Archive for the ‘詩’ Category

176 最後の仔

土曜日, 7月 1st, 2023

ハンドサインで

助けを求めた

サインの意味も

知らないまま

 

宇宙内外の

はるかどこかに居るはずの

僕の親玉に

サインを送る

 

見放された仔の

無力と絶望

 

彼方からくる

暗示ももはや

途絶えがちで

 

混沌のうちから

この生を受けるも

生まれ落ちた衝撃で

使命も指令も

そんなものがあったのかさえ

忘れてしまった

 

そうして僕は

つぶされる

全身全霊

つぶさに滅びる

 

あなたの

最後の仔になる

覚悟はすでに

できていたのに

175 孤独のうた

木曜日, 6月 1st, 2023

孤独

個の毒

ことごとく

 

苦悩

愚の脳

このうえなく

 

恨み

うらやみ

暗闇のなか

 

夢想

無の相

嘘うたう

 

存在

その際

空ぞらしく

 

そののち

祈る価値

174 空に飼われる

月曜日, 5月 1st, 2023

僕らは空に

飼われてる


バクテリアも

マウスも

ヒトを知らない


そして

ヒトもまた

何かを知らない



見得るものしか

見ていない


見得ないものを

見る覚悟


自由意思で

生きている

と 信じるも

そもそも自由が

あり得るか


そうして僕らは

空に

飼われてる

173 愚かな己の現れ

日曜日, 4月 2nd, 2023

自分らしさを

信じない


個体の差など

とるにたりない


幻想としての

自己の表象


個性の主張の

おごりと空虚さ


 個人といえども

起源は同じ


始まり終わり

みな同じ


あなたと僕の

相違があるとき


それはあなたと僕が

真に芯から


対人してると

いえるとき

 

172 音のない声

水曜日, 3月 1st, 2023

かつて

人の夜は

静寂だった


無音の

冷やかな空気に

包まれる


音を伴わない

声を聴く

動かない静けさの

声を聴く


沈黙に耐えられぬ

饒舌

黙考に耐えられぬ

脳内


夜の果て

明暗入り混じり

日のかわり目の

きしみを聞く

171 闇と自由と人独り

水曜日, 2月 1st, 2023

光に目を閉じ

闇を求める

そしてそれは

真の闇ではない

光を本当に失うとき

求めることなく

闇は

抜き差しならない

闇になる


人の目を避け

孤独を求める

そしてそれは

真の孤独ではない

人が本当に居なくなるとき

求めることなく

孤独は

抜き差しならない

孤独になる


束縛に慣れながら

自由を求める

そしてそれは

真の自由ではない

束縛が本当にほどけるとき

求めることなく

自由は

差し替えられない

自由になる

170 つらら

火曜日, 1月 3rd, 2023

鋭いつららを

振りかざしていた


独りよがりで

闘っていた


何かを傷つけたかも

しれないけれど


握ったつららは

やがて溶けていった