58. 夏の夜

僕らは暑い夏の夜
安い酒をあおっては
語らいつづけたものだった

僕はといえば
汗をかき
粘液質の肉体感覚に
いらだったりもしたものだ

君はといえば
汗もかかず
すっきり笑って
余計に僕をいらだたせた

しかしこんな暑い夏の夜
僕にはやはり君しかいなくて
君に語りかける幻想を
はっきり目覚めていながら
この肉体に体験していた

しかしながら
君には
言葉がなく名まえもなく
存在そのものさえ
とらえどころなく

肉体感覚にさいなまれながらも
言葉にしか生きられない僕は
君のことを
孤独とか虚無と
名付けざるを得なかったんだ

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