『ひきこもり国語辞典』紹介の番組をつくりたい、ということなので取材を受けることにしました。
取材には出たとこ勝負で話すかありませんが、どういう契機から始まったのかを思い出してまとめておきました。
『ひきこもり国語辞典』はひきこもりの集まる居場所で自然に発生した事情からできたものです。
<難しいと恥ずかしいは類似語です。>
こう書いた紙がひきこもり経験者が集まる場に張り出されていました。15年以上も前のことです。
「難しい」と「恥ずかしい」は発音が似ており、ことば遊びかもしれません。
しかしこれを書いた人は、恥ずかしいというのが先にあって、自己主張できないと感じていたと思えます。自己主張できない自分の難しさは恥ずかしさによるものだ。それを感じてこの言葉を張り出したと理解しました。
しばらくして別の人が<イブニングフォール症候群>と書いた小さな紙を張り出しました。夕方になり家に帰らなくてはならない時間になった。しかし、帰りたくない気持ちが出てきた。それを表した言葉です。
特別にこういう取り組みを呼びかけたのではありません。
私はそれを見ながらひらめきました。ひきこもり経験者の振る舞いに伴って出てくる言葉、私への話かけのなかで、ひきこもりの特徴を示す言葉を書き留めておくようになりました。
ある時期に不登校情報センターのサイトにそれらの言葉をまとめました。1人の言葉がそのまま採用になるときもあります。数人の似たものを1つにまとめたりしました。
だいぶん増えたころにそれらを自家製の本にまとめました。5年ほど前のことです。いまでは314語の言葉を紹介しています。誰の言葉なのかわからないものもありますが、50名以上になります。
ひきこもりを心理学などから理解するのとは別に、当事者の直接の言葉から理解する方法ではないかと思います。ひきこもりの当事者も自分を理解する参考になるかもしれません。一般の方にも〈おもしろがりつつ〉参考にできるかもしれません。