Archive for the ‘詩’ Category

113 クローバー

金曜日, 4月 6th, 2018

 

過去は

かるがる

捨てながら

 

未来は

みるみる

やってくる

 

  ☆

 

無邪気な季節は

もはや

過ぎ去り

 

まのびして

夢も現も

薄くなりつつ

 

  ☆

 

人知れず

声にならない

声を絶つ

 

沈黙

プカリと

ふくらんでゆく

 

  ☆

 

混沌たる

生死の原理の

ダイナミズム

 

四つ葉のクローバーは

終わりまぢかに

はたと見つかる

 

112  終息

日曜日, 3月 4th, 2018

眼の奥に
雲がかかり始める
末期的な
眠気の沈澱

鼻孔の通りが
苦しげに詰まる
致命的な
呼吸の収束

肩の上に
おもりが重なってゆく
黙示的な
体の硬直

終わりつつあり
無に帰すもの
開かれつつあり
未知なるもの

此岸と彼岸
無数の次元
畏れおおく
恐れも極まり

ため息とも
うめきとも
息ぎれともつかぬ
濃い呼気を吐く

111  一日一日

日曜日, 2月 4th, 2018

ひとつ
ひとつ
やっつけ
やっつけ一日終わる

わずかな笑い
流れぬ涙
熱くも飽きて
乾く悲しみ

荷を負う匂いは
海馬を駆けて
記憶の奥底
脳みその溝

ひねもす捻る
考え彼方
夜に呼ばれて
頭蓋がずれる

眠りをねたみ
ゆるい夢見の
果てに始まり
明けゆく朝

ひとつ
ひとつ
やっつけ仕事の
一日一日

110 七年目の命

月曜日, 1月 8th, 2018

神経網が
少しずれて
自己は混沌の
なかに居た

可笑しなことが
次つぎ起こる
時間の前後さえ
あやふやに

脳信号の変電
神経系の情報処理の
あり方による
世界の在り様

命はすでに
渡してあった
大きな手のうち
からから転げて

七年目の
そのうちどこかで
消え入るための
一瞬がある

109 夜の背後

日曜日, 12月 3rd, 2017

明けないはずの
夜が明けて
僕はまたしても
僕の一人を
夜の向こうへ
置き去りにしてきた

明けなかった夜は
もはや異次元
永久に交じわらない
平行線の世界

明けない夜が
思いがけずに明けたとき
僕の一人の
止まった表情を
僕は遠くとらえる

取り残された
たくさんの僕の一人が
それぞれ
不条理の
袋小路にしゃがみこむ

夜の濃さの極みに至り
そうして僕は
幾度も僕の世界に
戻ってきた

それは
更新された世界
同一性は疑わしい

僕は
僕の一人を分割し続け
失い続ける
一度として会うことのない
僕の一人一人が
夜の背後に立ちつくす

108 あの夏の夢の中

土曜日, 10月 7th, 2017

不思議の国に
まぎれこみ
天も地底も
まじりあう

濡れる抒情を
乾かして
とぎすまされ立つ
川むこう

あの夏の夢の中
息絶えだえの
異界の迷走

来る秋の日の
斜陽の寂寞
重くしずかな

107 有無の果て

水曜日, 9月 6th, 2017

パンクな音に
頭の震え
リズムを追って
打つ鼓動

クールな眼で見て
為すこと熱く
ドライな心
抒情を排す

イエスの発語は
慎重に
ノーの断言
確固たる

アシタはもはや
夢見に呑まれ
イノチはいずれ
有無の果て