155 彼らの彼方
土曜日, 10月 2nd, 2021かくも生きづらかった
彼らの声を聞く
声さえ出せなかった
彼らの文字をたどる
文字さえ綴れなかった
彼らの沈黙を察する
自我はもはや
虫の息
消えてゆくのは
超えてゆくこと
人差し指を
天に向け
のぼり龍の鼻の先
腕を広げて
地に立って
降ってくるのはヤリの雨
地と天空の
はざまに生きて
無と存在の
彼方を目指す
Archive for the ‘詩’ Category155 彼らの彼方土曜日, 10月 2nd, 2021かくも生きづらかった 彼らの声を聞く 声さえ出せなかった 彼らの文字をたどる 文字さえ綴れなかった 彼らの沈黙を察する 自我はもはや 虫の息 消えてゆくのは 超えてゆくこと 人差し指を 天に向け のぼり龍の鼻の先 腕を広げて 地に立って 降ってくるのはヤリの雨 地と天空の はざまに生きて 無と存在の 彼方を目指す
154 動いてる木曜日, 9月 2nd, 2021一歩ずつでも 半歩ずつでも 一ミリずつでも 動いてる 進んでいるも 退いてるも どちらにしても 動いてる 動いているのは 自分か時代か 世界か内界か 動かぬものは きっと無い 波動を身に受け 血肉も動く 波動そのものになって ここに在る
153 第三の道月曜日, 8月 2nd, 2021三人目の反存在 かろうじて 生かされて在る 名も無い生 先に立って 名を得た 二人の背を見て 一人こぼれる三人目 光を受けて 先行する者 闇を授かり 逆行する者 成長と再生 その 必然の世界を外れた 三人目の遠いまなざし そしてこの 退行と消滅 陰なる世界の 絶え入るみちすじ どのみち見えない 未知のゆきさき 命ののちの おちる道 152 世界の本意木曜日, 7月 1st, 2021僕が 僕たる 僕の自我 なんて 要らない 知らない くだらない 世界は仮りもの あるいは 僕のつくった 僕だけのまぼろし 暗黙の気付きに 従って ほんとうのことに 気付かないふり ゆらぐ客観 ひそむ異界 ある道端では 暗示が落ちてる 行く先々では 合図と出会う しかしながら 世界の本意は くみとりがたく 畏怖を抱いて 途方にくれる
151 身体水曜日, 6月 2nd, 2021すべては 身体感覚による 憂鬱でさえ 殺意でさえ 身体感覚 自我さえ 発語さえ 身体感覚 それらを 司るかにみえる 脳神経こそも 身体だ つねに 身体感覚にある 私たちに その滅却は 生きたまま体験できるか
この身体感覚にある 死の不安 身体を 失いゆくとき 魂は発現するか 祈りにも似た なにものかは 身体を超えて ゆくのだろうか 150 詩人像日曜日, 5月 2nd, 2021うすい光の 澄んだ目をした うたごえの人
つねに深みから 言葉を発する ことだまの人
幻覚 幻聴は 病ではない
その体験は 病どころではない
疾走する文字 記号や点線
話す言葉や 仕草さえ ことごとく詩である 奇跡の人
(Y氏へのリスペクト)
149 言葉取り土曜日, 4月 3rd, 2021捕らえた命も 束の間の 蝶ちょ捕りでは ないのだから
手にしたとたん 枯れはじめる お花摘みでは ないのだから
世界をきれいに 切り取るだけの 標本づくりは もうたくさん
たとえば蝶の たとえば花の その姿の奥 存在らしきが開かれる
世を世たらしめる ほんとのことが 混沌のうち 体現される
むなしい装い 空虚な響き 飾る言葉は もういらない
差し迫ってくる ひと言ずつ 抜き差しならない いち語ずつ |