192 声
2月 1st, 2025 / Author: 中崎シホ夜に含まれる
小さな発声
遠い鉄道の摩擦音
ラジオのノイズ
盛りのついた猫の声
緊急車輌の走るサイレン
真夜中の覚醒に
耳をすます
かすかな音が
言葉を紡ぐ
消え入るような
言葉を紡ぐ
声なき者の
弱小さ
大きな声は
不敵な力をもつ
声なき不具者は
ただ耳をすます
自我を主張し
大きな声で叫ぶより
声なき者の
声を聞く
紡がれる言葉の
糸を読みとる
192 声2月 1st, 2025 / Author: 中崎シホ夜に含まれる 小さな発声 遠い鉄道の摩擦音 ラジオのノイズ 盛りのついた猫の声 緊急車輌の走るサイレン
真夜中の覚醒に 耳をすます かすかな音が 言葉を紡ぐ 消え入るような 言葉を紡ぐ
声なき者の 弱小さ 大きな声は 不敵な力をもつ 声なき不具者は ただ耳をすます
自我を主張し 大きな声で叫ぶより 声なき者の 声を聞く 紡がれる言葉の 糸を読みとる 191 夜の銃声1月 1st, 2025 / Author: 中崎シホ耳元で枕が パン と音をたてる
頭蓋をつらぬく かわいた一撃 この夜最期に 落ちていく
すべてが止んで すべては闇に そうして時は 喪失するまま
ひと夜ひと夜 死に至る 無に帰す眠り 死生のあいだ
一発の銃声を 最期の覚悟で聞いている 際立つ極み 命の痛み
貫かれた頭は 二度ともち上がらない 身体はなれて 夢幻の世界 190 沈む12月 1st, 2024 / Author: 中崎シホお日さま沈む 斜陽のとき いつのまにやら くだり坂
過去は加工 してもいい 未来は見ない ままでいい
世界は難しく なりすぎた 生はなるべく シンプルに
言葉を欲して やまない生き物 抒情にひたる 暇はない
うねる激流 進みゆき 深い水底 沈みゆき 189 日のつなぎ目に11月 1st, 2024 / Author: 中崎シホ祭りのない秋 冬の訪れ 静かな景色と 空模様
途切れる意識の はざまに在るもの 宙を掻く手と 確かさ執る手 夢とうつつが 頭蓋の裡に映り移ろい
眠れず見つめる 天井の 咲かない花のような 幾何学模様 希少な花たちが 開いてゆくのを見届けよう
去る日と来る日 まどろむ日のつなぎ目 のりしろが 重なりすぎたり 離れすぎたり 188 無機的な夜10月 1st, 2024 / Author: 中崎シホ夜は明けない 日は出ない 見えない路を 徘徊する
夢とも何とも いえないところで 自らそこへと 入っていった
その隅っこは 暗かった 顔が闇に 埋ずもれた
そうだ僕は なにものでもない 顔をもたない 無機物だ
そろいもそろって よくもまあ 不毛さだらけで つどったものだ
というよりそれは 集まりではなく それぞれに在る 一人の僕だ
独りの闇で 虚空をつかんで 握ったこぶしを 解く指の一本ずつ 187 漂う夢9月 1st, 2024 / Author: 中崎シホ春が僕を けだるい空気へ 誘いこむ
失われた夢のように 消えてゆくのは あおい春
夢を 夢と認識するために 毎日めざめる
夢では現実を 目覚めれば夢を 忘却するばかり
目覚めなければ 夢は 永久に閉じられた 異世界 死
個人的であり 普遍的でもある 了解不能の世界
世界として 漂う夢らは 見えない 言えない 質量もない 186 青山8月 1st, 2024 / Author: 中崎シホ風にしたがう 空にかしずく
夜によりそう 日にひらかれる
そうして青山を 求めて歩く
それはおそらく 至るところにある
青山に立つことは 眠りか覚醒か
そこに満ちるのは 祈りか沈黙か
流れのままに 立つその地
救われるのか 失われるのか |