187 漂う夢

9月 1st, 2024  / Author: 中崎シホ

春が僕を

けだるい空気へ

誘いこむ

 

失われた夢のように

消えてゆくのは

あおい春

 

夢を

夢と認識するために

毎日めざめる

 

夢では現実を

目覚めれば夢を

忘却するばかり

 

目覚めなければ

夢は

永久に閉じられた

異世界

 

個人的であり

普遍的でもある

了解不能の世界

 

世界として

漂う夢らは

見えない

言えない

質量もない

186 青山

8月 1st, 2024  / Author: 中崎シホ

風にしたがう

空にかしずく

 

夜によりそう

日にひらかれる

 

そうして青山を

求めて歩く

 

それはおそらく

至るところにある

 

青山に立つことは

眠りか覚醒か

 

そこに満ちるのは

祈りか沈黙か

 

流れのままに

立つその地

 

救われるのか

失われるのか

185 ペンと水

7月 1st, 2024  / Author: 中崎シホ

手にもつスプーンを

ナイフにかえて

闘うことを

覚悟する

 

甘いミルクを

吸うのはやめて

勝利の美酒に

酔うため闘う

 

かざすナイフを

ペンにかえ

闘い方を

熟慮する

 

士気高める酒で

渇きは満たせず

万事をうるおす

清水を求める

184 未完の僕たち

6月 1st, 2024  / Author: 中崎シホ

十四才のはじけ方


 

十七才の倦怠感


 

歯をむいて立ち上がるのを

余儀なくしたのは

あなた方だ


 

人差し指を

天に向け

昇るイメージ

空の道


 

振りあげた

拳を解くのは

不本意だ


 

陽は輝いて

闇夜は深く

くり返される

波にのる


 

自分の足で

立つために

自分の目玉で

見るために


 

いまだ未完の

僕たちだ



183 消えるうた  

5月 3rd, 2024  / Author: 中崎シホ

リズムをとる歯

おどる舌

口びる震えて

言葉は無くて

 

リズムのうちに

はさむ休止符

打って休んで

消えゆくうた

  

眠らぬ夜は

すでに過ぎ

覚醒のまま

深みに落ちてく

 

絶望的に

切望するのは

いま在ることの

真実味

 

ゆめのような

まことのかずかず

つぎはぎだらけの

文字の列


 



182  泥

4月 1st, 2024  / Author: 中崎シホ

漆黒だ

純白だ


闇夜はつねに

うごめいている


光の朝は

来る度ちがう


 

闇も光も

一色ではない


 

泥のように

涙を重ね


 

頭の中の泡が

パチパチ弾け


 

いつものように寝て覚めて

泥の中から目醒めを手繰る



181 交差する点

3月 2nd, 2024  / Author: 中崎シホ

眠りたくない夜毎

闘うように飲み続け

目覚めたくない朝

眠らない夢を見続けて

 

亡くていい

記憶も思考も

なくなればいい

 

幻か現実か

そんなことは問題ではない

あるのは

脳内をめぐる電位の

確かな存在

 

息もままならぬ

希薄な空気のなか

世界と交差する

その地点へ

ふと踏み込んだり

遠く見失ったり