情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容
(→情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容) |
|||
1行: | 1行: | ||
+ | {{topicpath|[[メインページ]] > [[:Category:支援者・援助者|支援者・援助者]] > [[:Category: 専門家の寄稿(内容)|専門家の寄稿(内容)]] > [[:Category:企業社会の変容|企業社会の変容]] > {{PAGENAME}} }} | ||
+ | {{topicpath |[[メインページ]] > [[:Category: 支援者・援助者|支援者・援助者]] > [[:Category:支援者・講師等プロフィール|支援者・講師等プロフィール]] > [[庄司一也]] > [[:Category:企業社会の変容|企業社会の変容]] > {{PAGENAME}} }} | ||
==情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容== | ==情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容== | ||
'''企業社会の変容・その3'''<br> | '''企業社会の変容・その3'''<br> |
2015年7月10日 (金) 06:56時点における版
情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容
企業社会の変容・その3
(専門学校 東京スクールオブビジネス 専任教員 庄司一也)
インターネットに接続されるコンピューターと携帯電話が広く利用されるようになった社会を情報社会というならば、現代の社会は「超情報社会」ということができよう。
日々大量の情報が生産され、同時に大量に消費されている。
「超情報社会」に代表される、コンピューターやインターネットは私の人生のなかで最も優れた発明であると考えている。
これら情報通信技術(以下ICT Information and Communication Technology)が企業に与えた影響はいうまでもなく大きい。
業務の効率化、作業時間の短縮化をもたらしたほか、ワークスタイルの変化を与え、そしてなにより企業に多くの利益をもたらした。
そして、われわれの市民生活においてもあらゆる場面でICTの恩恵に預かっていると言える。
しかし、ICTの利益面に比例するかのように、多くのデメリットも存在するのが事実である。
ここで労働者の視点に目を向けてみよう。
ICTの発展は一見労働時間を短縮化し、時短の時代を到来させるかという幻想を抱かせるが、実は時間的競争力を高め、仕事の一層の効率化を求められ、単純・専門の業務量を増やしているのである。
すなわち、時間ベースの競争を強め、仕事のスピードを速め、業務の24時間化を進め、仕事量を増加させているのである。
ICTの利点は、「いつでも・どこでも・だれでも」という「ユビキタス」である。
すなわちインターネットに接続すれば、「いつでも・どこでも・だれでも必要な情報にアクセスできる」といったメリットがある。
しかしこれを仕事面に向ければ、「いつでも・どこでも・だれでも仕事に追われている」と同義である。
すなわち「タイムフリー・ロケーションフリー・エイジフリー・バリアフリーなワークスタイルを確立した」ということになる。
企業内での就業はもちろんのこと、帰宅後も仕事が続くという「仕事とプライベートのボーダレス化」も特徴として挙げられる。
その結果、ICTは労働時間を短縮するように思わせながら、むしろ仕事がどこまでも追いかけてくるといった長時間労働化を実現させている。
現代社会の多くのビジネスパーソンはICTと密接な関係を築いているが、それは上記労働状況を自らつくり出している。
会社内労働でさばききれない仕事(メール等)は自宅に帰ってから処理するというのはもはや当たり前である。
私的端末の業務利用(自分がプライベートで使っているPCや携帯電話を仕事に使うこと)をBYOD(Bring your own device)というが、この制度に賛否両論があることはさておき、ICTの進展に伴いBYODの業務環境下におかれたビジネスパーソンは年々増加している。
BYODも携帯電話やEメールなどの情報ツールが仕事の時間と個人の時間の境界を曖昧にしている。
また、テレワーク(ICTを利用して、オフィス以外の自宅等の場所で働く労働形態のこと)という新しいワークスタイルを確立したのもICTの恩恵ということができる。
それは、新しい働き方を提供してくれたということよりは、労働の時空と生活の時空をネットワークで「接続」することによって、労働時間・業務負担の増加であったり、公私の分別の困難、裁量労働制の問題など、まだまだ課題も多い。
そして、上記のような就業環境は労働者にとって新たな負担、とりわけ精神的負担を増やしている。
ICTの発展とともに、偶然とは思えないほど企業のメンタルヘルスの相談件数も増加している。
ICTの目まぐるしい進歩に不断に適応するよう迫られた労働者は、情報化から取り残されまいとする強迫観念から無縁ではいられない。
ICT,、特に、パソコンやディスプレイ装置を長時間使用している労働者は、眼精疲労やドライアイ、腰痛、肩こりなどのVDT障害の症状が出やすいほか、何よりメンタル面の被害が大きい。
近年、好景気感をやや実感する企業もあるなかで、まだまだバブル崩壊の後遺症から抜けきれない企業も多数存在する。
そのような企業においては、業績再生の厳しい状況下において、ICTの発展が上記のような健康被害をもたらし、人事管理面の大きな問題となっている。
多くの方がICTの恩恵を受けているからこそ、この負の面に目を向けて、その後どのような企業生活を送ればよいのかを考えていただきたい。
自分自身が労働者でありつつも、同時に普段はICTの恩恵を受けている人も、負の面にも目を向けていってほしいと心より願う。
◎参考文献
森岡孝二『働きすぎの時代』(岩波書店、2006年発行)。
構成
1企業のグローバル化がもたらす長時間労働
2企業・事業所のCSR(企業の社会的責任)として雇用創出
3情報通信技術(ICT)の発展が与えた企業社会の変容
4企業を取り巻く情報社会の変容とそれに伴う弊害
5メリットの多い新しい働き方「テレワーク」]