の高齢者であり、4人に1人が高齢者という超高齢化社会を迎えている。
自分や配偶者の両親の介護を自宅で行う人が増加しており、この傾向はますます加速してくと思われる。
大人用紙おむつなど介護用品を販売している大王製紙が、在宅介護を行っている男女300名を対象に「介護と年齢」に関する調査をインターネットで行った。
回答者300人の中で、61%の在宅介護者が「思ったよりも若い年齢で介護が始まった」としている。
「在宅介護」を始めた年齢を聞くと平均は「50.9歳」、合わせて将来「在宅介護」をするかもしれないと意識し始めた年齢を聞くと平均「48.2歳」だった。
つまり、「在宅介護」を意識し始めてから約3年で実際の介護が始まったという人が実に多かった。
現在、在宅介護を行っている人で20・30歳の時に将来「在宅介護」を行うと思っていたか聞くと、「20歳の時」(79%)、「30歳の時」(76%)が「思っていなかった」と回答。
若年層では在宅介護は他人事という認識が強く、親の介護の心配よりも自分自身の今後を心配する声もあった。
在宅介護を実際にやってみて感じたことでは、約7割が在宅介護で「諦めなければならないこと」が予想よりも多かったと回答。
具体的には自由な時間、旅行、仕事の継続など。在宅介護のつらさを問うと、「精神的につらい」と回答した人が約7割、「肉体的につらい」と回答した人が約6割だった。
精神的につらいことの第1位は「排せつ介助」だった。在宅介護で、精神面でも肉体面でも予想外のつらさを感じている人が多いようだ。
厚生労働省、つまり政府の考えとしては今後も「在宅医療」により力力を入れていくようだ。
膨れ上がる介護保険費の負担を軽減する目的もあるが、住み慣れた地域で療養することが一番と考えているからだ。
だが、実際は在宅介護に不安・限界を感じる人も多い。
個人的な意見だが、要介護認定者数600万人を突破した日本において、30・40代の人たちが後回しせずに真剣に考えなければいけない問題の一つではないだろうか。
〔2017年5月 財経新聞(久保圭大郎)〕