109 夜の背後
明けないはずの
夜が明けて
僕はまたしても
僕の一人を
夜の向こうへ
置き去りにしてきた
明けなかった夜は
もはや異次元
永久に交じわらない
平行線の世界
明けない夜が
思いがけずに明けたとき
僕の一人の
止まった表情を
僕は遠くとらえる
取り残された
たくさんの僕の一人が
それぞれ
不条理の
袋小路にしゃがみこむ
夜の濃さの極みに至り
そうして僕は
幾度も僕の世界に
戻ってきた
否
それは
更新された世界
同一性は疑わしい
僕は
僕の一人を分割し続け
失い続ける
一度として会うことのない
僕の一人一人が
夜の背後に立ちつくす