Archive for the ‘詩’ Category

148 見えない波の中

水曜日, 3月 3rd, 2021

体の周りにまとわりつく

とどこおった時間を

動かしたくて

ラジオをつける


 

閉じられた部屋に

外気を入れたくて

窓を開けるように

テレビをつける


 

飛び交う不思議な

電波に乗って

来る世界


 

姿かたちの無い

見えない電波に冒され

知らぬまま

147  禁句

火曜日, 2月 2nd, 2021

無とか

宇宙とか


 

安易な発語は

やめておこう


 

理とか

存在とか


 

わかっているつもりでも

それらは不可説

それらは手に余る


 

漠然として

都合のよい言葉だからこそ

それらは危うい

それらは禁句


 

測れない

深さを含んで

 

見えない

闇を宿して


 

 

そのようなものを

言葉としてあらわすのは

おこがましい


 

わたくし共は

謙虚に

そして真摯に

 そのようなものと向き合おう


 

 そのうえで

沈黙せざるを

得ないとしても

146  胸騒ぎ

月曜日, 1月 4th, 2021

目隠しされてる

死への道

 


いきなり出会う

そのしるし


 

飛ぶか落ちるか

光か闇か


 

 

 

知らずにまたぐ

見えない線


 

あるいは時に

知りつつまたぐ


 

見えない線を

見るおごり

 


 

いつか必ず

その一瞬


 

言語や科学で

示し得ない


 

生きてる不思議に

胸騒ぐ

145 間のまま

水曜日, 12月 2nd, 2020

目醒めたとき

夢は夢になる

目醒めなければ

夢は夢でない


夢と目醒めの

あいだはなに


生きてるからこそ

死を憂える

死によってはじめて

生は完全になる


生と死との

あいだはなに


光は闇を貫いて

闇は光を覆いきる

光と闇は反転しつつ

混在している


光と闇の

あいだはなに

 

あらゆる個々のものら

ひとつひとつの

確からしさは

不確かで


ただそれらどうしの

差異があるのみ


あるままそのまま

あいだがあるのみ

144  覚悟

月曜日, 11月 2nd, 2020

目隠しされて

見えぬもの


 

耳を塞がれ

幻の声

 

つぶれた喉での

ひとり言


 

説明しない

語らない


言葉はいつも

完全ではない


 

とはいえ沈黙に徹する

覚悟はできない


 

眠らない夜

目覚めない朝


言葉を発するにも

覚悟を要する


静寂の水面ゆらぐ

発語の波紋

143 井の中のかわず

金曜日, 10月 2nd, 2020

深遠なるとされる

井戸の底で

無限なるとされる

大海を知らず


一三七億光年より

遠い世界が

あるのか

ないのか


そらを

いくら思い描いても

想像にあまる


井戸の外の大海は

蛙にとって

想像できないどころか

その有無さえ

知らない


そして

蛙が生きるうえで

そのことは

知らなくても

問題にならない


ひいては

大海を想うときこそ

困難と深遠を

生きることとなるに

違いない

142 暗示の街

木曜日, 9月 3rd, 2020

暗示を拾いに

街へ出る

更新されてる

かけらを探す

 

見えないほころび

次元のすきま

世界の正体を

見極めたくて

 

街の中で

見つけたしるし

隠れた意味は

よみ取りがたく

 

この世を織りなす

網目は曖昧

もつれて乱れて

それでもうごめく

 

世界は自明ではなく

暗示的に

地球の回る

音をただ聞く