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◆脱貧困 子ども食堂いらっしゃい 「支えたい。知ってほしい」
経済的な事情などで食事が十分に取れない子どもたちに無料や低料金で料理を提供する「子ども食堂」が、中部地方でも広がり始めた。
主体はNPOやカフェ、寺などさまざま。親から子への貧困の連鎖を断つために、情報交換を重ねながら食堂の姿を探っている。
「いただきます」。十三日夜、愛知県北名古屋市の平田寺の庫裏で、子どもたちの声が響いた。月一回の予定で二月に始めた子ども食堂。
小学生以下の子どもと保護者ら約三十人が集まった。
畳の上の長机の前に座り、地元住民らがボランティアでつくったカレーライスとサラダをほおばる。
子どもは無料で、大人からは寄付を募る。
住職の妻、長谷川裕美子さん(47)は「始めたばかりで慣れないので、まだバタバタです」。
長谷川さんは、愛知県長久手市の友人が昨夏、子ども食堂を始めたことを知り、興味を持った。
子育て支援のNPOに参加した経験があり、自身も子ども四人の母親。
寺はボランティアや食材の寄付が集まりやすいため「私にもすぐにできる」と思い立った。
だが現在は、知人が友人の親子を連れてくるだけで、貧しさから食堂を本当に必要とする子どもの参加はない。
貧困層の子について役所に問い合わせても情報は得られず、周知する方法は、チラシを市役所や保育園に置くぐらいしかない。
それでも「長く続けるうちに、厳しい家庭の子どもがふらっと立ち寄ってくれるようになれば」と話す。
平田寺では長谷川さんの取り組みを、名古屋市昭和区でカフェを営む野崎美登さん(39)が眺めていた。
「テレビで知って、自分もやりたいと思っている」。
愛知県春日井市や碧南市からも、子ども食堂を計画する人が来訪。県外からの問い合わせも相次いでいる。
四月開始を目指す野崎さんも、支援を必要とする子どもをどう集めるかが課題。
「まず地元の人と交流できる場にして、そこから必要な子どもに情報が入るようになれば」と話す。
食材の入手法や子どもが喜ぶメニュー作り、衛生面の課題、運営費の捻出方法など、開設希望者の悩みは尽きないが、長谷川さんは「情報交換をして助け合いながら、各地で増えていってほしい」と願う。
中部も続々 課題は継続性 全国で100カ所
「こども食堂ネットワーク」(東京)によると、子ども食堂は現在、全国の百カ所ほどで実施されているとみられる。
中部地方では愛知県外でも、三月に三重県桑名市で二件が開設。滋賀県では、福祉団体の呼び掛けに応えて十市十六カ所で実施中だ。
ネットワーク担当者は増えつつある背景として、子どもの貧困が注目されるようになったことを指摘。
厚生労働省の二〇一二年の調査によると、平均的な所得の半分以下で暮らす世帯の十八歳未満は16・3%で過去最悪になった。
子どもの六人に一人が貧困に直面していることが、子ども食堂の普及につながっている。
さらに、料理という身近な行動で貢献できる「参入」のしやすさもあって、ネットワークが二カ月に一度開く講座には、全国から三百件ほどの受講申し込みが殺到。
愛知県長久手市の「子ども食堂長久手図書館通り店」にも問い合わせが続いている
。気軽に開設できそうだが、条件次第で保健所への届け出などが必要となる場合もある。
課題は継続性だ。長久手市の食堂はカフェを利用して市民有志が運営していたが、三月から市内のNPOの事業の一つとなった。
「一食三百円だが赤字が続き、ボランティアでは限界がある」と担当者。
四月から財団の助成を受けるなど、安定した運営に向けて模索していく。
〔2016年3月28日・貧困ネット、平成28(2016)年3月22日 中日新聞 朝刊〕