単婚(一夫一婦制)が家族形態として当たり前の日本においては、子育てを含む世代継承機能が困難になっています。それは徐々に進行してきたので、その移行期間に、保育所・幼稚園そして介護施設がつくられ、またそれらを財政的に支える保障や公的補助金制度も用意されてきました。
それで十分か?と問うと実際はそうでもなさそうです。1つはそれによって家族の役割をゼロにできない(してはならない)こと、もう1つはそれにもかかわらず家族が支えきれなくなる事態が続出しているからです。
この行きづまりを打開する方法は、家族形態そのものの変化に至ると想定しますが、これは相当に長い期間をかけて、多様な形をとって進展するものと推察します。その過程では、自治体(および国)と地域共同体(のある種の復活)が関わると想定できます。
ここに地域共同体ともいえる1つの事例が報じられました。2024年11月10日(日)朝日新聞朝刊の記事です。私はその見出しにある「なんちゃって家族」をタイトルに採用します。NPO法人抱樸(ほうぼく)が進める「希望のまち」プロジェクトです。福祉施設が「(死亡時の)みとりや育児など家族が担ってきた機能や役割を分担して引き受ける」という内容です。抱樸理事長の奥田知志さんは「家族機能の社会化」といいます。「単身生活者が増えた現在、家族のかたちにとらわれず、支え合える仕組み作り…。…そういう人を巻き込んで葬式も結婚式もする大実験」のようです。
抱樸は1988年から路上生活者(ホームレス)支援を始めました。2024年9月19日の「偲ぶ会」には抱樸互助会の80人が参加し、それまでに亡くなった222人の顔写真が並んでいます。
2020年国勢調査では単身世帯が全体の38%になります。現在の核家族世帯はいずれ単身世帯がさらに大量に増えるでしょう。それは個人が世帯(家族)から独立したものとして扱われる社会を表わしてもいるのですが、他方では家族のとくに世代継承機能の衰退を招いていくのです。
「なんちゃって家族」はこの状態への1つの対応策、回答であります。これが唯一の方法とは言えないまでも、これに類する形が生まれるのではないでしょうか。国や自治体は、このような民間の動きを参考にとり入れながら、そのうち対応策を考えるでしょう。フリースクールを参考にした学校内の居場所づくりなんかがそうです。抱樸に対しては地域の社会福祉協議会や企業も応援しています。社会福祉における自助、共助、公助という順番がここでも表われてきそうです。上から基準をつくって指導する型の公助には期待できませんが、共助や自助で取り組まれる自然な動きを参考にしていく公助が大事になると思います。制度づくり、財政・設備の支援、スタッフ養成、情報提供などが公助面の役割になると思います。
私は単婚世帯(一夫一婦制)による家族の機能不全の解消を、養育と子育ての補助の面から協力的住居環境づくりの面から進むと予測していました。抱樸が示していることは葬儀や結婚式という面からも進められることのようです。こちらが実際的なのかもしれません。