今から十数年程前であった、あの時。
途ある旧国電沿線にあった小さな地域は、とても緑の空気が栄えていた。
それが今では、都市化が進んできては森林区域が次々と崩壊をされ、そこに大きな集合住宅などが建てられてしまったものである。
古くにあった国電の路線は廃止にされ、そして新たな他の鉄道路線へと置き変えられては、高速走行並の路線に様変わりをした。
とても速くて便利となった傍らには、古くからでの馴染みであったような光景は消えてしまい、どこか寂しいと思う気持ちを抱いてくる。
年月が過ぎれば、いろいろな物事は変化をしてゆく。
現在では、自分も長期に渡っての間にして足を運んでいた時が、まるで過ぎた過去の話となったかのように、その地域とは疎遠となった今現在にいる。
過ぎた過去より、現在を生きなければならないのは当然の事であっても、ただ前に進むだけが人生の全てではなくも思えてくる。
今までの生涯に渡って過ごしてきた様々なアーカイブのようなもの。
どんなに月日が経っても決して忘れることはなく、今は一つの思影として自らの心に残っている。
その時、自分がそこで青年として生きていた世代の歴史は、そこにはもう輝いていない。
まるで奇跡であったかのような、予想もつかない程での御縁があった人達との出会い。
そして自分が長期もの間、あるドキュメンタリーであったかのような社会で存在をしてきたエピソードの物語り。
『あの時、僕は君と知り合って、心が傷ついたよ。相手の立場をろくに気にもせず。』
自分と長期に渡って関わってきた誰かが自分に告げた言葉であった。
それ以来に互いに疎遠となってしまった。その彼が告げた言葉は、今でも自分の心に痛い程に深く刻まれている。
人は誰でも生きている間には、傷ついたり、又は、知らぬ間に誰かを傷つけたりもしているものであるのかもしれない。