訪問活動開始にも意志表示の機会をつくる ひきこもり基本法(案) その4(背景説明)

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私は少なくとも50人以上、とらえ方によっては70人ぐらいの人への訪問活動の経験があります。居場所に通っていた人やある程度外出していた人への訪問もありますが、その多くは自宅から外出しない、外出がきわめて少ない人への訪問活動です。自室からもほとんど出ない閉じこもりとか立てこもりといわれる人が多いのです。
ひきこもり164万人(2022年調査)としていますが、このなかでこの外出しない人、外出困難という人が、私には特に気にかかる人たちです。訪問し、顔を合わせ、何かの話をくり返すなかで、外出につながった人がいます。就業につながった人もいます。それらは訪問活動の基本的目標とその延長の成果です。
しかし、結果が乏しい人もいます。20回以上訪問してついに一度も顔を合わせなかった人、部屋のドアをへだてて一言のやり取りに終わった人もいます。これらの反省すべき点を考えてみました。
訪問活動をくり返すなかで、私はある時期から手順の定式化を試みました。訪問する前に本人の意志表示の機会を設けることです。家族と相談しながら、期限を切って(1週間か10日以内に)、本人の意志表示の機会を設けます。
具体的には、部屋の入口ドアかよく使う冷蔵庫に紙に書いて伝えます(口頭では消滅します)。そこにいくつかの選択肢を示します。たとえば①カウンセリング・相談室(~具体名を書く)に行く。②ハローワークまたはサポートステーションに行く。③パソコン教室・会話教室に通う。④コンビニでのバイトを始める。⑤訪問相談の人に来てもらう。⑥自分で考えたこと(   )をする。——というものです。この項目は家族から様子をきいて、それに沿った内容を4~5項目にできるだけ固有名詞をあげ具体的に例示します。
この例示のなかでいちばん選びやすいのは実は⑤の訪問相談の人に来てもらうことになるのですが、これは結果です。これ以外の選択⑥で、親戚の家業を手伝う人、親の知り合いの〇〇さんの所に行く、近くにアパートを借りて一人住まいをする…というのもありました。
それでも訪問相談の人に来てもらう⑤が圧倒的に多かったのです。外出の困難なひきこもりの人には、この選択はごく自然なことではないでしょうか。外出ではなく来てもらうのですから。ただこれを提示する時期は、本人が「そろそろ何かをしないとまずい」と感じている時期である必要があります。家族から聞く様子で推察するのですが、全く平穏な状態のなかでいきなりこの提示をされても心が動かないと思えます。そういう条件を家族と相談しながらつくっていくのです。
こういう形の意志表示は、ひきこもりの受身状態のなかでの意志表示です。それでも本人が「訪問相談の人に来てもらう」という意志表示をしたことに意味があります。こういう受身の形ではあっても意志表示の機会がなく、「来てもらえば何とかなる」という漠然とした状態での訪問活動の開始は、成功確率は低くなります。
訪問を繰り返しながら本人と一度も顔を合わせていない、何かのやり取りをした記憶がない人の多くはこの過程が不十分であったのです。どんな場合でも、どんな形でも本人の意志表示の機会を設けるのが道理に合っています。

ただし、これは私の個人的経験による対応ケースです。家族ともめったに話さない、顔も合わせない状態などの深いひきこもり状態の人への対応はどうするのか、経験を経た提案にはなりません。そういうケースも含めて考えなくてはなりませんが、いわゆる「引き出し屋」的な強制的な方法は逆効果であり、それ以前に人権無視のひどい扱いです。

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