私は経験により物事をわかろうとする人間と自覚しています。このところ介護を家族ケアの重要な要素としてよくとり上げています。現在ある入所型介護施設で相談ボランティアなる任に就いているのは自分で直接にこの要件を満たすためです。
しかし、ひきこもり経験者に囲まれる生活をしたときに、彼ら彼女らから介護について学ぶことが3つありました。
1つは、彼ら彼女らのなかに数人、高齢者家族を介護担当を重ねている人がいたことです。家族からはそれを強く感謝されていたことです。そのうちの1人に対して、介護職についてはどうかと話したことがあります。これはひきこもりと準ひきこもり経験者には介護職についた人が一定数いると知っていたからです。
2つは、介護をもう少し広く対人ケアとしてみると、マッサージ師、整体師などの療術師をめざす人が何人かいました。1つ目の例と同じく、彼ら彼女らは人への対応が丁寧で、しかも感覚・感情的にも適合する人が少なからずいます。そういう思いから一度その主旨の集まりをよびかけたところ数人が参加してくれました。実際に療法師になった人は少ないです。別の理由があるためだと思います。
3つは、きょうだいに自力でからだを動かせない障害者がいて、今日でいうヤングケアラーを経験した人がいます。その人はこの難しい状態から逃れるために、小遣いをためついに家出をしました。しかし数か月後に生活に行きづまり、生活保護申請に私は同行しました。生活保護窓口でも医療機関でも好意的に受け入れてもらいました。
この人からはすごく詳しい経験や苦しみを手紙の形でもらっています。A4版用紙にして、厚さは10㎝近くになる大変に詳しい内容です。その繊細な感覚には大へん学ぶところがあります。ヤングケアラーがひきこもりと類似の状態になること、その人がひきこもり経験者の集まる不登校情報センターの居場所に通ったことは納得がいくのです。
ところが、この3つの体験は、私自身で体験したものではありません。自分で介護の現場を体験し、入所し介護を受けている人の話を聞こうと考えました。家族内ケアには子育て、病気や障害者のケアとともに高齢者の介護が重要な部分を占めると認めるからです。
いくつかの経過をへて昨年6月から、入所型介護施設で相談ボランティアに就きました。経験としては周辺事態にすぎません。家族内ケアにおける介護の特別の意味を、十分にとはいきませんが少しは知ることができたでしょう。