朝日新聞2024年12月19日(木)朝刊「声」欄の記事です。
《主夫思う 専業主婦の再評価を 主夫 戸田 仁(埼玉県 62)
結婚して30余年、夫婦共働きでやってきました。私は一足早く定年を迎え、妻は現役で勤め続けています。このリタイアを機に私は主夫業を選択し家事一切を担っています。
主夫業は思いのほか可処分時間がありません。掃除洗濯のルーチン作業や、親の介護、払い込みなどの事務もあります。メニューを考えながら買い物をして、あっという間に夕飯を作る時間になります。勤めていた頃と仕事の内容は違えど、労働としては同等であると感じています。
1980年代以降の男女平等に向けた取り組みでは、女性が家庭から社会に出て経済的に自立することが最優先だったのでしょう。しかし、このことを強調するあまり、専業主婦は男女平等を妨げる存在のように見られてきた印象を受けます。
男女平等は道半ばですが、一度立ち止まり、専業主婦や専業主夫の存在を肯定し尊重していくよう仕切り直しができないものでしょうか。》
専業家事労働の立場になった定年になった主夫の投稿です。基本的な主旨は明確ですが、詳しく見ると次の点が表れています。
(1)主夫業の作業に「親の介護」が入ります。炊事・掃除、洗濯などのルーチン作業だけが家事労働ではなく、家族内のケア労働が家事に含まれています。
(2)家族内ケア労働の中心はこれまでは幼児期の子どもの子育てでした。そこに高齢者の介護が加わりました。一般論としては乳幼児期の子育ては、母親(妻)の得意分野といえますが、介護(高齢の祖父母の)については、妻と夫の間の得意分野の差は比較的小さいと考えられます。これはこの投書外における私の周囲の人たちの様子から判断しています。
(3)「勤めていた頃と仕事の内容は違えども、労働としては同等である」と家事労働を価値を認めています。しかし、それを「再評価」する方法には言及していません。同等の労働とはいえ、「勤めていた頃の仕事」は生産活動としてGDP評価されるのに対して、家事労働はGDPにカウントされていません。再評価するといっても、言葉以上にはこれというものがありません。
(4)家事労働時間は国民生活センターで調査されています。必ずしも十分ではありませんが、この労働時間に基づいて、GDPに匹敵できる基準を設ける可能性が考えられます。
(5)「専業主婦は男女平等を妨げる存在」が一般的に認められているかは疑問がありますが、家事労働が公式に評価されれば違ってくると思います。
この記事を親の会に参加する親(主婦)に読んでもらい感想を聞きました。「何を今さら、前からわかっていたことではないか」という意見がありました。そうであっても、いまなおそれは公然と明確には認められていません。この事情を明瞭におりこんだ何らかの「再評価」の仕方が必要になっているのです。家事労働の「再評価」の仕方を考え、設定しなくてはならない時代になった。これが私の感想です。