21. 雲よ

雲よ
僕は歌わない
ひびきあう童謡のしらべを
僕らは歌わない
青春と名付けられる
強迫的な力の律動を

雲よ
僕は見ない
抜けるような青空を
僕らは見ない
見るのはただ
たちこめる暗雲
その隙間にこびりつくだけの無力な青

友よ
そういう呼びかけも空虚だが
そういうものも無しではない
友よ
僕は歌わない
歌えるものはすでに捨てられ
捨てられなかったものは歌うに及ばない

友よ
暗雲たちこめる大地の底で
僕ら出会えたはずなのだ
雲よ
その暗雲の背後には
僕らを包む宇宙の闇だ

雲よ
僕らの困難は
友の不在のためではない
雲よ
僕がこうして呼びかけるのは
その実体の曖昧さに安住したいためではない

僕らはけして歌わない
生きのびるためには歌わない
死ぬことのためにも歌わない
何かのためには歌わない
雲よ
その暗雲の隙間から
のぞく青さのために僕は歌わない
雲よただ
そんな具合に呼びかけつづける

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